BLOOD-CODE

さよなら古い現実、はじめまして新しい現実

Episode・１

　BLOOD－CODEの初販売から10年が経過し、本日５月17日に再び10万本が販売され、この10万人がキャラクターを作ってログインをすればプレイヤー数は100万人となる。

　ちなみに販売前日にはゲーム内にてプレイヤー全体に以下のような内容のメールが発送されている。

『本日もプレイしていただいている皆様、ゲームディレクターのゲノンです。おはようございます、こんにちわ、こんばんわ～。どうもどうも。

　記念すべきことに明日には記念すべき10周年となり、プレイヤー数も100万人となります！なんと素晴らしいことでしょう！毎年10万本完売していることで達成できる数字でございます！今でもアクティブ人数が夜になると9割を切らないということでまだまだ遊んでいただけているのがこちらも認識できてとてもうれしい限りでございます。

　さて、本題と行きますが、明日には追加で10万人の新規プレイヤーの方々が参入されますが、ゲーム内プレイヤーのキャラクター人数が累計100万人に到達した瞬間に、皆様にとあるアイテムをプレゼントし、イベントを開始させていただきます。

　今回のイベントは全プレイヤーを参加対象に設定しておりますので、新規プレイヤーも容赦なく巻き込ませていただきます。既存プレイヤーの方々はぜひともサポートしてあげてくださいませ～

　では、よいゲームライフを～』

　大体このゲームのプレイヤー向けのメールはこんな感じのテンションである。どう考えてもゲームディレクターから送られてくるメールとは思えない。

　何度かゲーム内イベントでもゲノンは顔を出しており、プレイヤーの何人かは仲良くしているらしい。

　ゲノン自身も人型ボスとしてイベントに乱入してくる場合もあり、ゲノン以外にも社員がエネミーとして現れる場合もある。なんならイベント外でもたまに乱入してくる。しかもめちゃくちゃ強い。ただ倒すと特別な報酬がもらえたり、熟練度がレベル関係なく、50ほど手に入るため古参プレイヤーからすればもはやレアエネミー扱いされている。

　毎年5月17日から一週間ほどはいろんな追加要素や、報酬がとても美味しいイベントが始まり、新規限定のレベルアップアイテムなどは存在しないが、初心者でも参加しやすく、強くなりやすいためこのゲームは過疎化がほとんどしない。

　さらに今年は10周年というキリのいい数字なのに追加して、いつもとは文面が少々異なり、『全プレイヤーを参加対象に設定しておりますので、新規プレイヤーも容赦なく巻き込ませていただきます。』という文面が存在することからいままで1度か2度しか開催されることがなかった『封鎖型』のイベントだと思われた。

　封鎖型というのはエリアが一定期間拠点エリアを含めたすべてのエリアが全く別の新しいエリアに固定され、弱いエネミーから現在の最強エネミーと同レベルのエネミーが同時に存在し、さらに鉱石や薬草なども一度取り切ってしまってもゲーム内で30分経過すれば復活し、採取スポットも非常に多い。そして最大の特徴として、ゲーム内時間が本来4倍なのが20倍にまで加速される。そのため、リアルでは忙しくて長時間ログインすることができないプレイヤーも長い時間遊ぶことが可能になる素晴らしいイベントなのだ。

　そんな予想をしながら翌日を今か今かと待ちわびていた。

　そして5月17日になり、配達される時間になった。

　再びゲノンから、100万人になるまでお待ちください、といった内容のゲーム内アナウンスがなされ、各拠点エリアの中心エリアにプレイヤーキャラメーターが設置された。

　翌日18日になり、しばらくした頃ついにメーターが100万を回り、実際のアクティブ人数も驚異の10割を達成した。

　その瞬間、全プレイヤーが体を上に引っ張られ、どこかに転移させられる感覚を覚えた。目の前が真っ白に染まり一時的に意識がなくなる。

　意識が戻り、目の前が見えるようになり、すべてのプレイヤーが目の前に見たのは先ほどと何も変わらない街並みであった。

　古参プレイヤーや既存プレイヤーは「なんだ、封鎖型じゃないのか」と少々落胆しながら、メニューを開いて今回のイベントの詳細を確認する。

　そして急いでログアウトボタンを確認しだした。

　何度押してもコマンドボタンは反応せず、現実に戻ることができなくなっている。

　とあるプレイヤーは、イベントが始まった瞬間に異常な空腹を覚えた。

　とあるプレイヤーは、イベントが始まった瞬間に急激な眠気を覚えた。

　とあるプレイヤーは、イベントが始まった瞬間に全身に身も狂わんばかりの痛みを覚えた。

　イベント詳細にはこう書かれていた。

【今回のイベントは特殊封鎖型、といってもこの形式のイベントは今後行いません。なぜならあなた方をこのイベントによってゲームの世界ではなく、ゲーム【BLOOD－CODE】の元となった世界に転移させていただいたからでございます。

　現状この世界から脱出する方法は存在しません。

※この世界で生活することにおいての注意点をご説明いたします

・この世界でゲージ類はHPゲージとMPゲージ以外は視認できなくなっております。

・空腹度は実際のあなたのアバターとリンクしており、食事をとらなければじきに飢餓により死亡いたします。

・HPゲージが全損すれば当然その場で死亡いたします。

・不摂生な生活を行えば体調不良になります。しかし、病気も状態異常として扱われますので治療魔法やアイテムにより治療が可能です。

・死亡した場合はゲーム時代のペナルティを伴い復活いたしますのでその点はご安心ください。

・料理の作り方はゲーム時代と変わらずにコマンドからの作成と実際の調理の二つが行えますがこの二つの方法で作成された料理にステータス上昇値など以外の味などに違いはございません。

・この世界ではプレイヤー間の生殖活動が種族関係なく可能です。

・この世界には海を渡った先にこの世界本来の住民と国が存在いたします。

・現実世界でのあなた方の存在はなかったことになっており、肉体もアバターと融合しております。

・上記の通り肉体が融合しているため、設定欄の『痛覚』を強制的に『ON』で固定させていただきます。

・ゲーム時代と同じく、首を切られる、心臓を損傷及び損失、肉体を消去する類の技能、魔法などの状況になりますと残り体力に関係なく死亡いたしますのでご注意ください。

・もし仮に現実に戻れた際にはこのイベント内での記憶を持ったまま現実世界に戻されることになります。現実世界では一切時間が経過せずに生活に一切影響がない状態で戻させていただきます。

・このイベントはジョークイベントなどではございません。

　これで最後となりますが、この世界では使命などは一切なくクリア条件なども存在しません。皆様は自分の意志で行動し、自分の意志で生活を送るのです。今からここはあなた方のリアルなのですから。

　ようこそ！異世界ゼノンへ！！

　ゲームディレクター兼ゼノンワルツ社長兼創造神　ゲノン】

　残りイベント時間　0:00:00