第92話 さよなら、世界

今日も、感情の動きはあまりない。

無表情。


心が動かない。


私は、保育園と掛け持ちで心療内科のクリニックでも働いている。

クリニックでは、オープニングスタッフとして、かれこれ1年ちょっと働いている。


ガチ鬱になって、2ヶ月ほど仕事に行けなくなった。

ガチ鬱から明けて、仕事に戻ったら、私の居場所はつま先程度にしかなかった。


「医療事務が何人か辞めてしまったので、事務もできる看護師を雇いたい」ということで、常勤の看護師が見つかり次第、私のポジションはなくなる、ということだった。


ガチ鬱になって、本当に大変だった。

やっと戻れた職場。


でも、追い出されてしまう。

次の居場所を探さないと。


私は、別に「必要とされていた」わけではなくて、ただの「つなぎ」であって捨て駒だったわけだ。 


面接の時はそんなこと言われなかったし、雇用契約書も、「無期雇用」って書いてたんだけどな。


普通は、惜しまれつつ辞めることが理想なんだけどな。

辞めて喜ばれるんだもんな。


今までの自分の人生を、ふと振り返ってみた。


小さい頃から母と姉から虐待を受け。

信じられる大人もなく。

高校生になって、母に怒られるからと知らないおじさんに助けてもらうようになった。

大学に入って、自殺未遂を起こした。

そこがきっと発症だろう。


学生だからお金もなくて、治療を頓挫したら、躁と鬱の波と間隔がだんだんおかしくなった。社会人になって、職場も転々、お金もなくなって、好きな人も去っていった。


ついに私も結婚か、と思ったら病気のこともあって婚約破棄になった。


それでも結婚できて、ガチ鬱になったら「死にたいなら離婚してからにして」と突き放された。


大人になったら、幸せになれると思ってたのは幻だった。


私はどうしてこんな人生を歩んでるの?と思ったらいささか悲しくなった。


ちょっと、この世界と距離を置きたい。

少しの間でいい。


こんな時の私の味方はだいたい薬だ。

サイレースを、ポリポリとつまむ。


そのうちに意識はなくなるだろう。


しばしお別れだ、この世界。

眠ったまま、永遠にお別れなら楽になれるのに。


でもきっとまた目が覚める。


それでも逃げたい。


だからさよなら、この世界。








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