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正門を出たところで、あの個人商店が目に入る。先程、あの赤い人のようなものが、這いつくばって入っていった店だ。
「なぁ、お前この後用事とか何かある?ないよな?」
「え?用事、ですか?特に何も、」
「だよな。よし、何かジュース奢ってやるよ。」
そう言うと、りんを連れてずんずんと店の方へと歩いてゆく。
その様子にりんはギョッとして、慌てて倖を引っ張った。
「あ、あの、倖くん!?」
「なんだよ。いいだろ、別に。喉渇いたから飲み物買うだけだよ。それに、お前この店入ったことないだろ?」
「ありませんよ!」
必死に抵抗しようとするりんに倖は呆れて視線をやった。
「おまえ、内臓は平気で掴むくせに何で店入るの嫌がるんだ。」
「へ、平気だったわけじゃないですよ。それに、もしお店の中に、いたら、どうすればいいんですか!」
「どうもしなくていいんじゃね?」
そう言うと、開けっ放しのドアから店内へと入っていった。
店内は西日差す外に比べるとひどく薄暗く感じた。
昔ながらの小さな商店だった。
壁際に並べられた駄菓子の数々。
部活動の生徒が多いせいだろう、大きめのアイスの冷凍庫が2台並び、飲料の冷蔵庫もでんと幅をきかせている。
同じ理由で、菓子パンやお菓子、カップラーメンなども種類豊富に揃えてあった。
「何飲む?」
スタスタと飲み物が並べられている冷蔵庫をがばりと開けて倖がりんに聞く。おっかなびっくり後をついてきたりんは倖が開けた冷蔵庫の中を覗き込んだ。
そのとき、レジの後ろの障子がカラリと開く。
その音にりんが反応し視線だけを横に動かすのが見えた。
眼鏡の端から何か、視えてしまったのだろうか。そのまま固まってしまったりんを小突き、飲み物を選べと促しながら、倖もチラリとレジへと視線をやった。
開いた障子からは小太りのばあさんが一段下がった店内へと下りてくるところだったが、りんが視ていたのは、どうやらその後ろ。
障子のその向こう側は居間になっているらしく、丸い卓袱台といくつかの収納家具、そして仏壇があるのが見えた。
仏壇。
普通ならじいさんの仏壇かな、と思うところだが、黒い縁取りの写真立てには遠目にもかなり若い男性が写っていた。
りんはまだ動かない。
固まったまま動こうとしないりんを不審に思ったのか、ばあさんが不思議そうにりんに視線を向ける。
「おい、飲み物選べ。」
倖は肘で再度小突いてりんを促すと、何かいたか、と小声で確認する。
りんは僅かにコクリと頷き、あれが仏壇前にうずくまっています、と答えてオレンジジュースを手にとった。
仏壇前。意味深ではある。本人の仏壇ということだろうか。
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