第246話 ファーストコンタクト
災厄の根本……足元?付近まで駆けこんだ俺たちは少し離れた位置で停止する。
いや、でっかいね。
聳え立つ巨木は十階建てのビルよりもさらに大きそうだ。
これで銀色じゃなかったら自然の雄大さに感動……いや、デカすぎて感動どころの騒ぎじゃないか。
しかし……。
「災厄という割には随分大人しいな?」
「そうねぇ。いきなり出現した割にはその後微動だにしていないわぁ」
てっきり出現と同時に大暴れするもんだと思っていたけど……っていうか、コイツほんと突然現れたよな?
「リーンフェリア、こいつが現れた瞬間は目撃したか?」
「いえ、私が気付いた時には既にこの場に居ました」
「ふむ……カミラやシュヴァルツはどうだ?」
「私も見てないわねぇ」
「ふっ……」
カミラはともかくシュヴァルツは答えてねぇだろ……いや、見てないってのは理解できるけど。
理解できるというか、理解出来ちゃうというか……。
「リーンフェリア達に気付かれず、こんな巨体がここまで接近できるはずもない。この場に突然現れたと見るべきか?」
「これが姿を消して移動して来たとは考えにくいわねぇ。周囲の地面も問題無さそうだしぃ」
この巨木の向こう側の地面はみえていないけど……確かにカミラの言う通り周りの地面が荒れている様子はない。
ってか、この木は移動出来るのだろうか?
「主、やってしまっても構わんか?」
俺たちが周囲を観察していると、シュヴァルツが弓を片手に尋ねてくる。
「フィオが災厄の遺骸を調べてみたいと言っていたからな。できるだけ綺麗に絞めたいところだ。それに少し様子を見たい。無論、危険な様であれば……構わず殺す」
フィオのお願いは大事だけど、それを無理に叶えようとして怪我でもしようもんなら逆に怒られるしね。
ってか、リーンフェリアたちが怪我させられたら、普通に全力で消し飛ばしたくなると思う。
「ふむ。ではとりあえず様子見……」
「キィィィィィィィィィィィィィィィ!!」
シュヴァルツの台詞を遮るように災厄が叫び声をあげる。
いや、これ叫び声なのか?
何か耳鳴りみたいにずっと残ってるんだけど……後どうでもいいけど、木が木って叫んでるな……そんなしょうもないことを考えた次の瞬間、枝の一本が伸び、俺たちに向かって振り下ろされた。
即座に反応したリーンフェリアが盾を上に構え受け止めようと……。
「リーンフェリア!避けろ!」
振り下ろされた枝は細く鋭い……剣みたいな形状をしている。
それがリーンフェリアの盾に当たる直前に叫んだ俺は、左方向に飛び退く。
同時に、俺の声に反応したリーンフェリアは盾を引きながら、その場でベリーロールでもする様な横回転をして枝を避けた。
カミラとシュヴァルツも問題なく避けたが……地面に叩きつけられた枝、いや地面を切り裂いた枝はゆらゆらと揺れながら元の位置に戻っていった。
「結構速かったわねぇ。それにかなりの切れ味だわぁ」
「フェルズ様……申し訳ありません」
「いや、俺もギリギリまで気付かなかったからな」
先程から耳鳴りのように続くこの音……多分これはあれだ、振動による高周波ブレード的なヤツ。
よくわからんけど、多分そういう感じの攻撃をしてきたのだろう。
災厄の振り下ろした枝が薄刃の剣みたいな形状をしているのが見えた俺は、咄嗟にリーンフェリアに躱すように指示を出したのだけど……予想は間違っていなかったと思う。
まぁ、リーンフェリアの盾を切り裂けたかどうかはわかんないけど。
しかし、予想以上に速く、攻撃力も高い。
これは……思っていた以上に厄介な相手か?
