第27話「異常」が「異常」を看る

2022.5.7


今日は、心療内科でバイトの日。


1年ほど働いているが、双極性障害であることはもちろんバイト先には伝えられていない。


当事者が当事者を看護するなんて、ばかげている。

わかっているけど、人間関係が悪いわけでもないし、労働環境が悪いわけでもない。


ただ、やはり診療科がアレなだけに、カルテを見たりして自分と似たような患者がいると、引っ張られてしまう。


帰る頃には気持ちがずーんと重くなる。


双極性障害の患者のカルテは、だいたいジェットコースターみたいだ。

うつ病の患者とかだと、少しずつ回復の兆しが見えていたりするが、双極性障害の患者は、躁エピソードか鬱エピソードで、まぁまぁ安定している患者は、そんなに多くない。


自分と似たような症状でみんな受診している。

私も、違う心療内科では立派に?「患者」なのだ。


それを考えると、そこで働いていることが後ろめたく感じるし、同僚たちとの距離を感じてしまったり、後ろめたさを感じてしまう。


隠し事をしている後ろめたさ。

当事者であることの申し訳なさ。

バレたらどうしようという焦り。


リストカットの跡を隠すためにゴツい腕時計。


やはり同僚たちは「普通の人」だからリストカットの跡がある患者とかには「あの人……」とヒソヒソと話している。


私も、陰でヒソヒソとされるのではないか。

そんな疑念すらも感じながら、疑心暗鬼で仕事をすることもある。


好きな場所なのに、私はいてはいけない存在。

ある意味恋愛みたいだ。


ヤマアラシのジレンマ的な思いを抱えながらバイトをする。


きっと、精神疾患をクローズにしながら働いている人は、多くの人がこんな思いを抱えているのだろう。



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