第23話 ちょっと寄り道
普段拠点にしている街から離れているだけあって依頼の傾向も若干異なっていた。どちらかと言えば魔物討伐の依頼の方が多い。もしかしたら魔物を狩る冒険者が足りてないのだろうか?
「すみません。この辺りのことをあまり知らないのですが魔物討伐の依頼がやけに多い気がするのですが何か原因でもあるのでしょうか?」
「あぁ、そのことか。この街は隣国に接している関係でね緊張が高まると傭兵として沢山そっちの方に行ってしまうんだよ。なにせ魔物退治よりも報酬がいいからな。それに実際に戦闘になることはあまりないからな」
なるほど、と酒場にいたおじさんの話を聞いて納得する。そういえばこの街は国境から一番近い街でもあった。
「なるほどねぇ、じゃあ今溜まっている依頼まとめてやれば結構稼げるか?」
「お前ら3人じゃあやれる量なんてたかが知れてるぞ。この街としては魔物を狩ってくれるなら嬉しいから止めねぇけどよ」
「ありがとう。これはお礼だ」
教えてくれたおじさんに対し情報量として少しのお金を渡す。受け取ったおじさんはとても機嫌良さそうに俺達を見送ってくれた。
「さて、ちょっとだけ稼いでから戻りますか」
アヤと今回はミサキも少しはやる気のようだ。戦闘をしないって言っているのに珍しい。
「リーダー、貴方達2人で魔物を狩っている間私は別行動でもいいかしら?」
「それは構わないが・・・一応何をするのかは言ってくれないとこちらとしても困るな」
「今回の依頼で貰ったアダマンタイトを精錬してみたいの。時間がかかるからこういう時にいいかなーって」
「ミサキにとってもいい経験になりそうだな。よし、やってみてくれ。職人に頼んでもいいけどそれはそれでどこで手に入れたとかの説明が面倒だからな」
「そこの宿3人分取っておくからあとは2人で楽しんできてね」
「おいおい・・・行っちゃったな、さぁいい機会だ。狩れるだけ狩っていっぱい稼ごう」
「待ってました。やっと私の出番ってことね」
「そんな強い魔物は出ないと思うぞ」
その後俺達はこの街に溜まっていた魔物退治の依頼を見る見るうちに片付けていく。そして3日もすると最初の時の3割程度まで減っていた。
「すまない。これくらいで許してくれないか。あんたたちには感謝しているがそろそろ戦場に出ていた傭兵が戻り始める。そいつらの仕事が無くなるとそれはそれで困る」
この街の偉そうな人に謝られる。突然のことに俺は驚いた。
「そうか、すまない。少しやり過ぎたかもしれないな。これ以上は狩らないから安心してくれ。十分に稼がせてもらったしこちらとしても事を荒立てるつもりはない」
「ありがとうございます・・・それにしてもたった2人でこのペースで狩り続けるなんて本当に組んだばかりのパーティーなんですかね?ちょっと疑いたくなりますよ」
「ははは、まぁ色々あったんです。その辺はあまり詮索しないでいただけると助かります」
「私としても貴方のような方を敵に回すのは本意ではないのでご安心を。魔物の討伐も報告通りで嘘はないので信頼していますよ」
そして俺達の魔物退治は急に終わりを迎えた。心なしかこの街では俺達のパーティー名は有名になったようだ。遠くから来た凄腕の2人組という少しずれた噂だが・・・
ともかく、急に魔物退治ができなくなってしまった俺達は宿へと戻る。中ではミサキが精錬に集中していた。気を散らしてはいけないので彼女の集中が切れるまで俺達は待った。
「ふぅ、今日はこんなところかしら」
「結構頑張ってたな。どれ、大分進んだようだな・・・」
「わっ、びっくりした。戻ってきてるなら言いなさいよ」
「一応音を立てて部屋に入ったんだがな」
「聞こえなければ音を出してないのと一緒です・・・どうやっても聞こえなかっただろうから私が作業中に戻ってきたのが悪いわ」
「えぇ・・・まぁいい。入ってきたのが俺達だからよかったけどそうじゃないことだってあるかもしれない。集中するのもいいがあまり長時間しすぎるのは注意な」
「はぁーい、これからは気を付けます。ところで、結構お早いお戻りだけどなにかありました?」
俺はもうこの街で魔物退治の依頼を受けれなくなった旨を話した。
「なるほどね、じゃあもうこの街には用はないわよね?すぐにでも戻るの?」
「そうだな、そうしようかと思う。でも今日の馬車はもう出てしまったからな。出発は明日だ。急で悪いが不足している備品を出発までに揃えて欲しい」
「はいはい、またやっておきますよ。今回は確認する時間ないかもしれないけど勘弁してね。どうせ街道沿いしか通らないんだから最悪足りなくてもいいでしょ」
そういうとそそくさと買い出しに出ていった。物資の確認もしなかったということは既に買うもののリストは彼女の頭の中にあるのだろうか?
(なんというか、俺がしっかりやることの指示をしないと動いてくれないんだな。きちんとした指示さえすれば普通の人以上の動きをするんだろうけど)
部屋に置かれた精錬中のアダマンタイトの塊を見つめながらミサキに対してどう接していくのか考え直すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます