お風呂をためている間に読むための

雪よもぎ

お風呂に入るだけ


 お風呂に浸かりながら、ぼんやりする。

 そうしていると、不思議と心が落ち着いてくる。


 良い香りのボディソープとシャンプーに、質の良いトリートメント、それからお気に入りの入浴剤。それだけで、どうしてこんなに幸せな気持ちになれるのだろう。


 私は湯船の中で、今日の出来事を思い出す。


 仕事中、上司に言われたことが頭によぎった。


「そんなんじゃ、将来やっていけないよ」


 ちょっと初歩的な質問をしたら、そんな風に言われてしまった。

 別に上司に悪意があるわけではなく、私のためを思っての言葉だ。


 わかっていても、ほんの少し落ち込んでしまう。


 けれど、入浴剤のオレンジの香りに包まれていると、そんな傷も癒やされていく。 

 当然浴室には自分以外誰もいないのだけれど、誰かに優しくされているような、そんな感覚がする。


「大丈夫、大丈夫」と、言われているような。慰められているような。


 

 お湯をばしゃばしゃと肩にかける。

 温かくて、心地よい。ほっとする。



 今は仕事のことなんか忘れて、この幸福を目一杯感じることにしよう。

 

 お風呂から出たら、コップ一杯のお湯を飲んで、布団に入って眠る。


 ただ、それだけで良い。


 そう思った。

 

 

 



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