ラギーザの樹海にて……。②

 あ、只今戦闘中です!


 ここ、ラギーザの樹海にてとても厄介なモンスターを相手にしております。


 申し遅れました、わたくし、生まれは人間今は龍……転生致しました、皇すめらぎ 雅人まさとことマサトで御座います♪ゲーム好きが良かったのか悪かったのか、気が付けば龍の姿に……第2の人生?いや、人ではなくて龍ですけど。悪いものではありませんでした、なんと!龍にして人の女性の彼女が出来た!!それも元騎士団長!美人です!………奇跡です………。


 私……どや顔しても良いくらいに、人の頃などモテるとか彼女が居たとか、そんな浮いた話しは一切!ありませんでした(豪語!)


 ですから、今彼女が居るなどと同僚に自慢出来る訳もなく……いや、世界が違うので無理ですけど。


 とにかくです……そんな私は今幸せに浸ってます。


 それで、彼女のおばあちゃんが村長をしている村の人達が、襲われていると連絡が入り助けるべくラギーザの樹海へとやって来ました。マジで大変な事になっていて子蜘蛛集団(と言っても1匹が体長1.5m程ありますが…)に襲われていて、荷馬車の中に居た主さんも腕を大怪我し、まだ幼い娘さんがその親を庇って襲われそうになったんです!


 しかしミネルザと私で、そのピンチを助ける事が出来ました。ガザックさん達も合流し、主の腕も私の力で元通りに。


 奥さんと娘さんが、安心と嬉しさで泣きながら主を抱きしめている姿に私も貰い泣き………。


 しかし、その気持ちに浸っている所を邪魔をしてくるモンスターが居ました。


 古代遺跡のようですが、その上によじ登って咆哮を上げて来たものが居ました。


 ここに来る前に村長さんから聞いていた”夜叉蜘蛛シャガラク”……どうやらその大きさと影は間違いないようです。




「どうやら、ボスのお出ましのようだな。」




 さすがにガザックさんでも分かりますよね、どうやらその様です。




(村の人達を樹海の外に!私達は奴を討伐に向かいます!)




 私は地面に文字を書くとガザックさんは頷いてくれました。




「よし、周りのモンスターに警戒しつつ樹海の外まで移動するぞ!」




「「「「「「了解!!」」」」」」




 主人と家族と怪我人を乗せた馬車を動かし、周りの警備を騎士達が警戒しながら移動して行きました。


 彼らなら大丈夫でしょう、伊達に騎士団をしていた訳ではないでしょうし。


 さてと……こちらも気合いを入れて行きますか!




(ミネルザ、私達も…………!?……ミネルザ!?)




 んん!?あれ?ミネルザ何処に!?


 私はミネルザに声を掛けようとしたとき異変に気付きます、周りを見渡してもミネルザの姿が無いんです!




(ミネルザっ!!)




 何か凄い胸騒ぎが……嫌な予感がする……まずいな……。


 私が馬鹿でした、油断していたんです。


 主人の家族に気を取られている内に、ミネルザを見失っていたんです。迂闊だった……ミネルザも元騎士団長、先の通り剣捌きといい、手練れであるので大丈夫と注意を怠ってしまった……。


 何者かが、木々の暗闇の中からミネルザの背後に忍び寄り、糸の様な物で彼女を襲ったのです!しかも1本だけではなく、無数に……。彼女ももがいて、短剣を抜こうとしますが腕も捕られてしまい、身動きが取れません!




(マサトっ!!)




 顔まで絡められて、声を出せない彼女が必死に心の中で叫びます!


 その心の叫びは私の心に届きました。テレパシーでの会話が出来るはずもなく、しかし彼女の悲痛な声は私をハッキリと呼んでました。私は慌てて身体を起こし、周りを見渡し彼女を探します。


 ム……いたっ!あれか?150m位先の方に、無数に黒いものが蠢いてる。な……あれまだ他に残ってたのか?見えたその子蜘蛛達がグルグル巻きにした、ミイラの様な形の物を10匹位は居るでしょうか、必死に担いで運んでます。


 しまった、やはりあいつらか。くそっ、間に合うか?私は再度その方向に目を凝らしますが、既に姿はなくその先の方にも目を向けましたが 姿が見当たりません!まずいな…すぐに追いかけなければ……。


 私は早速飛んでいこうと、翼を広げます。




「ちょっと待ってくれ!」




 飛び立とうとする所を制止されて声のする方を見ると、村の人達を警護している筈のガザックさんとエレザさんと他に3人が残ってました。




(ミネルザが捕まってしまいました、直ぐにアジトに向かいます!)




「何!?分かった!俺達も一緒に行こう!」




(え!?ガザックさん達も?)




「ああ、大切な友人だからな……見捨てたら幽霊になって枕元に出られそうだしなww」




(ガザックさん……。)




「なに、助けてくれた恩もあるしな。それを返す良い機会だ。」




(ありがとうございます、よろしくお願いします!)




「おう!任せてくれ!」




(よし!向かうは奴等のアジトだ!)




 こうして、ガザックさん達と共にアジトへと向かったんです………。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






「よ~し、樹海を抜けたぞ!」




「みんな無事か?」




「村人達は全員無事だ!」




 村の人達も安堵していました。騎士達にも感謝ですね♪村人達は騎士達にお礼を言い、握手を交わしたりしています。仲良くなる事はお互いに信頼感を得ます。これからも持ちつ持たれつで、良い関係になって欲しいですね♪




「後はリーダー達が無事に戻って来て欲しいが……。」




 主人の家族を含め、全員が樹海の方を見やって、その戻りを祈っていたのでした………。




 一方、私達はアジトへと向かって飛翔していました。 


 私としては特に彼女を助けたい……その一心で。


 遺跡を越えた辺りで、ガザックさん達が2手に分かれて進入しようと言ってきました。


 確かに一緒に突入も有りでしょうが、相手は狡猾だと言うのでどう動いて来るかが分かりません。ここはガザックさんの言う通りの方が得策でしょう。


 一旦、手前に着地してガザックさん達を降ろします。無言で頷きあって、それぞれに散りました。行動開始です!




 しばらく進むと、見えて来ました。巨大な洞窟が。いかにもアジトです!と言いたげな、オドロオドロしい不気味な雰囲気を醸し出した入り口です。あまり日の当たらない、草木に生い茂られた薄暗い場所にあり、独特のイヤイヤ感を出してます。


 きっと中に居るであろう、ミネルザを助けに行かねば……。私は意を決して中へと入りました。私が入って行ける洞窟……。広さは想像つきますか!?巨大ですよほんと。樹海の様な木々に囲まれているから、見つかりずらいのかもしれませんがこんな所もあるなんてね。


 暗がりの中を奥に進んでいくと、更に広いと思われる場所に出ました。よ~く目を凝らすと、モゾモゾと蠢いている物が……。




 すると、突然壁に何本もの松明がつきました。その中に浮かび上がる無数の子蜘蛛達、その中心に大型のモンスターが居ました。確かに蜘蛛です。しかし、8本の脚の他に3対の鎌の形を成した触手が……あれじゃ1対を躱しても2対目、3対目と攻撃が向かって来るという、ひとたまりもなさそうな感じです。そんなとんでもない奴が”夜叉蜘蛛シャガラク”………。




 そのうちの1本の触手に彼女が糸に掴まれて上に持ち上げられていました。




「マ、マサトっ!来ちゃダメだっ!逃げるんだ~~~!!」




 ミ、ミネルザ……。良かった、とりあえずは無事の様ですが、どうやって取り戻すか……。




(クククク……。そこを動くでないぞ。動けばこの娘がどうなるか……。)




 そのボス蜘蛛、シャガラクが話しかけてきました。私も止まります。何か起死回生の策はないか模索しながら……。




(彼女を放せ。何が目的だ!)




