月ヶ瀬千紗の短編集

月ヶ瀬 千紗

机上

私は細いシャープペンの芯を目の前の真っ白なノートに滑らせた。初夏の少し蒸し暑い教室。冷たい冷房の風が頬を撫でる。先生は教室のホワイトボードにペンをスケートのように滑らせる。耳から入ってくる先生の少し低い淡々とした話口調の声をBGMにして、ノートに書き込まれていく様々なキャラクターの設定達。

前は向かない。ただ、先生の声とホワイトボードにペンのぶつかる音だけを聴きながら、少し指先に力を入れて滑らせていく。

私の手はノートの上で踊っていた。規則的なリズムは、ノートの上でキャラクター達が行進している様に聞こえる。私はそれが心地よくって更に書いた。

私には見えた。私の考えたキャラクター達がノートの上を歩く姿。たまに立ち止まって、たまに踊り出して。そしてまた行進を再開する。凱旋パレードの様な光景がノートの上で繰り広げられていた。


チャイムが鳴った。

凱旋パレードも、授業も終わりを告げたようだ。


私はまた、スマホを手に取った。

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