第29話⁂障害児・者施設〔レインボ―🌈〕⁂



 毛むくじゃらの先天性多毛症の葵と椿辰也が、同一人物と言われているが、じゃ~何故?自分が多毛症の張本人なのに、多毛症を探して欲しいと言って、あの日依頼に現れたのか?

 全く理解に苦しむ。 


 そうあの日である。

 二〇一五年四月某日のある日、東京都台東区浅草に有る、この〔OUGI探偵事務所〕にやって来た若いカップルである。


「最近巷で評判の〔オオカミ怪人〕を探して欲しい!」


 何か?見るからに不釣り合いのカップルで、よくよく聞くと夫婦だと言うが実態は分かったものではない。


 この椿辰也と名乗る男性は〔DREAMエンタープライズ〕というイベント会社経営の社長らしいが実態は定かではない。


 何とも怪しげな風貌の目深に中折れハットのホンブルグを被り、更にはサングラスの為、ハッキリとした年齢や顔形は確認できなかった。

 

 何故そこまで顔を隠す必要が有ったのか?


 だが、〔OUGI探偵事務所〕の経営者美咲と直樹は〔オオカミ怪人〕葵と椿辰也は同一人物であると確証している。

 それは直樹の調べで分かって来る。



 それはどういう事かと言うと、直樹が発達障害である事から、この障害児施設〔レインボ―🌈〕に入所している知り合いがいるのだ。

 〔レインボ―🌈〕の日報を、知り合いの母親が、後生大事に持っているようで、色々なスナップをキチンとファイルに収めておいたのだ。


 直樹はこの〔オオカミ怪人〕の一連の騒動は、障害児施設〔レインボ―🌈〕が何か関連しているに違いない。

 そうピーンとひらめいた直樹は、早速その母親の元に向かいファイルを見せてもらった。

 スナップをめくっていると葵らしき人物に目が行った。


「ああああ!この毛むくじゃらな男性は葵君ですね?」


「いえいえ違います。聴覚障害のお友達に寄り添っているのは椿辰也です」


 こうして、葵の実家に伺った時に写真を見て、風貌を知っていた直樹は、2人は同一人物だと確信した。




 一方の妻で麗奈と名乗る女性は、ス-パ-モデルのような高身長に加えて、小顔の八頭身美女で、こんな〔OUGI探偵事務所〕のある下町情緒溢れる街並みには、到底ふさわしくない、それこそ有名雑誌から飛び出して来たような美女である。


 この美女は20年前の障害者交流会に、知的障害児の弟の付き添いで母親と一緒に来ていた性同一障害の本当の性別は男性なのだ。


 夫婦と言っても同性愛者の『カップル』なのかもしれない。

 男同士で現れたら、偏見の眼差しで見られるのから、変装していたのかも知れない?

 それか……何か?どうしても夫婦を装う必要性が有ったのかも知れない?

 それから…あの葵の性別がはっきりしていないが、葵は女かも知れない?


 {益々分らなくなって来た?}


 真夜中に響き渡る美しいバイオリンの音色を奏でる〔オオカミ怪人〕は、親の仕送りで文京区近辺のアパートで独り暮らしを始めたらしいのだが———


 だが〔オオカミ怪人〕と言われている葵であり椿辰也は、現在は〔DREAMエンタープライズ〕というイベント会社経営の社長になっている。


 全く繋がらないだろう。

 親の仕送りで文京区近辺のアパートで独り暮らしを始めたばかりのフリ-タ-が何故社長になれたのか?

一体どういう事?


 医者になりたかった葵が何故?

 高名な医者の実態は?


 だが、高名な医師は、葵であり椿辰也という事も十分に考えられる。

 それは…何故かと言うと・・・葵も医師を目指していたからだ。

 それから…特徴が余りにも酷似しているからなのも有る。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 柳田組長は、あれだけ優秀で火の打ちどころのないイケメンの翔が、あのような醜い姿になってしまい不憫で不憫で、出来るものなら自分が翔の身代わりになりたいとまで思うようになっている。


 それは姐さんとて同じ思い。

 やっと自分の命よりも大切と思える、可愛いくて甘え上手な我が子翔が出来たと思って喜んでいたのも束の間、こんな恐ろしい事が起こって、あの涼子を殺しても未だに怒りが収まらない。


 日本でも指折りの指定暴力団柳田組なのだが、闇金などで稼いだ財産を海外の銀行に、それこそ破格の預貯金を有している。

 そこでその預金の一部で、この可哀想な息子の為に何か出来る事は無いか、必死に模索している。


 そこで考えられたのが、障害児・者施設を自分達で経営する事。

 現在、全国に1000万人の障がいを抱えている人達がいて、入居できる物件が全く足りていない状況化、可愛い息子の為にもこの事業に参入しようと決めた。


 だから……若い愛人に、せっつかれても有るのだが、あの硫酸事件で余りにも悲惨な翔の顔を見るや否や、組長と姐さんは寝る間も惜しんで{どうしたら良いものか?}

考えあぐねていた。

 こうして諸々の事件の連鎖が起きて行く。




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