(クク……個人的にお前を食ってみようかと思っての。そうすれば力が手に入る、更に強くなって人間どもを食料としようかと思っての。)




 うぐっ、想像しただけで気持ちが悪い。こいつに私が食われると!?更には人間も食料だって?後々夢見が悪そうです。




(なら、余計に彼女は関係ない。放してやってくれ。私だけにしろ!)




 すんなりと放してはくれなさそうですが、その方法しか……。




(素直に我らに捕まれば放してやろうぞ……。)




(その言葉、本当だな。)




(疑うのは構わぬが、娘がどうなってもいいのじゃな?)




 鎌の触手を喉元に突き付けられました。




(ミネルザ!?分かった。どうすればいい?)




 相手が優位なのはどうしようもないのか、気配が散漫でガザックさん達がいるかどうかも分かりません。と言って彼女の事もあるし、従うしかないのでしょうか。




(わが子らがお前を絡めとる。絡め終えたら放してやろうぞ。)




 そう言うか否か体長1.5m程の子蜘蛛達が傍に寄ってきました。全部がお尻を向けて糸を放出してきます。4本の足元からグルグル巻きにされていきます。動けない様にするためか、相当分厚く巻いてきます。このまま私をミイラにする気か?そう思っているうちに胴体の方まで巻かさってきました。翼も徐々に巻かれていきます。




「い、いやだ~~~!!マサト!マサトっ!!動いて!逃げてくれ~~~!!」




 ミネルザ……。彼女が泣きながら叫んでます!私はじっと彼女を見つめていました。君は生きろ……生きて私の前でまた微笑んで欲しい……。彼女が泣きじゃくって暴れますが、掴まれているのでそれ以上は動くことが出来ません。糸は徐々に私の首の方へ。そして頭まで巻かれ始めた時に私は約束を裏切られます。




(クククク……。お前の望みどおりにこの娘放してやろうぞ。ただではないがな。)




「アグッ!?ゴホッ!!」




 彼女の背中から脇腹をもう1本の尖った鎌の触手で貫かれていました。尖った先端から血が滴ってます……。




(ミネルザァァァァァァァァァァ!!!!!)




「マ……マサ……ト……………。」




 彼女の頭が前のめりに勢いよく下を向いてしまいます。大量の血が足を伝い流れ落ちていきます……。




(き~さ~まぁぁぁ~~~~!!)




 私は奴に向かって怒りを露にしていました。




(ふんっ、誰も生きて放すとは言うておらん。)




 やはり聞いていた通り、残虐なモンスターです!彼女を助けたいが為にしたことがかえって仇になってしまった……。その光景を目にしたまま身動きが出来ず、糸に完全に巻かれてしまいました。目の前が真っ暗に……。




 悔やんでも悔やみきれない後悔………。大事な人が……大切な人が……最愛の人が……。私のせいで失ってしまった………。何が守るだ、助ける事すら出来ないじゃないか!私はなんて愚かなんだ………。そう悔やみながら、気を失っていました……。




(ふん、もうこの娘には用はない。我が子の糧としようぞ。)




 ミネルザを地面に投げ捨てます。無造作に地面に転がる彼女……。子蜘蛛達が、我先にと群がろうとした時1匹は袈裟斬りに、1匹は矢が貫いて壁に刺さってました。




「お前らに喰わせるには勿体無いんだよ!」




 おお!ガザックさん達です!彼女を救ってくれました。これ以上彼女を無惨な姿にはしたくありません。ナイスです、ありがとう!




(ほう!お仲間がいたのかい。これはこれは……。食べごたえがありそうだのう。我が子等よ、其奴も捕らえようぞ。)




 子蜘蛛達が、ガザックさん達に群がろうとします。ですが、相手は元騎士に傭兵です。こちらもただで捕らわれる訳がありません。剣や弓で蜘蛛達を叩き落とし、切り払ったりと彼女を守ってくれてました…………。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




 


(……ト………雅人……皇雅人………。)




 だ、誰だ!私を呼ぶのは。その呼ばれる声で目を覚まします。しかし、周りは真っ白な世界………。全く何もありません。しかも私も地面がなく浮遊している感じです。あら、私元の人間の姿……。素っ裸で……!?はずかし~~~!…………失礼しました。でも、ここどこ!?




