奴隷に転生した朕。スキル皇帝で成り上がる。付いて来たいなら勝手に付いて来るが良い。

蒼真 咲

第1話 奴隷に転生した皇帝陛下



 僕の名前は、テラス。


 僕はツルハシを握って山奥にある鉱山で、必死に働いていた。

 とても暗い鉱山だ。

 明かりなどはなく、蝋燭一本でひたすら掘り続けなくてはならない過酷な環境だった。


 僕がこの過酷な環境で掘り続けている理由は……。


 僕は生まれつき奴隷だからだ。


 前世で、どんな悪い事したのか分からないけど……僕の運命は既に決まっていた。


 僕は……一生を奴隷として過ごすしか、生きる道は無かったんだ。


「ほら、ぼさっとすんな!脚を止めるな!」


 筋肉質の体をした看守のオヤジが、ムチを振るっていた。


「もう……足が動かねえだ……」


 その倒れていたおじいさんは、僕の事をよく面倒見てくれたゼペトンさんだった。


「動けねぇ奴は不要だ!死ね!」


「な……ぐあああ!!」


 ゼペトンさんは看守に切られて倒れてしまった。

 

 ここでは、働けない者には死が待っている……。


 僕も動けなくなったら、同じ道を辿るに違いなかった。


「オラ!何見てる!仕事に戻れ!」

「邪魔だ!退け!」


 僕は、看守の見回りの人に蹴られ、もんどり打った。


「ぐあああ!!」


「ガキが!邪魔なんだよ!ケッ……動かねえか……おい!こいつを医務室に連れてけ!ガキはまだ使えるからな!」


 僕は医務室に運ばれて……意識を失った。



◇◇



 ……昔の記憶が蘇って来る。


 これは……宮殿……そして……配下達……朕は……ユグテラス帝国皇帝……ユグテラス一世なるぞ?……って……え?


 なんだ?この記憶は?僕は帝国の皇帝だったのか?


 僕の頭には、更に記憶が流れてきた。


 何!?スキル皇帝!?これが僕の力なのか?


 スキル皇帝……ユグテラス帝国の皇帝が持っていたとされる超レアスキルらしい。


 それに……スキルの発動方法が分かった。


 え?これ本当に言うの?


「えっと、朕は皇帝である?」


 僕がその言葉を発すると、世界が揺れた。


 近くにいた男の奴隷が首を垂れて……僕に跪いた。


 え?何が起きてるの?


 一人、一人とその数は増えていき……多分、この鉱山全ての人がここに集まり、僕に頭を下げていた。


 いや、奴隷だけでなく看守さえも僕に頭を下げ、膝を付いていた。


 これが?スキル皇帝の力なの?


 効果範囲は、まだ分からないけど、どうやらこの鉱山については、スキル皇帝の効果範囲になっているようだった。


 すると、さっき僕を蹴り飛ばした看守が前に出てきた。膝は地面に付いたままだ。


「帝様、先程の無礼お許し下さい。ご命令とあらば、この命をもって罰をお受けいたします!」


「いや、命は大事にしようよ?」


「ではご命令を、我ら一同!ユグテラス帝の為に集結いたしました」


 え!?まさか……この人達って……ユグテラス帝国の英霊達なの?


 帝国の国民は、二億人を超えていた。それが何世代にも渡ると、とんでもない人数になる事は分かるけど。朕の率いた軍隊でも6000万人を超える忠実な軍隊を擁していた。


 多分この奴隷達は、その英霊達が朕と同じように転生した姿なのだろう。


 ならばやる事は分かっている。朕は、家臣と共に生きていこう。


「朕は初代ユグテラス帝国皇帝ユグテラス一世である!付いて来たい者は、勝手に付いて来るが良い!」


「「「「「「「「「「ははあ!!!」」」」」」」」」」



 こうして僕は、鉱山の連中を全て配下にしたんだ。



◇◇



 僕は、鉱山に見回りに来る連中や、視察や運搬係などを次々と配下に加えていき、鉱山自体を宮殿へと改造していった。


 これもスキル皇帝の力の一部だ。


 運がいい事に、ここは鉱山だったので材料には困らなかった。


 材料ををストレージに入れ、宮殿を選択し、必要人数を揃えれば、あとは勝手に作ってくれるのだ。


 宮殿を作るのはいいんだけど、僕にはやることがある。


 支配地域を広げるためには、レベルアップして能力値を上げなければならない。


 これも運良く鉱山の中にダンジョンの入り口を発見したので、これを攻略して行く事にした。


 ダンジョンに入ると、いるわ、いるわ魔物がいっぱい出てきたんだけど……。


「ひれ伏せ!」


「ガルルルル」


 魔物は倒す必要もなく、僕は全ての魔物を配下に加えていった。


 面白いことに、倒さなくても配下にするだけで僕のレベルは上がっていったんだ。


 これも、朕の記憶から学んだものだった。


 そしてダンジョン最下層に到着し、僕は運命の人に出会った。


 そいつはダイジョン最下層のボス。青龍……青いドラゴンだった。


「我の配下を全て奪われるとはね……」


「君の配下だったの?ごねんね?僕が取っちゃったよ」


「何と言う影響力なの?……我も逆らえないなんて……せめて……ご主人様の名前を教えてくれない?」


「僕?……朕の名前は、皇帝ユグテラス一世だよ?」


「ええ!?ユグ様!?まさか……転生なさっていたのですか?私ですよ?覚えていますか?」


 すると、青龍の体は小さくなっていき……小さい美少女の姿となった。


 青い髪の毛は胸まで伸ばしていて、丁度裸の胸を隠していた。


「君は……ユキナ?」


「そうよ?貴方の永遠の伴侶♡ユキナよ?会いたかったわ!ユグテラス♡」


 ユキナはそう言うと、僕に抱き着いて来た。


 なんと、この青龍は……僕の前世の奥さんだったんだよ?びっくりだよね?



 ダンジョンの最奥で……僕は、運命の人……ユキナと再会したんだ。



「朕は前世でたった一人、愛する人がいた。それがユキナであった」


「そうね……ユグテラスは、私だけを愛してくれたわね♡」


「うむ……今でもそうであるぞ?」


「うれしいけど……それが帝国が衰退した原因なのよ?」


「なんと?」


「世継ぎよ?私が生んだ世継ぎって全員がドラゴンなのよ?ドラゴン同士で争うのよ?あっという間に国は無くなったわよ?」


「まさか……そんなことが?」


「だから!今度は、私以外の人間の女の子と子供を作るのね……心外だけど仕方が無いわ……妾と第二婦人までなら許してあげるわ」


「今はユキナしかいないけど……善処するよ?」


 でも、折角だからユキナも抱きたいんだよ?


「ユキナ……♡」


「ユグ……♡」



 ダンジョンの最奥には大きなベッドがあった。

 

 ドラゴンしかいないはずのその最奥には、人間が入れるほどの扉があり、可愛い女の子用の部屋があったのだ。大きな天蓋付きのベッドは、まさに皇帝陛下の奥様である皇后様の部屋に相応しい豪華な造りであった。



「子供は作らないんじゃなかったの?」


「今は考えたくないな」


「もう、知らないんだから♡」



 数百年ぶりに再会を果たした二人に、言葉は不要だった。








読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

レビュー☆☆☆にコメント、応援♡を頂けたらとても嬉しいです。


更新間隔はゆっくりです。

まずは様子見です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る