Prologue・4

ログアウトした赤月は、時計を確認して15分しか経過していないことを確認すると、椅子に腰かけ、先ほどまでの出来事を思い出していた。


〈そういえばログインして1分足らずでナノマシンさんがログインしてきたってことを考えるとほとんど同じタイミングでゲームを始めたのか?〉


一分以内にログインしてきたということは、誤差は約1.5秒。ほぼ同時である。もはや運命といっても過言ではないかもしれない。


現在時刻は午前10時35分。

今日は平日であるため、基本的に大学生、在宅業、ニート以外は仕事やら学業やらに勤しんでる最中である。

なお、赤月はというと、大学生で今日は講義がない。そのため、昼間っからログインが可能だったわけである。


首に装着している『ワルツリング』を外して回してみたり、いろんな角度から眺めてみる。

大きさはなぜか自分の首にピッタリと合う。首の太さに合わせて調整するようなパーツはなく、リング自体もプラスチックのような、金属のようなよくわからない材質でできている。

不思議だ、と思う前にサイズの謎は解けた。


〈そういえば当選した時に正確な体のデータも一緒に送った気がするな……たぶんそれかな〉


まさかの受注生産。どおりで転売が出来ないわけである。





そして20分が経過したため、リングを装着してベッドで横になる。目をつぶって暫く経てば、生体認証の画面が目の前に表示される。認証されれば、体が引っ張られるような感覚を覚えて、気づけばログアウトした広場にいた。


本日3度目のメッセージを開き、運営からの連絡を確認する。


【度々ご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ありません。

時間加速についての設定、およびこれから始めるプレイヤーの皆様に対してのチュートリアルAIの設定を最適化いたしました。

今後ともBLOOD-CODEの世界をお楽しみください】


「……」


赤月はやはり早すぎる運営の対応に言葉を失った。

だが、ここで思い至る。

ゲーム内で時間を加速できるなら実際にその技術を使って仮想空間で作業をすればどんなに時間をかけても問題ないではないかと。

40倍で加速をしていても自分の体にはなんら異常は発生しなかった。であればもし仮に常に60倍の時間加速をかけている場合、一日時間をかけていたとしても24分しか経過していないことになる。だったらほかのゲームでは半日かかるメンテナンスだったとしても20分以内に終わる。

やはりとてつもない技術だ。だがこのゲームの開発に関わっている社員はちゃんと休めているのだろうか?通常の勤務時間でも体感一週間連続勤務に相当するのではないだろうか?とんだブラック企業だ。実際はどうかわからないが。


「ナノマシンさんはまだ来てないのかな」


誰もいない静かな街をぼんやりと歩いているとふと2人ほどの男女プレイヤーが目に入った。

そのうちの一人がこちらを見ると大きな声で話しかけてきた。


「おーい!あんたもプレイヤーかい!?」

「おぉう、あんまり大きな声をださないでくださいよ」

「あ、すまん」

「今ログインしたんですか?」

「えぇ、メンテナンスが明けたらしいので」

「開始15分でメンテナンス始まったんですから驚きましたよ」

「あぁ、AIの設定と時間加速の調整しいですよ。俺らがいたときは40倍の時間が流れていたらしいですから」

「えぇ!?加速?しかも40倍って……」

「えぇ、だって10時間くらいこの中で走り回りましたから」

「ほえー、マジっすか。すげぇなこのゲーム」


約10分ほどBLOOD-CODEのシステム面について二人と会話しているとナノマシンが赤月の方へ向かってくる。


「あら、赤月さん。新しい方ですか?」

「えぇ、先ほどここで会いまして」

「そういえば名前を言ってなかったですね。アタシは夢桜ゆめざくら

「俺は桜霧オウム。鳥って言ったらぶっ飛ばす」

「了解した。もうタメ口でいいか?」

「そりゃ構わねぇよ。多分そっちのが話すの楽だろうしな」

「私もいいですよ」

「アタシも!」


その後一日中フィールドに出たり、アイテム収集を行ってアイテムの生成をしてみたり、4人でパーティを組んで行動をしていた。それでも現実では6時間ほどしか経っていないが

一日遊んでいるなかでかなりプレイヤー数はかなり増え、約6万ほどのプレイヤーが街に集まっていた。


すでに鍛冶や調合、料理をしているプレイヤーも多く、すでにアイテム市場はそこそこ潤っていた。

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