(三)

 私は、日曜の夜に実家から都内のアパートの自分の部屋に戻ってきていた。

 そして週が明けた月曜日、午後一時から始まる三限目の授業が休講になったため、サークル部室に顔を出した。

 中には、永尾武雄だけがいた。会議室用のテーブルとパイプ椅子が並べられた質素な部室だった。彼はその一席に座って、漫画雑誌を読んでいたのだ。

 私は思いきって彼に聞いてみた。

「あなた、もしかして尾襖おぶすま中出身なの?」

 彼は私の方に顔を向けたが、答えなかった。

「もしかして、あんた、有田? 野球部の」


(続く)

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