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「りんちゃん、それ、自分で自分の顔見てそう思ったの?……それとも、誰かにそう言われた??」
「ま、前の学校の、友達に、」
「……大丈夫。絶対、恐くなんかなんないよ、りんちゃん!」
「そう、かな?」
「そう!あ、ほら、試しに今眼鏡取ってみてよ。」
私がしっかり見てあげるから、と迫田さんがさらに身を乗り出してくる。
「え、」
「ほらほら。」
「ちょっと、待って!いや、あの、今、けっこう人いるし、無理っぽい、かな。」
「……そう、残念。」
りんちゃんの素顔、見たかったのにな、と心底残念そうに迫田さんが呟いた。
その表情に何故か悪いことをしてしまった気分になり、すみません、とりんが頭を下げた。
「いやいや、そんな頭下げるようなことじゃないから!残念は残念だけど、大丈夫だよ、気にしなくても。……りんちゃんは色々気にしすぎたと思うよ。」
カラリと扉が開き、担任の先生が教室内へと入ってくる。迫田さんとお喋りしているうちに、いつのまにかHRの時刻となっていたようだ。りんが慌てて前を向くとすぐに日直の号令がかけられた。
起立して軽く頭を下げながら、そういえば迫田さん以外に眼鏡のことを指摘してくる人なんていなかったな、と思った。案外、友達でもない、ただのクラスメイトの眼鏡などみんな気にしていないのかもしれない。
倖は、気づいただろうか。
ふと、思った。
倖に挨拶したとき、視線は確かに合っていた。彼は、眼鏡が変わったことに気づかなかったのだろうか。
そのことを寂しく思った自分に苦笑がもれる。
クラスメイトに気づいてほしくなくて早く登校したのに、倖には気づいてほしかった、なんて。
もう、友達でもない、他人に戻ってしまったのだろうか。
仲良くなりたいと、倖につきまとわれた日々を思うと、胸が痛かった。
◇◇◇◇◇◇
2時間目の現国が終わると、迫田さんが慌てたようにスマホを片手にパタパタと小走りで教室を出ていった。と、すぐに廊下から黄色い歓声が沸き起こる。
何かあったのだろうか?
不思議に思い廊下の方を窺っていると、長いこと胃痛で休んでいた篠田さんが迫田さんを伴い教室へと入ってきた。どうやら連絡を取り合っていた迫田さんが出迎えに行ったようだ。2人の周りをその他の親しい友人達も歓声を上げながら取り囲んでいた。
「おはよー!篠田!もう大丈夫なの??」
「長かったねー!」
「お腹まだ痛い?」
きゃらきゃらと笑いあいながら、篠田さんを労る声が次々とかけられる。
篠田さんはくるくると巻かれた色の薄い髪の一房をいじりながら、友人達に照れたような笑みを返した。
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