第15話⁂〔オオカミ怪人〕⁂
{では〔オオカミ怪人〕の事を詳しく紹介して行きましょう}
調べていく内に、色々分かって来たのだが、早速その〔オオカミ怪人〕に関する情報なのだが……どうも、高名な医師がレーザ—治療を施したが、敏感な顔だけは大変な事にポンポンに腫れ上がってしまった。
葵は、病院でレーザーによる発毛組織を破壊する治療法を行ったが、手術が長時間にわたる上に、治療を継続しなくてはいけないらしい。
皮膚が腫れ上がり、かなりの痛みも伴うので、対策もとうとう見つからず、治療を断念した。
また通常よりも長い入院生活になったのには訳が有る。
高名な医師にしても、今までに見た事もない余りにも尋常じゃない生え方に、ビックリした。
色んな事案を見ている高名な医師までもがビックリするほどなのだから、普通の人間は、ビックリし過ぎて心臓が止まるかと思う程の尋常じゃない毛の生え具合。
「可哀想に葵を何とかしてやりたい」
そう思い真剣に取り組む為にも時間が必要だったのだが、葵は逃げ出した。
見掛けた人達も最初は、何か被り物でも被っているのかと思ったが、黒々とした毛がニョッキリ生え、ギョロッと目ん玉が動いた時は震えが止まらなかったそうだ。
狼のように体中に毛が生えた、先天性多毛症、又は、狼男症候群の人間が、深夜に逃げ出して、それを目撃した人々によっての通報だったと言うのだが、その高名な医師と…あの椿夫婦は、どうも親戚関係にあり、同じ敷地内で共同生活を送っていた過去が判明した。
一体どういう事なのか?
益々分らなくなって来た。
◆◇◆◇◆
それでは幼少期の〔オオカミ怪人〕葵はどんな子供だったのか?
〔オオカミ怪人〕は、どうも奥多摩駅近くの西多摩町で誕生したらしいのだが、徐々にふさふさ毛が生え始めて小学校では「多毛症」のせいで酷い虐めに遭っていたそうだ。
それでは目撃された〔オオカミ怪人〕は一体どのような状態だったのかというと………。
身体と顔には、異常なほど多くの体毛が生えている。それはまるで犬の黒いヨークシャテリアのようだ。
病名は先天性多毛症で子供時代から散々虐めに遭っていた。
葵が電車に乗ると人々は葵を凝視し、皆ひそひそ話。
「な~にあの子?どう見ても、ヨークシャテリアか、狼、イヤイヤ見方によってはライオンにしか見えないんだけど?気持ちわる~い」
「本当!本当!怖~い?」
「キャ-ッ!傍に来ないで!」
残酷なヤジを飛ばし、どれだけへこんだ事か?
先天性多毛症、又、狼男症候群とも呼ばれるこの病気は、現在まで世界で正式には50例ほどしか確認されていない。
その症状は、通常成長しない体の場所で体毛が過剰に成長する事が大きな特徴である。 先天性全身性多毛症では、耳の中にも多く毛が生えているので聴力が落ちたり、感染症を起こす事もある。
美容医学の発展により脱毛技術の発展は目覚ましいものが有るが、レーザーは毛が生えてこなくなるまで、繰り返し何度も施術を受けなければならず、また痛みが激しく水膨れになる場合も多く、顔に毛が生えている先天性多毛症の患者には向かないらしい。
治療のためにわずか2歳で病院で4時間にも及ぶ手術を行ったが、それでも症状は治らず数日後にはまた毛が生えてきた。
両親は世間体を気にする余りに、このような毛むくじゃらの状態なので、恥ずかしいと思い、葵が生まれた直後から家の奥に隠して施錠を掛けていた。
全く酷い話!自分達があんな身体に産んだのに、それも忘れてなんて事を!
こんな酷い状態なので、両親は家に隠しておきたいのだが、学校に行くと言って聞かないので通わせる事にした。
小学校に入学と同時にクマや狼とからかわれ、しょっちゅう虐められ泣いて帰っていた。
両親は葵を不憫に思うのと同時に、益々世間体を気にして、またもや葵を家に隠し今度こそ出て行けないように頑丈に施錠した。
だが、葵はそんな事くらい何とも思わない気丈な子供で、2階の窓を強引にこじ開け自ら学校に通学して、自分をからかった連中に飛び掛かり羽交い絞めにして、反対に泣かせた。
更には上級生からも散々、クマ、化け物、狼、ライオンと悪態を付かれ、とうとう我慢が出来なくて、大きな上級生にチビ熊の様な葵が勇気を出して飛びかかっていった。
こんな事があり、この勇気に感服した生徒たちも、もう一切虐めなくなり、すっかり皆と打ち解け合うことが出来きて学校に元気に通った葵。
そのせいもあり成績優秀でスポ-ツ万能な非常に元気な子供に成長した。
そして…なんと、自身の身体のせいで、こんな辛い思いをしたので葵の将来の夢はお医者様。
こうして病気に負けずに将来の夢を目指す葵。
それなのにどこで歯車が狂い始めたのか………。
こんな見栄っ張りの母親の言う事など当てにならない。
行方知れずの葵は今どこに?
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