第36話⁂本妻光代の悪巧み!⁂



「あの椿辰也と名乗る男性は『最近巷を賑わせている〔オオカミ怪人〕を何としても捕まえて欲しい』と言って来たが、その後は携帯電話での対応だけで〔DREAMエンタープライズ〕というイベント会社経営の社長らしいが、その住所にいつ行っても『社長は只今来客中で手が離せません。又は外出中です』そんな事ってある?可笑しいと思わないか?それって………社長の顔を知られたくないって事じゃないか?それから…あの社長、顔を隠すようにしていたが……ひょっとして椿辰也が葵で傷を隠すためにあんなに髪の毛で顔を隠していたのじゃないか?・・・だから施設〔レインボ―🌈〕で何か、想像もつかない恐ろしい事を知ってしまったので15人が口封じに殺害された。その中に葵か辰也どっちかが居た。って事は辰也と葵どちらかが死んでるって事?」


「もう訳が分らない?直樹まず最初から話を辿って行く必要があると思わない?」


「俺もそう思うよ!あの六月某日東京都内の超豪華ホテル、〔スカイブルーホテル〕で仮面に素顔を隠した状態で交流を楽しむという、何とも非日常的な仮面舞踏会『マスカレード』が開催されたが、あのベンチャー企業BEST〔アプリケーションの企画・開発・運営〕を展開するする若き起業家“田所社長の目的はなんだ?あの社長が騒ぎ立てたので〔オオカミ怪人〕が、益々脚光を浴びる羽目になったが、もしとっくに葵が亡くなって居たらそんな〔オオカミ怪人〕なんか存在しない話だ………そして…障害者の男性ばかりを集めた仮面舞踏会………ましてや障害児施設〔レインボ―🌈〕のあの恐ろしい事件の渦中にいた、あの当時をよく知る男性ばかりが招待されているってどういう事?……そして…あの日招待された、消えた女性達は施設での一連の事件に何か関係が有るのでは?」

 

「だから……あの日、煌びやかな宝石や衣装に身を纏った美しい女性が、仮面を付けてホテルの豪華な大理石のらせん階段を、軽やかにワルツを踊りながら舞い降りて来た女性がキーポイント。何故1人だけ時間通りに現れなかったのか?一見あの仮面舞踏会に花を添えたように映るけれど、あれは何かの理由があり紛れ込んで来たが、あれだったら男達を惑わすことが出来て見惚れてしまい、もうデレデレで警戒心もなくなりやりたい放題じゃないの?本当にあの女性が何者なのかなのよね?」



「本当にそうだよな。あの日豪華なパ-ティ―会場に突如としてアナウンスが流れた。『パーティーをお楽しみの皆様、実は…参加者に紛れ込んでいると思われる“〔オオカミ怪人〕がいるそうです。もし、 一番最初に見つけ出して下さった方には、豪華なダイヤモンドをプレゼントさせて頂きます!』そうアナウンスしたって事は、あの煌びやかな宝石や衣装に身を纏った美しい女性が、もしかしてとんでもない犯罪に関わっているのかも知れない?」


「それからあの田所社長は障害児施設〔レインボ―🌈〕の知的障害児田村洋介と友達だって事は、障害児施設〔レインボ―🌈〕と何か、関わりが有るのでは?」


「だけど30年ほど前の葵が交通事故に遭った事件は、どうも柳田組傘下の組員の犯行らしい。あの時は交通事故で処分されたけど………施設〔レインボー🌈〕で『葵があんな目に合ったのはここの組員のせいだ!』と食い下がる男の子が居たらしい?どうもそれが辰也ではないかと言われている………それでも…どこから漏れたのか?だから……辰也と夏美の母光代が、夫浩二に愛人と子供がいる事を知ってしまい、嫉妬に狂った挙句、自分で殺したいほど憎んでいるが、殺せないので『葵を殺害して欲しい』と殺し屋に頼んだ。それが何とも運の悪い事に柳田組だったって事?」


「そんな短絡的な?賢いお母様が……まさか?」


「お嬢様だから分からなくて頼んでしまったのだろう?」


【近年ではあまり聞かれなくなった職業ではあるが、昭和の末期1989年頃までは「殺し屋」はアウトローの世界ではまだまだ現役であり、世間を賑わせていた。葵が事故に巻き込まれたのは1980年代中盤の事なので「殺し屋」は普通に実在していた】


 本妻の光代は社長のたった一人の愛娘、その為何か有ってはと、社長である父親が愛娘光代に付き人を付けていた。

 そこで愛する夫の不審な行動を不審に思い、付き人に実態を探らせていた。

 すると、愛人の実態が分かって来た。


 そこで嫉妬に狂った光代が、付き人に相談した。

 すると、付き人は辰也と葵のあまりの出来の違いに危機感を募らせる

「葵君は天才で危険です」と光代に助言をした。


 当然本妻光代にも夏美と辰也が居るから、ジタバタする必要は無いのだが、30年も前の事、幾ら夏美は優秀だからと言っても、まだまだあの頃は男尊女卑の時代。

ましてや辰也は多動症で話にならない。


{社長の父が死んでしまえば、例え本家の長男辰也であっても、あの仕事の出来る副社長浩二が、役に立たない辰也を社長に据える筈がない。バカにしないでよ!直系の私達が脇に追いやられて、たかが愛人の分際で何もかも奪おうなんて許せない!}


 将来を不安視した付き人の提案で早速2人は相談した。

 普通であれば愛人を追い出せば済む筈だが、子供まで授かってしまっている現状化、更には夫の浩二は今となっては、父の社長より権力のある存在。

 この会社がここまで成長できたのは誰有ろう、一にも二にも副社長浩二の尽力の賜物。


「私を裏切ったあなたなんか離婚よ」


 そう強く出て追い出したいのは山々ではあるが、なんといっても副社長を心から愛しているし、それ以上にそんな事をしたら会社が傾いてしまう。

 こうして後腐れの無い「殺し屋」に頼む事に行き付いた。


 頭は良いが世間知らずの付き人と、世間の事など何も分からないお嬢様育ちの2人が導き出した結論だった。


 こうして事態は更に悪化の一途を・・・




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