第4話 世弟との出会い

「世弟様、世弟繍房尚宮でございます」


「入ってくれ」


繍房尚宮が襖を開け中へ入る。礼をした後

ゆっくりと座る。蘭はまだ従7品の為

男性の王族を正面から見ることは出来ない。

緊張して手が震えているのが分かる。


「そんなに緊張しなくてもよい。

至世いせ尚宮、二人に茶と

菓子を」


「はい、世弟様」


「茶を待つ間にそなたが刺繍した物を

見ておこう」


繍房尚宮が箱の中から蘭が刺繍した物を

取り出し世弟に献上した。絹の布に銀の

糸で刺繍した昇り龍や、様々な色の糸で

花を刺繍もの、計二枚だ。

世弟はそれらをじっくり観賞した後何故か

繍房尚宮を部屋から出し、蘭を正面に

座らせた。


「尚宮もいないのだ、面を上げてくれ

ないか ?」


「し、しかし・・」


「二人きりだ、誰もそなたを咎めることは

ない。私はこのような綺麗な刺繍を

施したそなたの顔が見てみたいのだ」


世弟の頼みを断る訳にもいかず蘭は

ゆっくりと顔を上げていく。蘭の顔を

見た世弟は暫く何も言わなかったが

我に返り、目線を刺繍に向ける。


「これを五日で作るとは。そなたは

手先が器用だ、それに柄の選定

もいい。そなたの実力なら王専属の

繍房尚宮になれるかもしれないな」


「そ、そんな!私などの実力では

尚宮様に到底敵いません」


「謙遜するな。まさか女官にここまでの

才能があるとは思わなかった。繍房

尚宮、いるか」


世弟は繍房尚宮を呼び出しある令を

出した。

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