(皇 雅人……。)




(だ、誰だ。)




(我ハ汝ナリ。汝ハ我ナリ。)




 え、ちょっちょっと待って、我ハ汝………って、まさか!?龍である君か!?




(ソウダ。)




 私の考えがそのまま通じたのか、返事を返してきました。




(な……でも、私が転生して……。)




そうなんです。転生して、この龍として生活していた筈ですがどうして?




(汝ハ、マダ思念体ノ状態ダ。完全体デハナイ。)




 あ、成る程。それで今人間の姿で……マジか?




(彼女ヲ救イタイカ?)




(な、なんだって!)




 え!?それって、どういう事?彼女を助けられるのか!?突然、突拍子も無いことを言われたので混乱してます。




(助ケタイカ?)




 龍は再度聞いてきました。




(助けたい!だが、どうやって?)




(我ト同化スレバイイ。)




(同化する!?)




(ソウダ。ソウスレバ、彼女ヲ助ケル事ガ出来ル。)




 本当か?もしそれが本当なら………彼女を助けたい!生きて再会したい!彼女の微笑む姿が見たい!




(分かった!同化してくれ。どうすればいい?)




(ナラバ、条件ガ二ツアル。)




(な、なんだ。条件て?)




(ヒトツハ、我ト同化スレバ、元ノ人間ニハ戻レナイトイウ事。モウヒトツハ、我ノ生命エネルギーガ汝ニ注ガレル。膨大ナ痛ミト苦シミガ襲ッテクル。ソレニ耐エキル事……。)




 なんと!そういう事ですか。ならば思いは一つ……。




(それでもいい!彼女はこんな私を好きと言ってくれた。凄く嬉しかった。あんなに良い女性はいない!彼女を救えるのなら、人間に戻れなくても悔いはない!苦痛にも耐えてみせる!)




(……イイダロウ。デハ、ハジメルゾ……。)




 私は自身に気合いを入れました。するといきなり全身に痛みが走ります!更に強烈に熱い!




(ぐわぁぁぁぁ!あ、熱い!!身体中が焼けるようだ!ぐうぅぅぅ……、しかも何だ!更に足下から流れ込んで来るものが!こ、これが生命エネルギーというやつか?で、でかい!でかすぎるっ!ま、待ってくれそれ以上は……!?く、苦しい!重圧に押し潰されそうだ!全身も火だるまの様だ!ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!私もこんなにも凄まじいだなんて…………。


 このまま、私は耐えられなくて消えてしまうのか……。




(も、もう、耐え……られ……ない………。)




 さすがに限界が来ていました。これほどのものとは………。でも気を失いかけた時の事です。ほんとに一瞬の事でした。私の脳裏に突然、彼女の私に微笑む姿が!?




……………そうだ!彼女に逢いたい!彼女と……彼女と生きてあの笑顔がもう一度見たい!!




(ぐおおおぉぉぉぉぉぉ!!!)




…………………………………………………………………。




(な、何だ!一体何が起きておるのだ!)




 その私の外側でも、異常が起きていたようで。私の身体をミイラの様にグルグル巻きにしていた糸の包帯の隙間から無数の光が溢れだし、膨らんでいきます!




(な、何をしておる!更に糸を巻くのだ!)




 シャガラクがそう叫ぶも間に合わず、糸が粉々に弾け飛びます!




(な、なんという事だ………。)




「俺らでも、凄さが分かるぜ!」




 さすがガザックさんですね。圧倒的な力を感じ取っている。私は目を瞑ったまま、足元から力が溢れて来ます。半透明度のある物質が私をコーティングしていきます。両前足の左右外側に上に向かって刃のようにコートされ、尻尾の先は銛の様に3本の刃が。胸と翼膜には菱形の紋様が一つずつ浮かび上がり、角も増えて立派な形に。顔まで全身コートされます。




(な、なんだこれは………。)




 シャガラクも動揺し固まっていました。私は目を見開いて、奴を見据えて思いきり叫びます!