「枝の切れ味は相当高そうだ。受け止めるのではなく、避けるか受け流すかした方が良さそうだな」
「ふむ。ならば我が一矢にて穿ってみせよう」
そう言って一歩前に出たシュヴァルツが今度は斜めから振り下ろされてくる枝に向かって矢を放つ。
放たれた矢は一直線に迫りくる枝に当たり……そのまま枝を貫通して飛んで行った。
今矢が当たった部分は先程のような薄刃になっている部分ではなく、普通の枝のような丸みを帯びた部分に当たっていたと思う。
「主、あれは液体のような感触だ」
「そのようだな」
矢が当たった瞬間に枝が千切れたんだけど、確かにほとんど抵抗なくすり抜けたって感じに見えた。
でも、先程の振り下ろしの攻撃は間違いなく地面を切り裂いたわけで……振り下ろしだから高圧水流って事も無い筈。
ってか、いつの間にか甲高い耳鳴りのような音が消えてるな。
だから矢で貫けた?
それとも矢で貫いたから止まった?
くそ……しっかり観察すると言っておきながらこれだよ。
そんな風に心の中で自分に悪態をついていると、巨木が無数の枝を生やし叫び声をあげる。
「フェルズ様、もう一度受けさせてください」
「任せる、リーンフェリア」
真剣な表情のリーンフェリアが盾を構え再び俺達の前に立ち……次の瞬間、巨木から枝の乱舞が俺たちに襲い掛かってきた。
数多すぎ……そう思ったけど、先頭に立つリーンフェリアが押し寄せる乱舞を盾で全て捌いていく。
しかもリーンフェリアの盾に当たった枝が、先程シュヴァルツに貫かれた枝のようにパンパン音を立てながら弾け飛んでいる。
枝による攻撃は確かに速い。
いつも比較に出して悪い気もするけど……エリアス君より速い。
でもリカルドの全速力より遅い……つまり俺たちからしたら、へぇ、速いじゃん……くらいの速度だ。
数は多いけどリーンフェリアであれば問題なく捌けるし、恐らく俺が今からシュヴァルツに全部撃ち落とせと言えば即座にやってくれるだろう。
少なくとも枝による攻撃は俺たちの脅威ではない……当たらなければという意味でだが。
「フェルズ様」
俺がそう判断すると同時にリーンフェリアから呼ばれた。
絶賛枝による乱舞を弾け飛ばしている最中だけど、その声音はいつも通り……余裕ってことだね。
「最後の一撃を受け止めようと思いますが、宜しいでしょうか?」
「……いけるか?」
正直危険なことはして欲しくないって思いもあるけど、リーンフェリアは俺が最初に言った様子見ってのを確実にこなそうとしてくれているのだろう。
……やるなとはいえないよなぁ。
「はい。最悪盾を斬られたとしても躱せます」
「わかった。許可する」
「ありがとうございます。では三秒後に一歩左に動いて下さい」
こちらを見ずに告げてくるリーンフェリアの言葉に従い三秒……くらいしてから俺は一歩左に動く。
その直後に左上から振り下ろされた最後の一撃が、斜め上に構えた盾に吸い込まれ……次の瞬間、リーンフェリアが盾をひねるように動かし枝が弾け飛ぶ。
「……申し訳ありません。やはりフェルズ様のおっしゃる通り、盾で受け止めるのは無理でした」
そういってリーンフェリアが盾を見せてくれる。
何処も問題ないように見えるが……いや、すっごい細い傷が一つ、一直線についている。
「あのまま受け止めれば盾は真っ二つになっていました。フェルズ様の御慧眼恐れ入ります」
いや、恐れ入ってるのはこっちだよ?
受け止めるつもりで構えていたのに、斬られそうになったから途中で盾をひねって弾いたってことでしょ?
いくらそこまでの速度じゃないっていっても、盾と接触してからヤバいと判断して弾くって……普通無理じゃよ?
「無事なようで何よりだ。盾が斬られると思ったから途中で弾くように動いたという訳だな?」
「はい」
涼しい顔で頷くリーンフェリア。
……ま、まぁ、なんというか……本当に無事で何よりだ。
しかし敵さんの枝……今の乱舞でビル四階分までの枝が全部なくなった感じだね。
上の方にはまだまだいっぱいあるけど……少なくともリーンフェリアにとっては問題ないだろう。
予想以上に切れ味が鋭いから、リーンフェリアやシュヴァルツはともかく、カミラは危ないかもしれない。
あと俺も。
今のところ、攻撃力はかなり危険、速さはそこそこ速い、防御力はほぼ無い……そんな感じ感じだろうか?
とはいえ、この程度で災厄と呼ばれるには……温いよね。
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