第42話 月が、綺麗です

2022.5.15


昨日の夜、私はマンションの屋上にいた。


心療内科で働いていると、いろんな患者が来る。

中には、私と同じ病気を抱えている人もいる。


双極性障害の患者は、言葉は悪いが、皆「ロクでもない」。


生活保護に風俗勤務、子供部屋おじさんみたいな人もいる。

頑張って働いていても波に負けてガチ鬱になって障害年金を受給する人もいる。


そんな人たちを見ていると、まるで自分を見ているようだ。

私も当初は週5日の正規雇用で頑張って働いていた。


波に翻弄される度に職場を転々とした。


社会の中に身を置き、働きながら闘うにはとても難しい病気だ。


それでも抗って、薬を飲みながら、社会との繋がりがなくならないように、何とか踏ん張る現状。


しかし、そんな想いを躊躇いもなく壊すのが「心療内科で働くこと」なのだ。

自分の未来予想図みたいな患者もいる。


昨日は、自分の将来を悲観して、とてもつらくなった。


職場の、キラキラと輝いている若い医療事務の子たち。


お金に困ることもないであろう、女性ドクター。


3人でクソほどどうでもいいことでゲラゲラ笑っている。


私はピエロを演じるのみ。


皆が、羨ましい。

ないものねだりだけど、欲しい。


何とか耐え忍び、帰路につく。

気付いたらマンションの屋上で泣いていた。


私は高所恐怖症だ。

飛び降り自殺だけはしないだろうと勝手に思っている。


ただ、高いところで、夜景を見ていた。


雲の隙間から顔を覗かせる月が、綺麗だった。


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