「グルォォォォォォォォ!!」(進化!!クリスタルドラゴン!!)




 そうなんです。同化どころか進化したんです。透明度の高い物質で魔力も含んだクリスタルをコーティング……それを全身に施して………。




 横を振り向くと、ガザックさん達が傷つきながらも、必死に彼女を守ってくれてました。




(すまない、ありがとう彼女を守ってくれて。)




「当たり前だ!こんな良い女あいつらに喰わせてたまるか!」




 ガザックさん、ほんとに感謝だよ。




(これが終わって落ち着いたら、一緒に飲もうよ。ご馳走するよ。)




「良いだろう、その話乗った!」




 彼女を優しく受け取ると、一度地面に寝かせて息を吹き掛けます。イメージをしながら吹き掛けるとクリスタルが彼女を包み込み、棺が出来上がり、それをくわえて自身の背中に乗せ、更に吹き掛けてクリスタルでコートして背中にくっ付けて固定します。 そして改めてシャガラクを見据えます。




(後は私に任せてくれ。奴は私が必ず倒す!)




 土煙が舞うほどに殺気を放ち、洞窟全体に満ちていきます。




(なんという殺気だ……。)




(シャガラク、彼女を無惨な姿にしたお前だけは許さない。彼女の代わりに無念を晴らす!)




(ふん!ほざくな小わっぱが!どんな姿になろうとワシの相手にならんわ!子供達よ、こやつを殺ってしまうのじゃ!)




「キシャァ!」




 無数の子蜘蛛達が一斉に飛び掛かって来ました!私は即座に斜め後ろにホバリングし、翼を勢いよく羽ばたかせて1本の大きめの竜巻を発生させます。通常の倍以上の高速回転で。しかも………子蜘蛛達がその竜巻の中風圧によって吸い込まれていきます。中では、竜巻に乗せて無数の小さなクリスタルの矢じりが……。それが幾重にも子蜘蛛に突き刺さり、絶息して地面に落ちていきました。元々8つあるシャガラクの丸い目が更に大きくなってました。




(な、な、なんという事だ………。おのれ!我が子達を!)




(あんたでもそう思うのか?最愛の者を失った気持ちが分かるか?)




(ほざくな!我が毒鎌手の餌食にしてくれる!)




 シャガラクが、3対の鎌の触手に猛毒を塗り始めました。私も対向する為に、口を閉じて左右の口元を少し開き、そこから息を出していきます。あるものをイメージしながら……。




 それは忍者が扱う武器の代表格の一つであるクナイ。握りがあって菱形の刃の付いた短剣です。私はそれを両刃にイメージして、口から左右にクリスタルを生成していきます。巧く出来たようです。太刀並みの長さはあるでしょうか、口の中に握りの部分をイメージして固め、それをくわえて武器としました。普通のモンスターじゃやらないですよね。私は普通じゃないって?ごもっとも。




(そんな紛い物でワシを倒せると思うてか!)




(やってみればわかるさ。)




(小癪なぁぁ!)




 鎌の触手を振り上げて飛び掛かって来ました!私も首を傾げて刃を上下縦にして、上に向いた刃を相手に向かって振り降ろしていきます!お互いに横をすり抜けたとき、悲鳴をあげていたのはシャガラクでした。




「ギャハァァァ!」(わ、ワシの触手がぁ!)




 そうです、私の刃が奴の左3本の触手を肩口から切り落としてました。地面に触手がバラバラに転げ落ちます。胴体からは体液が吹き出し、一気に疲弊したようです。




(お、おのれ!おのれぇっ!!)




