自分にメリットのない外れスキルを持つ俺、才能がないと言われパーティーを追放された少女と出会った結果最強が誕生してしまいました
takaoka
第1話 才能の世界
生まれ持った才能ですべてが決まってしまう。そんな世界に生まれた少年、コウキは幸運にも人並み以上の才能を持って産まれた。
普通の人の才能値は100前後とされている。それに対しコウキの才能値は173だった。そのため、彼は何不自由ない生活を送ることができていた。同時に才能の無い者に対し、蔑むことはしなかったもののあまり積極的にかかわることは避けてきた。
そして、15歳にもなると冒険者として生計を立てることを決意する。コウキ程の才能値があれば将来的には凄腕の冒険者になれることは確実なのでパーティー選びに困ることはなかった。
現時点ではコウキより強い冒険者は沢山いるがコウキを指名する人が多いのは才能値によるものである。というのもこの世界で人の強さは努力量と才能値を掛けたもので決まる。加齢による減少もあるが概ねこの認識でいい。
つまり、才能値が人の2倍ある人に追いつこうとすれば2倍の努力をしなければいけない。実際には2倍の値を持っている人なんてほとんどいなく、大体の人は80から120の間である。コウキの173という値は破格ともいえる値なので注目されるのも仕方ないのである。
そして、この世界にはもう一つ、スキルというものもある。ほとんどの人は持っていないが20人に1人くらいの割合で何らかのスキルを持っているとされている。とは言ってもこのスキル、おまけに近い要素なのでほとんどの場合才能値だけしか見られることはない。
そんな世界で冒険者としての活動を始めたコウキ、彼を待つ数奇な運命をこれから記す。
魔物討伐の依頼を終え、コウキは冒険者仲間と依頼達成の祝いとして居酒屋へと来ていた。
「コウキ、今日はお前のおかげで随分と楽に魔物を狩ることができた。お前が入ってからこのパーティーは順調そのものだ。この調子でどんどん依頼を受けていくから覚悟しろよ」
俺の所属するパーティーのリーダーであるジョンが俺を軽く小突く。いつものやり取りだ。俺にかなり期待してくれているようでとても嬉しい。
色々なパーティーに誘われた俺だが、焦らずにじっくり育ててくれることを約束してくれたことが決め手となり俺はこのパーティーを選んだ。
「本当にこのパーティーにはお世話になりっぱなしです。もっと強くなって今日みたいに役に立ちたいです」
「一丁前に言うようになったじゃねぇか。期待してるぜ。未来のエースさんよ」
副リーダーのベーブも今日はいつにもまして機嫌がいい。俺の成長が感じれたからだろうか。このパーティーに属して早3年、最初は苦労も多かったが持ち前の前向きさと才能のおかげでここまで順調に冒険者として成長することができ、ようやく冒険者として活躍できるようになってきた。
「才能もあるが君の前向きな性格もあってこその成長だ。驕ることなくこれからも精進だよ」
ジョンにはこのように何度も言われている。この世界では生まれ持った才能に胡坐をかいてしまい、堕落してしまう人も一定数いる。特に高い才能を持っている人に多いらしいので俺のことを常に心配してくれている。過保護かもしれないが環境が少し違えば俺はそうなってたかもしれない。
「はい、これからも頑張ります。才能に溺れてしまった人は何人も見てきました。ああはなりたくないなと心から思ってます」
「まぁコウキなら大丈夫だと思うがな。それよりもあそこの連中、見てみろ。才能が無いなりに頑張っている奴もいるんだ。あっちで腐っている奴の才能を分けてあげたいね」
才能値が高い人がいれば当然低い人もいる。低い人はその分努力をしなければ追いつくことはできない。だが時間には限界があるため、どうしても追いつけないこともある。そんな人達はレベルの高いパーティーへは入れずに低い者同士で集まることが多い。
「仕方のないことなんでしょうけど生まれ持った才能って残酷ですよね。俺は恵まれた方ですけど今の状況はなんとかしたいとは思ってはいます。現状では何もできてないですけどね」
「それは多くの人が思っていることだが、この世界のルールでもある。何か常識を覆すような発見でもない限り諦めたほうがいいよ」
そうなのだ。この世界は才能が全て・・・今のところそれを覆すようなものはない。
「そういえばお前の持ってるスキル、才能固定だっけ?あれをあそこにいるような奴らに使ったらどうなるんだ?」
俺のスキルは才能固定、本人の才能値に関係なく才能値80に変えてしまうスキルだ。
「小さいころ試してみたんだけどスキル使ってもあんまり効果なかったように見えた。おそらくこれからの努力に対して効果が発揮されるんじゃないかな?だから今あそこにいる人達に使っても根本的な解決にはならない。それに対象は一人だけだ。一人だけ救われたらそれはそれで別の問題が発生する」
「そうか・・・まぁそう上手くいかねぇよな。仮に一人救ったとしても俺達のパーティーではついていけないだろう、うーん、この話はなかったことにしよう。ささっ、まだまだ飲むぞ~」
何か引っかかるものはあったがどの道俺がどうこうできるものではなかった。気持ちを気を切り替えて仲間達との飲み会を楽しむことに集中した。
今日の飲み会はやけに長かった。ベーブは調子に乗って飲み過ぎて倒れるわジョンは態度の悪い依頼主の愚痴を言うわで大変だった。そして日も変わろうかという頃、ようやく飲み会は終わる。さすがに二次会という雰囲気ではなかったのでここで解散となる。
ジョンとベーブは相当に酔ってたみたいなのでそれ程酔ってない2人のメンバーが介抱して宿まで送っていった。1人残された俺は夜風に当たりたい思いもあったのでゆっくりと歩いていた。
なんだか普段とは違う道を通ってみたくなったのでいつもとは違う道を進んでいく俺。普段すぐ横を通っているはずなのに見たことのない建物ばかりなのは不思議な感じである。
新鮮な気分で歩いていたが、そんな気分を壊す騒がしい声がこの先から聞こえてくる。
(こんな時間に騒ぐなんて酔っ払いの喧嘩か?)
泥酔した冒険者だったら相手にはしたくない。相手の腕っぷしが強いと最悪こちらが怪我することもあるからだ。だが、呂律の回っていない声は聞こえてこないので違ったようだ。そして恐る恐る声の方へと近づいていった。
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