この背後霊なんなんだよ!?

 気力を振り絞りお風呂に入ったけどもやっぱり、背後霊の幽子は憑いてきて、最悪だった。

 

 何しろお風呂でいくらお湯をかけても洗っても、血が落ちることは無くて、実奈三幽子はスプラッタ姿で今も元気に取り憑いている。

 

 お風呂にお塩撒いてみたけど効果はもちろん無かった。どんだけ強い幽霊なんだろうか。

 

『心良くん、乙女との初お風呂はどうだった?』

 

「最悪だよ。制服は脱げないし、血みどろスプラッタ系女子がお風呂にいて喜ぶとかホラー映画好きでも無理だろ?」

 

 お風呂上がりの自室にてスプラッタ幽霊が話しかけてくる。

 

『もぉー心良くん素直じゃないんだからぁ♡ツンデレ男子って可愛いね』

 

「それでいいから今日は寝るよ。明日も学校あるし」

 

『添い寝してあげようか?まだ私、生娘かもよ?』

 

「絶対に断る!布団がその赤いくて乾かない謎の血で汚れたらどうしてくれるんだ?」

 

『大丈夫だと思うけど、仕方ないなぁ、出血大サービスで子守唄を歌ってあげよう』

 

「歌くらいは好きにしていいから、とにかくおやすみ」

 

 物理的に出血してるスプラッタ系幽霊だけど、ツッコまないからな!!

 

『はーい、幽子ちゃんの本気魅せちゃうぞ♡』

 

『ねんねんころりよ♪ おころりよ♪

 坊やはよい子だ♪ 

 ねんねしな♪』

 

 普通にめっちゃ上手いし、幽子の変なテンションに付き合ってたからか凄く気持ちよく寝れそうだ。これは惚れてしまうかもしれん。あぁ人の優しい歌声は落ち着く・・・(。-ω-)zzz. . .

 

『ねんねのお守りは♪ どこへ行った♪

 あの山こえて♪ 里へ行った♪

 

 里のみやげに♪ なにもろた♪

 でんでん太鼓で♪

 

 ズドドド!!ドドン!!カッドンドドン!!カッカッドドン!!』

 

「うるさいよ!でんでん太鼓でそんな音出ないから!!ってそうじゃなくて、どんだけボイパ上手いんだよ!?」

 

『心良くんが寝ちゃうとつまんなくて、演っちゃたみたいな?』

 

「質問されても俺は知らないよ!!なのんなの?呪縛霊がボイパで起こしてくるとかありえないだろ?もう、過去の恨み辛みで成仏出来なかった幽霊に謝れよ」

 

『むぅ、渾身の子守唄だったのにぃ、ボイパなんてテレビで見たのを、一人で完コピして、でも聞かせる人居なくて心良くんに初披露したんだよ。褒めて!!褒めて!!』

 

「上手かったよ。ガチの大太鼓みたいな迫力あったよ。もう深夜にやらないでよ。初めてのでも嬉しくないから!!」

 

『えへへ褒められたー。心良くんが白濁スープ出さないし、このままじゃ幽子は眠れないじゃん』

 

「明日は学校なの!俺は真面目に授業受けるから寝かせてよ」

 

『分かっよぉ。ネットで○○見てるね』

 

「うん、いくらでも見ていいから、おやすみ」

 

『おやすみなさい、ぐへへぇ、電車○漢・○○し・メガネ・Jkコスプレっと、おっイイネ。心良くんのスマホデバイスに共有しとこ。次は修学旅行・夜○いっとこれもスマホデバイスに共有っと。大雨・濡れた制服・○○○・無人駅、うーん微妙だな』

 

 嫌な予感しかしないけど明日の俺頑張れ。今日の俺は寝るよ。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 スマホのアラームで起きるが腕が動かない。まさか金縛り!?指は動くし、全く動かないわけじゃない??なんだコレ?

 

 覚醒してきて、周囲を確認すると俺の掛け布団の上で、血みどろスプラッタ系幽霊女子の幽子が寝てる。幽子の重さでどうやら腕とかが痺れてるらしい。

 

「幽霊なのになんで物理的に重いんだよ!!後、幽霊が気持ちよさそうに寝るな!!」

 

『おひゃよー。女の子に重いとか心良くん!!鍛え方が足りないよ』

 

「ホモ・サピエンスは雌雄でそこまで大差はないんだが?」

 

『そんなんだから童貞なんだよ』

 

「ほっとけ」

 

 俺は制服にさっと着替えて、顔を洗って朝食を食べにリビングに行く。

 

「うげぇ、しん、お前幽霊に取り憑かれるぞ」

 

 親父は幽霊が見えるから当然そう言う。しんは家族からの呼ばれ方だ。

 

「あら?お父さん、しんは大丈夫なの?」

 

 母親は親父に霊感がかなり強くあると知ってる。親父も俺も魔法の才能が無いからどうにも出来ないけど。

 

「昨日の夜から取り憑かれてるよ。呪われたりはないけど迷惑極まりないって感じ」

 