 お互いに向き直り、再度突進し合います!私は同じく刃を縦にして振り降ろしていきます!すると、右の残りの3本の触手も切られて地面に転げ落ちます。シャガラクもさすがに動きが止まりました。大量の体液が流れ、動く事が出来ずにいます。




(おのれ、許さん。許さんぞ………。)




(そのセリフ、そっくりお返しするよ。これはもう必要無いか……。)




 そう言って両刃の武器をを上の方へと放り投げていました。後はブレス等で倒せる事でしょう。




(ククク……甘いな、ワシに切り札が無くなったとでもおもうたか。見くびってもらっては困るのう。まだもう1対あるのだよ! 覚悟!!………ガハッ…!?)


 


 もう1対の毒鎌手を振り上げ私に襲い掛かろうとした時、何かがシャガラクの身体を突き抜けて地面に刺さっていました。




(すまないな、必要ないと言ったのは私が手を下すまでもないなと言う事さ。)




(き、貴様わざと!?)




 そうです。上に放り投げて、相手の意識をこちらに向けさせて刃が奴の身体を貫くまでの時間稼ぎ……。




(ぬ、抜かったわ……。おのれ……くちおしや………。ガフッ……………。)




 シャガラクはその場に崩れ落ち、動かなくなりました。それを見届け、周りに灯されていた松明を全て燃やし、周りにも火を付け全てを火葬します。2度とこんな悲劇が起こらぬ様に………。




 そしてガザックさん達を乗せて飛び立ち樹海の外へと向かいました。その途中で、あの古代遺跡の頂上に降り立ちます。




「こんな所に降りてどうしたんだ?」




 私は黙って背中から彼女をクリスタルの棺ごとその頂上の地面に降ろします。


 ガザックさん達は訳が分からず動揺しながら私のする事に見いってます。


 そして、クリスタル棺の形をベッド状に変形させて彼女を寝かせ、自身の翼の一部を少し切り私の血の一滴を彼女の口に含ませます……………。




 するとどうでしょう!彼女の背中から腹部を貫通していた身体の怪我がみるみる治っていき傷も無くなります。ドクン!!と胸の辺りが飛び上がりましたが、静かに鼓動と呼吸のする音が………。




「……う………ん………。」




 彼女が目を覚ましてくれました。良かった。私は嬉しさと、生きて再会出来たことに涙を流しながら、顔を近づけました。




「マサト…………。」




 彼女が涙を浮かべながらはぐしてくれます。良かった!また彼女の笑顔が見られる!




「おいおい、嘘だろ?」




「愛の奇跡ってやつかもね♪」




「マジか!?」




 ガザックさん達が絶句しながら、私達の出来事を見つめていました。




(さあ、立てるかい?)




 私は彼女と共にゆっくり顔を起こしていきます。




「ええ、大丈夫……ありがとう。」




 んん!?……ちょっと待って?私、今文字を書いてませんけど、聞こえた?ガザックさん達には文字を書きましたけど。




(私の声が聞こえるのかい?) 




「あ、ほんとだ!聴こえる!凄いな!マサトの声って初めて聞いた!嬉しい♪」




 い、いや、その……照れますね。ビックリしました。 会話が出来る!私も嬉しい。そしてやっぱり彼女のこの笑顔が見たかったんです。最高です!




 そして、彼女も背中に乗せて、樹海の外へと向かったのです。




「おおっ!戻って来たぞ!!」




 騎士の一人が私達を見つけて叫んでました。村人達もみんな安堵の表情を浮かべてます……。




「みんな無事か?今戻った!」




「お姉ちゃん!龍さん!」




 おおっ!エマちゃん!ミネルザに抱きついてます。




「良かった!帰って来てくれて………。」




 あらら、涙一杯でみつめてきます。ミネルザは頭を優しく撫でながら、微笑みました。




「済まない、心配かけたね。もう大丈夫だ♪」




 エマちゃんに笑顔が溢れます。




「よし!みんな、村に戻るぞ!」




 こうして、何とか依頼をクリアしつつ村へと帰還したのです………………。


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龍に転生した私が惚れられました♪♪ 麗紫 水晶  @koryukisin

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