第7話 氷山の村と王国の影……。②
しばらく間が空きましたが、更新させていただきます。では……。
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こ、こんにちは。龍に転生して恋人がいきなり出来た、皇すめらぎ 雅人まさとことマサトです。
龍に転生だけでも奇跡だと言うのに、超美人の彼女が出来たなんて私の幸運を使い果たした気分……。
第一、転生前の人の時は全く持ってモテた事も興味を持たれた事もありません!どゆことこのモテ期?
彼女は元騎士団長で、守ろうとした者に逆に追い出されてしまった……。なんとも不憫で……でも、それがきっかけで私の所に来てくれる事に。
しかもですよ、告白までされちゃって……数百年、いや数千年に一度あるかないかです!いえ、そんなに生きてませんけど。って、龍ならあるかな?
こんな奇跡が起こるものですから、運を使い果たした気分なのです。
なので絶対彼女とは離れたくありません!唯一私を好きだと言ってくれた人ですから……。龍なんですけど。
それで今現在は氷山の村イネルに滞在中です。牙皇鯨ガザルホエールを倒した事もあり、村で宴をしてくれて、その話の中でガザックさん達も騎士団を抜けるとか言い出すし、そこをちゃっかり村長さんがスカウトしてるし……。更には村長さんが私達にまで依頼があると言い出す始末……。酔った勢いで……なんて言わないですよね?皆さん大丈夫ですか!?
いったいどんな依頼内容なのか……?なにか緊張……。
「おばあちゃん、依頼って何なの……?」
「そうだな、教えて欲しいんだが。」
そうですよねぇ、そりゃ皆気になります……。
「ほっほっほ、そう急くでない。今から話そうぞ。」
村長さんは私達の傍に来て、依頼の内容を話し出しました………。
「氷柱結晶ひょうちゅうけっしょう……ですか!?」
「そうじゃ、この世界には氷柱結晶と焔柱結晶えんちゅうけっしょうと2種類の結晶が知られておる。知っておるじゃろ?」
い、いえいえいえ、私は初めてですよ!詳しく知りたいんですけど……。
「ええ、知ってるわ。でも、それが?」
え……ミネルザは知ってるの?そうなんだ、後で教えてもらおっ♪で、その結晶が何か!?
「うむ、この氷山にはその氷柱結晶が取れるのじゃ。この2種類の結晶は貴重での……他の国や村との交易に必要不可欠な物じゃ。じゃが、それを妬む者が居ての……。村の者がそれを奪おうとする連中に、運ぶ途中で何度か襲われておるのじゃ。」
「成る程ね、それで俺たちか……。」
「そうじゃ、そなた達を直属に雇えばそうそう襲われる事も無くなるじゃろ。もし襲われたとしても追い払ってくれそうだしの……どうじゃ?」
ふ~ん、成る程ね元騎士団だし強いし護衛が出来て一石二鳥と言いたい訳か……。でも、頼もしいし安心度は上がるよね。
「だが、俺達がそれを金に換金した時点で奪って逃亡するかもしれないぞ。どうする気だ?」
「なに、逃げたとて騎士団を勝手に抜けた者はその国から罪に問われ追われる立場になる……何処に居たとして居場所はばれるじゃろ。そうなるよりは、ここで雇われ兵になってる方がお主たちにとっては好都合だとは思わんか?」
「はあっはっは!凄いな!そこまで考えてるんじゃ、叶わないな……。分かった!俺たちを雇ってくれ。荷運びはしっかりと働かせてもらおう!」
「交渉成立じゃな。報酬は売れた金額の2割と食事や家を提供するでの。どうじゃ?」
「おお、それは良い条件だな。よろしく頼むよ。」
村長さんとガザックさんが握手して利害が一致したようです。まあ、まずはガザックさん達が無職よりは良かったかなと言ったところでしょうか……。あ、私も無職だった……ちなみに龍って職業!?
「で、私達は何をしたらいいの?」
そ、そう、そうなんですよミネルザ。貴女と私で一体何をしろと?
「お前さん達には、あの牙皇鯨ガザルホエールを倒した実績があるでの。もうひと働きをしてもらおうかと思っての。」
「え、モンスターの退治とか?」
「うむ、隣のサイナ村へ行商に行くために”ラギーザの樹海”が間にある。日数を掛ければ遠回りする事も出来るのじゃが、物資を急ぐ事もあってその樹海を抜けねばならぬ時もあるのじゃ……。その樹海を抜ける時は最新の注意を払っておるのじゃが、最近大型のモンスターが現れるようになっての。其奴に襲われる事が多くて、ケガ人や死者も出てくる始末じゃ。しかも近くの村の外まで出没するらしくての、人的被害が出るやもしれん。じゃからお前達に其奴を討伐して欲しいんじゃ。どうじゃ、やってくれるか?」
なんと、さりげな~く凄い依頼じゃないですか。牙皇鯨だってたまたまですよ倒せたの。そんな、危険なモンスターを倒せと?まさか、私が居るから大丈夫とか思ってませんか?
「分かったわ。マサトが居れば大丈夫。」
うわぁいっ!ミネルザまで、そう思ってたりしたぁっ!?な、何気にプレッシャー凄すぎなんですけど……。
い、いったいどんなモンスターなんですか?その危険な生物は……。いや、私も危険か!?
(わ、私に倒せるかな……不安でしかないんだけど?)
