(三)-2
彼はそう言われて困惑しているのか、何かを言いたそうな感じではあったが、下を向いて何も言わなかった。
私は何も答えない彼にもどかしさを感じて大声になってしまった。
「うるせえな、そうだよ」
やっと有田は答えた。やっと答えたが、まさかの答えが返ってきた。もしかしてとは思ったけど、まさかそうだとは思わなかった。
「ちょっと待ってよ、この前は永尾武雄って名乗っていたじゃない」
「それは母親の旧姓だよ。中学の時に両親が離婚して、俺、母親に引き取られたんだ。それで母親の実家がある千葉に住んでたんだ」
(続く)
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