『去年同じクラスだった実奈三幽子みなみゆうこです。事故で死んじゃって心良くんの背後霊になりました。今後とも末永くよろしくお願いします』

 

「「・・・」」

 

 血みどろスプラッタ幽霊系女子が三つ指ついて丁寧な挨拶をする。

 

「どんな霊が取り憑いてるの?」

 

 見えない聞こえないお母さんは不思議そうな顔をしてるけど、俺と親父はドン引きしている。

 

「ほら、昨日亡くなった、しんの学校の女の子だよ。見た目は轢かれた直後だから視えないほうが幸せかなぁ。あははは」

 

 年の功か親父は上手く取り繕う。そりゃそんな子が背後霊として、末永く取り憑くって三つ指ついて挨拶したとは言えないわな。

 

「あらまぁ、それは早く天国に送らないと行けないわ。掃除機で吸えばいいのかしら?」

 

「『それは、ゴースト○スタ○ズ!!』」

 

 親父と幽子がハモる。母親には親父の声しか聞こえないけどさ。俺は幽子に邪魔される前に朝食のトーストとホットミルクをせっせと口に運ぶ。

 

「そうだったわね。で掃除機で吸えそうなの?」

 

「多分掃除機で退治は無理そうだなぁ。本浄の本家に除霊を頼む方が良いと思うな」

 

 本浄家は魔法使いの才能を使って宮司をしている本物だ。地方の小さな神社なんだけど、出世すると魔法使いじゃない神職と軋轢とか、魔法協会との関係とか色々と面倒が起こるらしい。

 

 他にも水岡家、安倍家、芦谷家とか魔法使いじゃ有名な家系も多い。その人達に頼めばどうにかなるとは、思う。

 

 そんな本物の魔法使いは、科学の為にという事で非人道的な実験と受けてきて魔法協会を作り隠れている。だから、魔法を使って貰うと金はかなりかかるらしい。本浄家の本家は親戚価格で少し安くなるかも。

 

『えーわたし役に立つよ。学校の女子の性癖は全部知ってるんだからぁ♪心良くんが彼女を堕とす手伝いは完璧にこなせます』

 

「「・・・」」

 

 やっば幽子はそこらへんの悪霊よりも迷惑極まりない存在だな。

 

「うーん悪霊の手前かなぁ。大変なことになる前に、早く除霊したほうが良さそうだ。僕から本家には連絡するよ」

 

 親父は幽子を早く成仏させるつもりらしい。

 

『なんで!無理やりはしないし、洗脳とか呪いも使わないよ!!』

 

「その言葉は本当でも弱みを握ってて、好き放題しそうだし、そもそも発想が悪霊だよ」

 

 俺はトーストを食べながら、幽子に反論する。

 

『心良くんに彼女とイチャイチャして欲しいだけだよ?あっカンニングも出来るよ。カンニングしなくても私は学年でトップクラスだけどね』

 

「幽子って無駄に高性能なだけに、残念さが目立つな」

 

『ん?そんな事を言ってると心良くんのスマホ公開しちゃうぞ♡』

 

「公開してから言うなって」

 

「わぁ~ポルターガイストかしらぁ?どれどれ、あらお父さんの子供にしてはしん普通の趣味ね」

 

 母よ親父の趣味そんなにやばいの?

 

「そうだな。我が息子なのにこれほどノーマルとは摩訶不思議な事もあるもんだな」

 

 親父も息子の下の趣味を覗くなよ。俺の趣味じゃないけどさ。

 

「監○○○○とか、○○破壊とか、○○フェチとか、逆○○○とかないもの」

 

 親父よ守備範囲広すぎないか?SMのどちらかも判断がつかないぞ。

 

「エロければなんでもいいんだ。その点に関しては母さんは完璧だぞ」

 

「親の痴態は知りたくねー」

 

「あらあら、そのおかけで、しんは産まれたのよ?嫌っちゃダメよ」

 

『あー、これはごめんなさい。まさかこんなところに上な変態が居るとは思わなかったよ』

 

「いいよ、それは幽霊の被害だし俺の趣味じゃないしさ」

 

「そうよね。しんが、こんなノーマルな分けないもの。赤ちゃん○○○とか、実○NTRくらいは当たり前だもの」

 

「うぼぁ、俺は恋人同士がイチャイチャしてるだけで十分だって」

 

「おい、しん呪われてないか?頭は正常か?」

 

「親父、その心配の仕方はどうかしてると思うけど?」

 

「お父さんとあ母さんの息子のしんが、そんなエロく無いのは呪いと言われたほうがしっくりくるわ」

 

 母よお前もか!?

 

「うん、早く除霊して貰おう」

 

 もう全部幽子のせいにしよう。そして忘れよう。それがいい。

 

「それが安心だな。さてとそれじゃ遅刻するなよ」

 

「おっと思ったよりも時間がないな歯磨きして来る」

 

 親父に、せかされて俺は歯磨きして学校に向かうのだった。

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