第264話 更に異世界を蹂躙する我覇王
「それでは捕虜とした者たちから聞き出した情報を……」
「あ、その前に一ついいかしらぁ?魔王国の件で一つ報告があるのだけどぉ」
キリクが話を進めようとしたところにカミラが待ったをかける。
その隣にいるオトノハも気まずそうな顔をしているから、二人からの報告ということだろう。
「魔王国の……?」
「えぇ。災厄に関する話よぉ」
「なるほど。ではそちらを先にお願いします」
災厄関係の報告ということでキリクがカミラたちに場を譲る。
するとカミラではなくオトノハが資料を片手に立ち上がり話を始めた。
「災厄討伐前に懸念していた、災厄討伐時の魔力拡散に関する調査結果が出たよ」
魔王の魔力の拡散か……。
もしかしたら災厄を倒した時に魔王が死んだときのような現象が起きるかもしれないと、フィオを始めとした開発部の子たちに言われていた。
それを警戒して戦場近くの集落には最優先で魔力収集装置を設置していたんだけど、そのお陰か災厄討伐後に狂化する人は出なかった。
魔力収集装置がある以上、爆発的に魔王の魔力が増える可能性のある討伐直後に狂化しなければ後は大丈夫だと考えていたけど、人命にかかわることなので討伐後もオトノハたちに調査、監視を頼んでいたのだ。
「討伐時もその後も、周辺地域の魔王の魔力量が上昇することは無かったよ。魔力収集装置の設置してある場所だけじゃなく、災厄が出現した荒野も調べたけど問題は無かったね。細かい数値はこの資料に纏めてあるから、あとで確認しておいてくれるかい?」
「ふむ、魔王国としてもほっとしただろうな。その話は早めに魔王国に伝えてやれ」
俺の言葉にオトノハが頷く。
これで狂化する人が爆発的に増えるということもないし、今後は魔力収集装置によって狂化という現象そのものが魔王国から消え去るだろう。
まぁ、向こうからしたら祝福という名の超越者を得る手段を失ったということではあるけど、それ自体は魔王を始めとした上層部のごく一部しか知らない話だし問題は無いだろう。
もし超越者や魔王の魔力の研究が進み、魔王国上層部以外がその事実……魔力収集装置が祝福を抑制していることがわかったとしたら、魔王国は大騒ぎになりそうだな。
「それとぉ、回収出来た災厄の体を少しだけ調べることができたわぁ。それでぇ、一応その件と関わると思うのだけどぉ、普通の魔力と魔王の魔力の二種類の魔力を吸収することを確認出来たわぁ。特に魔王の魔力の吸収率が高かかったわねぇ」
どうやら、あの箱に回収した災厄の一部はちゃんと持って帰ってくることができたみたいだね。
うちの開発部の子たちは本当に優秀だ。
あとうちの奥さんも。
それはさておき、災厄によって魔王国の魔王の魔力は抑制されていたのは確定……そしてそれを倒したことにより妖精族の多い魔王国はとんでもないことに……うん、やっぱり魔力収集装置やエインヘリアの排斥って話にはならないかな?
「今わかっているのはこれくらいねぇ」
「災厄についてはこれからもフィルオーネ様と研究をしていくから、また何かわかったら報告をあげるよ」
カミラとオトノハがそう言って報告を終える。
まだ災厄討伐からそんなに時間は経ってないっていうのに色々と調べ、急ぎ結果を報告してくれたわけだ。
今俺が一番気にしている話とも言えるからな……最優先で頑張ってくれたことだろう。
「他に何か報告することがある方はいますか?」
キリクが皆を見回しながら尋ねると、何人かが小さく首を横に振る。
それを確認してからキリクが改めて……眼鏡をクイっとしてから先程の話を再開する。
「かの国の名前はミルオース中央皇国。魔王国レシュトオルグと同じく二百年程の歴史を持つ国家だそうで、一つの大陸を完全に統一しているようです」
何かこっちの世界二百年の歴史持つ国多いな……ルモリア王国とかも確か二百年だったよね。
まぁ、偶然なんだろうけど。
しかし、大陸統一国家か……船でやってきた連中がデカい顔をするのも無理はないって感じかな。
といっても……自分たちの権威が自国の外でも通じると思っている辺り、頭は悪いけどね。
自国の国力、技術力、軍事力に絶対の自信を持っているのだろう。
しかし、世界は広い……必ずしも自分たちの持っているそれが、他所でも通じるとは限らないのだ。
勿論それは俺たちにも同じことが言えるけどね。
俺も……覇王ムーブを優先するためとはいえ、あっちの大陸に召喚された直後、強気に出た時はドキドキしたもんです。
彼我の戦力差を知ることは、国同士の付き合いとして何よりも大事な最初の一歩だろう。
まぁ、全力で見切り発車覇王ムーブかました俺が言えるこっちゃないかもしれないけど……さ、最低限ウルルを伏せたりとか安全マージンは取ったけどね?
