第76話 醜い私

2022.6.9

去年の夏。週6で働いていた。パーソナルトレーニングにも通って、通信教育のスクーリングにも行っていた。

週7、フル稼働。

旦那のお弁当もちゃんと作っていた。


自分にとっても、旦那にとっても、「良い妻」だっただろう。


でも秋くらいになり、残暑で夏バテになったのをきっかけにしてガタガタとガチ鬱に転じた。


チーズとコーヒーしか受け付けなくなった。

イタリア人か何かですか?


そのうちに、ブラックサンダーばかり食べるようになった。

クラッカーとか、とりあえずサクサクするお菓子系。

数ヶ月、私の身体はお菓子で作られていた。


そんなこんなで、冬には自分の誕生日が来た。

私は「お前なんか産まなきゃよかった」と言われて育った身分だ。


毎年、誕生日はつらくなる。

お祝いされるはずの日は、望まれなかった日だから。


そんなことも重なって、私は、自分の誕生日に自殺未遂をした。

神田沙也加が亡くなった日に、私も自分を自分の手で殺めようとした。


そんなこんなで、双極性障害の診断が付いた。

リチウムを飲み始めた。


ご飯も食べられるようになった。

ブラックサンダーのおかげで5キロ減ったのに、戻ってしまった。

仕事にも復帰した。


順調だ。

と思ったが、生理が来なくなった。

周期がかなり不定期になった。


薬の副作用ではなさそうだ。


きっと、数ヶ月もの間、どえらい偏食状態になっていたことの代償だろう。


職場からの信用もきっとなくなった。


体重もせっかく減ったのに戻ってしまった。


私は豚。


太っている自分など認められない。

外にも出たくない。


生理を来させるためのホルモン剤のせいか頬にニキビが増えてしまった。


生きているのがしんどくなってきた。

でも、じゃあ自分を殺めようか、ともならなくなった。


いっそのこと誰か殺してくれ。


私の、バイト先の心療内科でかつて見たカルテに、そんなことが書いてあった。


みんな苦しいんだ。

私も苦しい。つらい。


何で「普通の人」じゃないの?


こういう時に心療内科を受診するから「うつ病」と言われて抗うつ剤を出される。


ウダウダしているうちに上向きになる。

それでまた抗うつ剤を出される。


その繰り返しで、12年。


久しぶりに履いたデニム。

体重が戻ったからか少しキツイ。


死にたくなる。

太った自分は、本当に醜い。


太って、ニキビだらけで、生きてる価値なんてない。

そんな風にすら思う。


病気のせいだからそんな風に思うんだ。


旦那はそう言う。


何も知らないくせに、「普通」しか知らないくせに、わかったようなこと言いやがって。


どうにも、もどかしい気持ちになる。

病気のせいでも何でもいい。


つらい。

早く抜け出したい。

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