「大丈夫……私はマサトを信頼してるし、私も勿論行くしマサトと一緒に居られるから安心だし……♪」
(ミ……ミネルザ……♪)
な、なんて嬉しい事を……優しいなぁ……涙が出そうですよ♪……彼女が私の頬に顔を寄せてきました。私も目をつむってその温もりを感じて……こんな幸せ気分を経験する事が出来るなんて、生きてて良かった。龍ですけど……。
「それで、おばあちゃんそのモンスターってどんな奴なの?」
そうそうそう、そこが知りたいです……。何せ私には初モンスターばっかりですから、どんな姿でどんな攻撃性を持ってるのかさっぱり分かりません。なので、詳しく知りたいんですよね……。
「うむ、そ奴の名は”夜叉蜘蛛”(やしゃぐも)シャガラク……。それぞれの脚には湾曲して上に向いた刃があり、牙が大きくハサミの様に研ぎ澄まされて、丸太ならば切り裂くじゃろう。背中からお尻にかけて模様が般若の面にも見えるし、狡猾で残忍さから夜叉蜘蛛の異名が付いた。毒性も強く、しかも何種類かの毒を使い分けているようじゃ。子蜘蛛を数十匹従えて、群れをなし獲物を囲んで捕らえるらしい。」
げっ!?マジすかっ!村長さん、それさらっと説明しますか!いや、聞いたのはこっちですけどね!でも、マジにキモくてヤバイじゃないですか!それって大変じゃん!
「子蜘蛛の数も厄介ね……。」
「おいおい、そりゃ俺たちも加わった方が良くないか?」
「そうだな……。一掃しないといけないが、逆にこちらの被害が多くても大変な事になる……。」
いやぁミネルザ、親蜘蛛も十分に厄介だと思いますが?
かといって、ミネルザの期待を裏切れないしなぁ……。
えぇいっ!ままよっ!どっちみち何とかしないと、他の人達の生活に危険が迫るんだからやるしかない!
(……了解です!何とか倒して来ます!)
「おおっ!頼もしいのう!宜しく頼むでのぅ、孫の事もな♪」
りょ、了解です!片方の前足を上げて敬礼のポーズ………のつもり……てへっ♪
かくして、私達はその問題の樹海へと向かう事になったんです………。
…………………………………………………。
「えぇっ!ガザック様の団が離反したですって!」
ガザックさんが騎士団を抜けた事に驚きを隠せない女性が1人……。
「はい、騎士団を辞めるとメモが部屋にあったそうです。」
「そんなぁ、今度こそガザック様に護衛してもらえると思っていたのに……。」
ガックリと項垂れている女性……そうです、彼女こそミネルザを騎士団を除名させた張本人。
この国のお姫様……“レミーナ”
「折角、あの女騎士を追い払ったのに何て事!」
え゛!まさか……お姫様がそんな事を画策してたんですか?怖っ!ミネルザ可哀想……でもこうして私は出逢えたんで良かったんですけど。そんな事とは露知らずな私達ですけどね。
「姫様……。」
「しばらく独りにして……。」
「……分かりました、では……。」
その男性は、また別の騎士団の団長。彼は逆に姫様に想いを寄せているようです。気にしつつも、部屋を後にしていました。
「いったい、どうしたらいいの……?」
椅子に腰掛け、テーブルを見つめる彼女……。
「クク……私で良ければ、協力させて頂きますが?」
それは彼女の斜め背後からの声でした。誰も居なかった筈の部屋の中で暗がりから音を全く立てずに現れた男性が1人……。
「だっ!誰っ!」
レミーナ姫も驚いて声の方に振り向きます。よく見ると赤黒の縦のストライプのシルクハットにスーツ。それに似合うかどうかの真っ白な革靴、すらりとした細身な男性が独特の杖を持ち立っていました……。
「私の事は“ジョーカー”とでもお呼び下さい……ククク。」
「ジ、ジョーカー……き、協力って?」
得体の知れない男性に警戒をしつつ、質問をしていました。
「私のお願いも聞いて頂けるなら……ですが……?」
違和感を感じながらも、しかし何か策をもっていると言う所が引っかかっていました。藁にもすがりたい一心で……。
「………いいわ、聞きましょう。協力してくれるのよね?」
「これはこれは有難い、内容を聞きもせず了承下さるとは光栄ですね♪」
「で、どうするの?」
「ククク、ではご説明しましょう。傍にお寄りしても?」
「えぇいいわ、説明して頂戴。」
ジョーカーと名乗る男は、靴音も小さくレミーナに近づきます。部屋の外には一切漏れないでしょう。
「まずは、ガザック様の居所は分かっております。」
「えっ!どういう事!?」
「潜り込ませていた密偵が戻りましてね、イネルの村に滞在していると……。」
「そ、それは本当なの?」
「確かです。但し、ただ呼び戻すだけでは得策ではありません。反発を買うだけの事………。」
「では、どうすれば良いの?」
「そこで、ここからが本題です。良くお聞きください……………。」
……………………………………。
ミネルザが、ガザックさんが元居た国の城の中で、とんでもない事を企んでいて動こうとしているとは……。
今の私達にはさっぱり知り得ない事なのでした。しかし、後にそれが大変な事になろうとは…………………………。
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読了ありがとうございます。まだまだ続きますのでお付き合いくださいね♪ 紅龍騎神でした……♪♪
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