第3話 分岐点
「はい、それでは帰りの会を終わります。日直さん、号令をお願いします。」
「はい。これで帰りの会を終わります。さようなら。」
「「「さようなら」」」
「さようなら。あっち向いてほい!」
「「「あー!!」」」
「はい、みんなまた明日ね〜」
悟は帰りの会の最後に毎回、あっち向いてホイをするようにしている。ゆえに、毎回このような終わり方となる。
そして、悟は教室の片付けをし、職員室へと向かう。
それは、悟が職員室で作業を開始して30分程してからのことだった。
「佐藤先生、ちょっといいかね?」
悟は、校長先生におもむろに尋ねられた。
「どの佐藤先生ですか?」
「いや、どのも何もこの学校に佐藤先生は君一人しかいないじゃないか。」
「珍しいですよね。」
「いや、普通にそういう学校はたくさんあると思うよ。って、そうじゃなくてね!相談というか何というか、とにかく話があるんだよ。ちょっと校長室まで来てくれる?」
「ラジャー」
絶好調の悟は、基本的にまともにうちあうと、相手はペースを乱される。
二人は校長室へと移動する。
「自分のクラスが、ですか?」
「うん、そうなんだよ。君も去年から担任をしているからわかると思うけど、君の持ってるクラスは奇跡のように個性豊かな子どもが集まっているだろ?それが前々から話題になっていてね。それで今回ちょうどいいんじゃないかということで指名を受けたんだよ。」
「はあ、そうですか。」
話の内容はこうである。
・Beautiful Catastrophe Online の初めてのプレイヤーが全世界で100万人選ばれることが決まった。
・その中で日本は1万人が選ばれることとなり、悟の住む都道府県からは200人が選ばれることとなった。
・その中から小学生から15人程選ばれることが決まり、出来れば一つのクラスそのままが望ましいということであった。
・そこで前々から子ども達の個性の豊かさが異常なほどであり話題となっていた悟が現在担任をしているクラスに白羽の矢が立った。
実は悟が現在担任しているクラスは、悟が担任する前までは、子どもたちの個性と個性が相容れず、揉め事が絶えず、また、先生に対しても、全くいい態度を見せようとせず、自分勝手にやる集団だったので、どんな先生が来ても常に学級崩壊した状態だった。
そんな中で、何も知らない悟がふらっと転任してきて、4年生になった子どもたちの担任になった。
そして、普通に授業し、普通にダメだと思うことは叱った。
すると、締めるところはきちんと締めるが、基本的に色々なことにゆるい悟と波長があったのか、子どもたちの態度は次第に軟化していき、ただの個性豊かで面白い学級へと変わってしまったのだ。
「うーん。そもそもいつ頃「Beautiful Catastrophe Online 」は始まるんでしだっけ?平日だったら難しくないですか?」
「ああ、それについては気にしなくていいよ。何も言っても世界プロジェクトだからね。その辺は融通がきくようになってるんだよ。ちなみに日本時間で8月10日の12時からみたいだよ。」
「そうですか。うーん、子どもたちに危険はないのでしょうか?」
「それは僕も気になってね、確認してみたんだけど、回答は大丈夫って言ってたよ。」
「そうですか、うーん。」
悟は迷っているポーズを取っていた。
そう、ポーズだけである。
心の中では既に受ける気満々で、帰って心愛にどうやって自慢しようかなどと考えていた。
ただ、なんとなく、一度渋った方がいいかなと気まぐれに思っただけであった。
ともあれ、元々受ける気だったとこともあり、その後校長先生へと受ける旨を伝えて、その他諸々の作業を終わらせた悟は帰路へと着いた。
-------▽-------
「ってなわけで、ここちゃんより先にBCO(Beautiful Catastrophe Onlineの略)プレイできることになったでやんす。あっし、楽しんでくるでやんす!」
悟は結局、やんすで煽ることにした。
「………」
「お?どうしたでやんすか?ここちゃん?」
「………」
「ここちゃーん?」
「………(にこっ)」
「あっ、これちょっとガチでキレて「正座」え?」
「正座(にこっ)」
「御意。」
どこに見せても恥ずかしくない程の正座をする悟。
「ごめんなさい100回(にこっ)」
「え?それはちょっと…」
「ごめんなさい100回(にこっ)」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい——————————」
-------▽-------
次の日
「というわけで、みんなは今話題の「Beautiful Catastrophe Online 」の記念すべき最初のプレイヤー100万人に選ばれました。
なので、また夏休み前には連絡しますが、8月10日は夏休みの最中ですが、必ず学校に来るようにしてください。」
「「「「やったー!!」」」」
「えー!すごくない!?」
「やったー!みんなで一緒に遊べるね!」
「先生、これはきましたよ。俺たちの時代が。」
「………いざ、ゆかん。戦いの地へ」
悟が子ども達にBCOのことを伝えるとたちまち歓声の声が上がった。
「はい、じゃあ、そういうことだから、その日はなるべく予定を入れないようにして下さい。間違って旅行の予約をしてしまった、なんてことがないようにしてください。」
「「「はーい!」」」
こうして北南町立東西小学校5年生 計15名とその担任の悟はBCO初回プレイヤーの仲間入りを果たした。
後になってみればこの時が16人全員にとってとてつもなく大きな分岐点であったと断言できる。
だが、そういった時というのは、たいてい後になるまで気づかないものである。
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