その3
気を取り直して、プランBへと移ろう。プランB。それは、警察以外の組織を頼ってみよう作戦。
しかしこれは、実行へ移す前に早々と頓挫した。何故なら、その警察以外の組織こと『王立騎士団』は、混ぜるな危険の劇薬だからである。
王立騎士団。前世ではてんで聞き覚えのない言葉だろう。それもその筈。王国騎士団とはよくエンのオリジナル名詞であり、異相界に存在する、とある国直属の組織でもあるからだ。
ここでもう一つ、よくエンの世界観について説明を入れよう。
一口に異相界と言ってもこちら側と同様、そこには
ここまで言えば嫌でも察しが付くだろう。その通り。王立騎士団とは異相界、より正確に言えばオルブライト王国側の組織であり、二人の攻略対象者が所属している。これを知っていて闇鍋の中に更なる闇を入れる輩が、一体どこに居るのだろうか。いや、よくエン自体、そういう食べ物だけれども。
……とにかく。玲愛嬢の問題が解決しない限り、騎士団には頼らない方が得策だろう。力を借りるにしても、至純の儀をどうにかしてからだ。
あれもダメ、これもダメ。外的な勢力に頼れないとなると、いよいよ本気で、プランCを実行せざるを得なくなる。
プランCこと、私自らの力でどうにかこうにか頑張る作戦。結論から言おう。最終的に、私はこの案を決行した。実態はプランBとの折衷案なのだが、きっかけを作ったのは他の誰でもない、私自身なのだ。少しくらい鼻を高くしても罰は当たるまい。
そもそもプランCをここまで渋っていたのは、きちんとした訳がある。これでも私は、二十歳前後で前世を終えた身。故意ではないにしろ、家族を悲しませたことは紛れもない事実である。よって今世、つまり烏有周としては、頑張って寿命を全うしようと息巻いていたのだ。だから危険なことからは、なるたけ身を置きたかった。置いてひっそり、ハッピーエンドを見守りたかった。見守りたかった、のだが。
「どちらにせよ、家族は失うんだよなぁ……」
最早、逃げ場はどこにも無かった。腹を括れと、ハピエン厨のオタクが囁いてくる。
──ああ、そうだとも。プランC最大のメリットは、自分の理想のルートを作れるということ。勿論、そんな確証はどこにもない。ただ、その場の成り行きに任せなくても良いというだけ。それだけなのにオタクという生き物は、僅かな可能性ほど目を輝かせてしまうのだ。
長いようで短かった葛藤を終え、烏有周として七歳になる頃、私は一冊のノートを手に取った。夜な夜な思い描いていたあの頃と同じように、けれど今度は綿密に。
ハッピーエンドへと至る道筋は、正しくここから始まったのである。
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