しかしその……ミルオース中央皇国だっけ?
連中は危険な外洋を渡るだけの航行技術や造船技術を持ち、兵に銃を持たせ、船に大砲を乗せることができるくらい技術が進んでいる。
その姿をさらすことで相手の出方を見ていた。
自分たちに伍する技術、力を有しているのか。それとも相手にならないレベルの国力なのか。
だからこそ、俺はわざと侮られるように初動にかなり弱い動きをさせた。
剣や槍で武装した召喚兵を百人単位でバラバラと海岸線に二日かけて集める。
その様子は突然現れた未知の巨大船に慌てふためく、技術的に一回りも二回りも劣る国に見えたことだろう。
ましてや船団が来ているというのに海軍が出てくる様子もない……そりゃぁ、嬉々として上陸して制圧しようとしてくるよ。
俺たちのいる大陸がどのくらいの広さかは分からずとも、橋頭堡さえ作ってしまえば簡単に大陸ごといただける……連中はそんな風に考えた。
いや、そう考えるように誘導した。
その結果が連中の上陸からの恫喝……そして撃退からの拿捕鹵獲という訳だね。
実に美しい予定調和……後は相手の言葉や技術を吸収してから落とし前を付ける、って状況で俺が召喚されちゃったからな……そのせいで連中の寿命が延びちゃったのは、キリクたちにとっては相当不本意だった筈。
そう考えれば、レヴィアナたちの大陸が消し飛ばなかったのは、俺が頑張ってあちこち動いたおかげだろう。
向こうの大陸の連中は、もっと俺に感謝していいと思う。
オロ神教は断絶するだろうけど、それ以外はかなり丸く収まったよね?
まぁ向こうの大陸はさて置き、ミルオース中央皇国は……どうなるかねぇ?
多少誘いはかけたとはいっても、向こうからノリノリで攻め込んできたわけだしね。
こちらの事情とはいえ今まで生きながらえたことが慈悲……そんな風にキリクたちは考えてそうだしなぁ。
勿論、相手の大陸ごとひっくり返るような酷いことはするつもりはないし、させるつもりもない。
その上で、キリクたちがどんな戦略をとるか……しっかり聞いて、俺の意見も伝えていかなければならない。
しかし、なんだろうね?
今日の会議の前半の話題に比べて……なんて気が楽なんだ。
フィオと話をしてからの数日、マジで胃が口から出そうだったしね……。
そんな胃痛との戦いの日々に決着をつけた俺にもはや死角はない。
そんな穏やかな気持ちで、キリクが説明してくれるミルオース中央皇国の情報に耳を傾ける。
……。
まさかここでまた召喚……されたりはしないよね?
フラグじゃないよ?
俺はフェルズ……覇王フェルズだ。
何の因果か異世界に呼び出された先でさらに召喚され、別大陸の国を潰したり取り込んだりと暴れ回った、異世界を蹂躙する覇王だ。
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ここまで読んで下さってありがとうございます!
これにて『覇王になってから異世界に来てしまった! ~エディットしたゲームキャラ達と異世界を蹂躙する我覇王~』第二部完結となります。
この後はいつも通り閑章に入りますが……閑章に入る前に少しの間お休みを頂きたいと思います。
奇数日投稿のはおーを楽しみにしてくれている方には申し訳ないのですが、書籍の方の作業をお休み期間に一気に進めさせてもらおうと思っています。
それが済み次第、閑話を進めていこうと思います……閑話用に飛ばしていた話とか、あれやこれやを書いていくつもりです。
あ、お休みは長くても十日前後だと思います!
因みに第三部も考えているのですが……こちらはまだ書くかどうかは未定です。
それと皆さんに一つお願いがあります!
次にくるライトノベル大賞2025のエントリーが開始されました。
今年1巻の出たはおーにもエントリー資格があります。
こちら、ノミネート前の予選といいますか、エントリー時点で篩にかけられるそうなので、是非皆さんにはおーを推薦して頂きたく!
何卒!
次にくるライトノベル大賞2025
https://tsugirano.jp/
こちらで推薦というかエントリー応募できるので是非お願いします!
因みにはおーの正式名称……覚えていますか?
覇王になってから異世界に来てしまった! ~エディットしたゲームキャラ達と異世界を蹂躙する我覇王~
これですよ!
皆さんの御力で是非、はおーをスターダムに押し上げてください!
よろしくお願いします!
長々と失礼しました。
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