第28話⁂死刑執行!⁂



 この施設〔レインボ―🌈〕は肢体不自由・精神障害・心身障害児・者の為の病院・福祉施設施になって居る医療療育センタ―がある。


 翔は硫酸を掛けられた後、高度で専門的知識を有する大学病院で、専門的な治療を受けたのだが、直ぐには成果に繋がらず、また精神的にも追い詰められているので異常行動が度々目撃されるようになった。



 それはそうだろう。

 あれだけ美男子だったのに、今は打って変わってまるで、化け物のようになってしまったのだから………。


 その為、精神のバランスを崩して暴れ回っている。


「ああああ————っ!何で?何で?俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ。ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭コッこんな醜い顔の化け物になってしまって!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


 周りにある物、机や椅子を刃物で刺して行く。

 戸棚の物を手当たり次第に出して、メチャクチャにばらまく。

 生まれたばかりの坊やに、唾を吐く。


 狂ったように突如として笑い出す。

 完全に情緒不安定で目付きも異常。


 こんな状態なので、これでは折角誕生した赤ちゃんに危害が及ぶ。

 こうして、姐さんの必死の説得で治療の為に医療療育センタ―で、治療を受ける事になった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 余りの不気味な行動に『生まれて来た新しい命に何か有っては遅い』

 あんなに姐さんの言いなりになっている若い愛人が、危機感を募らせ、姐さんに食い下がり、居ても立っても居られなくなった姐さんも等々決意をする。


『跡継ぎに何か有っては遅い』


 こうして強引に入所させられたと言った方が正解なのだが、焼けただれた醜い顔の治療と更には、精神的打撃も大きいので精神疾患の治療も受けている。


 またこの雄大な敷地の隣り棟には、治療は定期的に行うが、肢体不自由・精神障害・心身障害児・者の社会復帰を目的とする入所施設が有る。


 そこには、例の面々で発達障害で色盲のミュ-ジシャンの矢口謙太や、知的障害の画家、田村洋介などが入所していた。


  医療療育センターでは、散々気味悪がられ、悪態をつかれていた翔なのだが、治療もひと段落付いた翔は、やがて隣り棟の障害児施設に移動するのだが、最初の頃は余りの醜さに虐めの標的になり、ある晩余りの辛さにとうとう逃げ出した。


 こうして自分の境遇の余りの悲惨さに、たまりかね、世間を恨み、姉妹を相次いで強姦して殺害した。


 


 ◆◇◆◇

 翔が医療療育センタ―に入所して半年後に、模範生だった琢磨が少年院を出所した事を知った姐さん。


 美味しい思いを散々させて、手懐けて飼いならしてある柳田組の飼い犬、国家公務員の藤田保護観察官から唯一の跡継ぎが『一卵性双生児の双子の琢磨が、少年院を出所した』と聞いた姐さんは考えた。


 {翔の最近の行動は目に余るものが有る。あの時は翔可愛さにどんな事をしても翔を守り通そうと、琢磨に母殺しの身代わりになって貰ったが、あんな翔では跡継ぎには出来ない。あんな酷い悍ましい母殺しが出来るなんて、異常人格者としか思えない。放って置けば何を仕出かすか分かったものではない。あんな息子を跡継ぎになんか到底できない}



 一方の琢磨は、藤田保護観察官から嫌と言う程、犯罪者として生きる事の大変さを叩きこまれ、養子縁組をして名前や住所を変更して、新たに生まれ変わる方がいいと指摘を受けている。


 こうして養子縁組をして名前や住所を変更して、新たに生まれ変わるという手段を選択した。


 言われてみれば至極当然な事。

 こうして天涯孤独になってしまった寺内琢磨は、養子縁組をして生まれ変わる事になった。


 {普通の子供でも養子縁組に縁遠い子供が多いというのに、おいそれとそんなに美味しい話が転がっている筈が無いのだが?}


 こうして某日、藤田保護観察官からの養子縁組の話が届いた。


「君を是非とも養子にしたいと言っている夫婦がいるんだ。一度会ってみるかい!」


{また何で、もう十七歳にもなる子供を養子に欲しいってどんな人なんだよ。ましてや少年院上がりの俺を?}


 そう思った琢磨だったが………。


 こうして姐さんの目論見で、柳田組組長夫婦と親子の契りを結んだ琢磨だったが、翔と一卵性双生児なので親権が父親に戻っただけの事だ。


 琢磨は本当の父親だとは知らないので、最初の内は戸惑っていたのだが、実の父親である事が分かり束の間の幸福感に酔いしれている。


 {今までの俺は不幸続きだったが………これでやっと幸せになれる………そんな気がする}


 では一体何故、今更探し当ててまで、琢磨をこの柳田組組長の息子として取り立てる必要が有ったのか?

 


 それは、姐さんに付いて回っていた若い愛人の子供が、誕生して喜んでいたのも束の間、運が悪い事にインフルエンザで命を落としてしまった。


 そこに来て、組長も膀胱がんの手術でお医者様から「もう子供は望めないでしょう」

 そう言われて危機感を募らせていた。


 居ても立っても居られない姐さんは、一卵性双生児の琢磨を必死に探し当てて次期柳田組組長の後継者として育てようと決意する。


 要は、あの硫酸事件以来、人が変わって恐ろしい殺人鬼と化した翔を、止める手立てが見つからない状況下、やっとの事施設に預ける事が出来たので、急遽跡継ぎの琢磨を探し当てたという事だ。


 こうして束の間の休息を得る事が出来た姐さんだったが、2015年6月某日から遡る事1週間前相次いで姉妹を強姦して殺害した、あんなに可愛がっていた翔の恐ろしい犯罪に完全にキレた姐さんは、匿名で警察に「犯人は柳田翔という顔の焼けただれた27歳の男だ」と通報した。


 何という恐ろしい事を————

 あれほど可愛がっていた翔を警察に売るなんて。まるで死ねと言っているようなもの。

 こうして琢磨ではなく翔が死刑執行となった。


 状況証拠、女性の身体に付着した体液などから翔のDNAと一致。

 更には、匿名の通報により母親殺害犯も翔である事が判明、最高裁判決を受けて僅か6年で死刑執行された。

それは、姐さんが跡継ぎの琢磨を組長として育てる為には、前科はマイナスと思い下した結果なのだ。

 

そして可哀想な事に、殺害方法が極めて悪質で残酷という事で、情状酌量の余地なしとの裁判官の判決で執行が早まった。

なんとも痛ましい最期に言葉もない。













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