Episode・2
広場に集められたプレイヤーは一様に困惑と恐怖の声を上げて慌てふためいていた。
そんな中で慌てずにおもむろに武器を取り出す男が一人。
「へぇ、死んでも生き返んのか。どれ、試してみるか」
『ドパァン!!』という発砲音が鳴り響く。広場のプレイヤーは唐突な轟音に思わず音の発生源へと目を向ける。そこには頭が消し飛び、血を噴水のように噴き出す死体が立っていた。
じきに糸が切れたように崩れ落ち、ピクリとも動かなくなる。
「え?」
「嘘だろ......あの人、躊躇なく自殺しやがった......」
「い、生き返るんだよね?」
「痛覚もあるんだよな?だ、大丈夫かあの人......」
当然ながら周囲のプレイヤーは困惑と驚愕の目を頭のないプレイヤーに向けた。
意外にも悲鳴は上がらなかったが、このゲームを長くやっていれば血が噴き出る程度ではあまり驚かなくなってくる。
ただ、現実となったゲームで躊躇なく自殺できるような狂人はそう簡単には生まれない。そう、このゲームと数年単位で付き合わない限りは。
「ふぃー、やっぱしっかり生き返んね。しかし頭ぶち抜かれんのは痛いねぇ~」
死体が粒子になって消え、消えた死体と同じ場所に同じ服装の男が現れた。
「赤さん......ゲノンさんがそんなミスするわけないとはわかってても真横で死なれると多少はびっくりするのでやめてもらってもいですか?」
「悪いねぇ、でも私が試さなかったらナノが試してたでしょ?」
「まぁ、恐らくは」
頭上にはゲーム時代と変わらず【
1年以上5年未満の期間【BLOOD-CODE】をやったプレイヤーはその名前を見て一斉に警戒態勢をとる。
逆に5年以上プレイしたプレイヤーは「またか...」という顔で二人を眺めている。
「お前ら!PK※の赤月とナノマシンか!?」
※プレイヤーキラー
そんな呼びかけに二人は反応はしたが、特に気にした様子もなく現状を整理しようと話し始める。そんな二人の周りにも上級者のように見えるプレイヤーたちが集まって相談をし始めた。
「現状慌てても何もいいことはないっぽいなぁ......逆に冷静に周辺の環境の変化とかがないかを調べていくほうが先決かな」
「おい!」
「確かに空腹も感じますね。眠気は私はわからないので、このなかで眠気を覚えている方はいますか?いたら現実と違う点などがないかを教えていただきたいのですが」
「おい!!無視するな!!」
先ほどから背後で戦闘姿勢を崩さないプレイヤーにやっと目を向ける。
「はいはい、なんでございましょ?」
「なんでPKで有名になったあんたらがそんなに堂々と目立ってられるんだ!」
「わたしたちPKって悪いことだと思ってませんもん」
「せやで、てかそんなにPKした覚えないけどな。それよりも君、声大きいよ~、さっき頭ぶち抜いたばっかだからまだちょっと頭痛いんだから」
「それは自業自得だろ」
外野からのツッコミで赤月の周りのプレイヤーが笑い、和やかな雰囲気に変わる。
「うるさいぞ!ゲーム時代は許されていたとしても、現実がこちらに移った現状でPKなんてさせるわけにはいかない!」
「はいはい、あの事の背景を知らないミドルルーキーは黙ってなさいな」
「な、なにをするんだお前らっ......!」
他のプレイヤーによって取り押さえられるミドルルーキー君を横目にメニューを開いて、ステータスなどに変化はないかを確認していくプレイヤーたち。
そのうちの一人がアイテム欄を開いて「なんだこのアイテム......」と声を上げた。
「なにかありました?」
「あぁ、なんか【転移ボーナスボックス】って名前のアイテムがはいっててな。詳細を見ようとしても『創造神ゲノンからの贈り物』って説明しかないんだよ」
「ほぅ......」
「俺のとこにもあったぞ!」
「全員に配布されているアイテムってことですかね」
「そういうことだろうな、よし!俺が先に開けようじゃないか!」
「流石だぜEX兄貴!」
「ちゃんと『エクス』って言ってくれよ...」
エクス兄貴なるプレイヤーがアイテムを取り出し小さな箱状のそれをゆっくりと開けると、光があふれる!ということはなく特に演出もなしに明らかに小さな箱のサイズとは大きさの異なる籠手のようなものが現れた。
「なんだこれ?籠手?」
「しかも一個かぁ......ボーナスって感じにしては少しインパクトに欠けるなぁ」
エクス兄貴は箱から出てきたであろう一組の籠手をまじまじと見つめ、しばらくするとわなわなと震え、口を開いた。
「神装備キタコレ!!」
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