第78話 父の思い出

写真教室の課題を撮るために、3時間かけて海に行ってきた。


ゴツゴツとした岩がそびえ立っている。

岩場を歩きながら写真を撮る。


海はキレイだ。

心が洗われるとでも言うのだろうか。


私は海のある街で生まれ育った。

その時は父もいた。3歳までは。


7歳を過ぎてから、父は会いに来なくなった。

父だけは味方と、電話の前で待っていた。


でも、電話は鳴らなかった。


海に来ると、そんなことも思い出す。

父は、私のことを覚えているだろうか。


私が覚えている父は、声だけだ。


父は、私の存在くらいは覚えているだろうか。

娘がいたこと、忘れないでいてくれているだろうか。


海はキレイだが、私の心は相変わらずさっぱり動かない。

今日は1度も笑ってない。声も出していない気がする。

周りが羨ましくなるばかりで、自分の持つ強みとか良さなんて全くわからなくなっている。


社会のクズとでもいうのか、とりあえず消えたい願望。

完全に鬱に転じてしまった。

トリガーは旅行。やっちまった。


病気のせいだとはいえ、つらい。

何をしても気が晴れないし、全てが悲観的に、否定的な思考になってしまう。


故に、自分以外の誰か全てを羨んでしまう。


可愛くていいな、

胸デカくていいな、

痩せてていいな、


等々。


私は自分の見た目が嫌いだから、特に外見に目が行く。


こんなに漫然と苦しくてつらくなるなら、いっそのこと病気の治療なんかしないで死んでしまいたい。


自殺率が高い病気というのはよくわかる。

そんなに簡単には死ねないが、、


大抵は未遂で終わるだろう。私もそうだった。


調子が良い、と調子に乗っていたらこんなもんだ。


しょーもな。

そして今日は何だか音過敏がひどい気がする。


マジでしょーもな。




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