第15話 [判明]
「電話の内容、聞いて来たわよ」
「ありがとう。それで、犯人はなんて?」
「内容は、『出嶋反尾を殺した。わからないか……恋や仕事が関係している』だって」
「〝恋〟や〝仕事〟? わあっつ?? 全然ワカラナイデース」
「『最後の人は殺させない』とか言ってたわよね?」
「ふぎゅう……」
親指の爪で眉間を掻きながら唸る。
今回、この出嶋さんが殺されたのは高層マンション。セキュリティも高いだろうし、やはり今回も知り合いの可能性が大きい。
「透夏、何か見えた?」
「んーっと。被害者は死んだと思ったあと、棚から何かを取り出して、自分の血でそれに何かを書いて、棚の下に隠した」
指紋をつけないように、ハンカチで棚の下にあるものを取り出す。その正体は卒業アルバムであった。
そのアルバムの表紙には青春の青さはなく、そこにもD-a'-Nという鮮血の文字。
「この卒業アルバムにもDaNが書かれてるね。……ん? でも、なんかおかしくない?」
「ええ、犯人が書いたんじゃなくて、被害者が書いてる。つまりこれは――「ダイイングメッセージ」」
声が重なる。
「でもわかんないよ……。他に何か見えない?」
「ほんっと、あたしがいないと何もできないわね!」
「なんでちょっと嬉しそうなの?」
「べっ、別に嬉しくわないわよ?」
どこか焦った様子でごまかし、話を元に戻して透夏が見たものを伝えてきた。
「えーっと……犯人はここを出る前、時計をいじくってたみたい」
「時計?」
透夏の指差す先には、壁に掛けられ、天井を向いた針の時計があった。
わざわざ自分がこれをした? 何かを伝えるために……。
「ふっ……わかんない」
「解けてないくせにドヤ顔するんじゃないわよ」
わからないものはわからない。もっと情報を集めないと解けなさそうだなぁ。
そう思ったのも束の間。
「坂巻さん火乙女さん! 犯人からの電話が来ました!」
――ドクンッ
「っ! 早すぎでしょ……」
まだ
ここにいられるのは約五分。経過してしまったら強制的に死に戻りが発動する。
……ねぇ神様、そんなに僕のことが嫌いなの? 厳しすぎない?
「透夏、制限時間は約五分。経過したら犯人からの連絡が来て死に戻りが発動する」
「早っ。五回目での犯人からの電話の内容は」
「聞く前に戻らされたよ」
「手厳しいわね」
どうするべきか。こんな時名探偵だったら……はっ、そうだ!
「透夏! どうでもいいこと喋ってくれない!?」
「え、いきなり何よ……」
「ほら、探偵もののアニメとか映画って関係ないような話で閃いたりするじゃん? それをしようかと」
「あんたにそんな閃き力があるのかしら?」
「ぐ……あ、あるはず……」
時間が刻々と迫り来る中、透夏の雑学ショータイムが始まった。
「えーっと、『わたし』っていう一人称は『わたくし』が縮まったものなのよ」
「ほぇえ〜。……ごめん、次」
「ん〜〜……。かくれんぼで鬼が勝手に帰ると監禁罪になる」
「ええっ!? そうなの!?」
「さっさと閃きなさいよ……」
やっぱり見よう見まねじゃあできないのだろうかと思い始めかけていた時、透夏の次の雑学で何かが引っかかった。
「かぼちゃは英語でスクワッシュ。パンプキンはロウィンの時のオレンジのかぼちゃを指す」
「へー。……ん? ハロウィン……かぼちゃ……」
「もー。いつまでやるの? 雑学とか理論とかそういうのは……ん? 理論……ABC……」
僕と透夏は一瞬黙り込み、再び声を揃えて叫んだ。
「省略形!!」
「ABC理論!!」
「……えーびーひー理論って何? 透夏」
「そっちこそ何が省略形なのよ」
「こほん、じゃあ僕から説明するよ。ハロウィンといえばかぼちゃ。そのかぼちゃはジャックオランタンだよね。それを英語にすると……こう」
僕は手帳にすらすらと書き、透夏に『jack-o’-lantern』と書いたページを見せた。
「この〝o'〟は〝of〟の省略形。これと同じなら、犯人が残す痕跡の〝a'〟は……〝and〟になるんじゃないかなって。
それの根拠が合ってるとして、犯人がわざわざ弄った時計……24時を合わせて考えると出来上がるのがある。それは――〝
「つまり……犯人は一昼夜とか、丸一日とか、そういう漢字が入った名前をしてるってこと?」
「間違ってなければ、多分そう」
僕が一息つき、選手交代だ。透夏の説明を聞き始める。
「ABC理論……正確にはABCDE理論ね。簡単に説明すると、あるできことから生じた負の感情を、自問自答的なことをしながら考え直す理論……みたいな感じかしらね。
「……? いいえ」
「はぁぁ……。被害者の名前よ」
「…………。あぁっ!!」
一人目の真事さん、二人目の考二さん、三人目の結香、四人目の反尾さん。全部透夏が言っていたABCDE理論のようになっている。
「つまり、次はEから始まる苗字の人がEで効果ににた名前ついている人が、Eから始まる殺され方をされるってことだね」
「そしてそれはこの卒業アルバムに載っていると思うわ。犯人も一緒に探してみましょ」
謎解きはn回死んでから 海夏世もみじ @Fut1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。謎解きはn回死んでからの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます