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「へぇー、そうなんだ……。コロッケ、いいなぁ。てか、倖、すごいじゃん。」
「なにが?」
「女子とデート、できてるんじゃん?」
拗ねたように口を尖らせて意地の悪い笑みを浮かべる柴田に舌打ちする。
「デートではないだろ、仲良くなっていとこの連絡先教えてもらわなきゃなんねーし。」
「それ、一緒じゃない?ていうかさ、どんな理由があっても女とただブラブラするなんて、できなかったじゃん。前は。」
「……まぁ、なんか、意外とできるな。」
「おやおやぁ?まさかりんちゃんに惚れち」
「それはない絶対ない。」
惚れるとは、あの子に対して感じる感情を言うのだ。
ほら、考えるだけでこんなに胸が苦しいし、めっちゃドキドキする。
たいして林田りんを思い浮かべてみても、なんとも思わない。
平常心そのもの、凪だ。
「なんかあいつ、気ぃつかわないでいーんだよ。あいつも全くちっとも気つかってないし。逆にもっと俺に対して気を使えと思う。あとは……。」
スビビっと勢いよくパックコーヒーを飲み干し握りつぶす。
「あいつ色目使ってこないからやりやすいし、……あぁ、そう言えばお前と一緒にいるときの感じと似てるかも?」
「なんだそりゃ。」
呆れたように柴田が言った。
「なんか楽しそうだなー、俺もりんちゃんとお出かけしてみようかなー。」
「なんの用でだよ。」
倖が半眼になって柴田を睨む。柴田は肩をすくめてみせると拗ねたように口を尖らせた。
「だぁってさー、倖、最近遊んでくんないしー、だったら俺もりんちゃんと遊びたいしー。」
柴田はゴロゴロと真横まで転がってくると上目遣いで倖を見上げてきた。それを、キモイ、と押し返し先程よりも遠くに転がしてやる。
「なんだ、沢ちゃんとケンカでもしたのか?」
半回転余計に転がったせいで柴田は背中をむけている。どんな表情をしているのかはわからないが、倖の言葉に背中がピクリと微かに動いた。
「いや、ケンカはしてないよ、うん、大丈夫、まだ。」
まだ、ね。
こういう時の柴田の言は信じてはいけない、そう思った倖は体をおこしてその背中を見る。
あっけらかんとお気楽そうに見えて、実はちょっとしたことで落ち込みやすく鬱々と1人で考え込む癖が柴田にはあった。
自分では女癖が悪いからと嘯きながら、一途に1人の女性を思い続けている。
本当の意味で女癖の悪い倖とは、正反対の奴なのだ。
「……僕、そんな頼りないかな、」
「頼りないだろ。」
小さく零した言葉に倖が即答する。
柴田がつきあっている相手は大人の女性だ。経験も知識もお金も相手の方が優っている。
学生で権力も地位も金もない、未だ親の扶養下にある柴田なんて、頼りがいがあるはずもない。
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