七聖獣連合国の物語

高町桐加

七聖獣連合国の誕生

 この大陸は昔から、豊かな資源と広大な土地に恵まれた素晴らしいところでした。人々はまばらで少なく、各地に小さく集まって生活していました。衰退することも発展することもない穏やかな暮らしがそこにありました。

 そんなささやかな喜びに満ちたこの地を天上の神が見初められたのは当然のことだったのでしょう。神は私たちの祖先がより豊かに暮らすことができ、日々の心の拠り所を得られるように、神の分身である聖獣たちを遣わしました。


 まずこの地に降り立ったのは、黄金に輝く毛並みを持つ獅子です。金獅子きんじしは大陸の中央に構えると、ぐるりと全体を見渡して満足げに頷きました。金獅子きんじしが決めたこの地が中心となり、人間が神を一番近く感じられる場所になるでしょう。


 次にやって来たのは闇夜に浮かぶ満月のような瞳を持つ狼です。黒狼こくろうは北西の森林地帯を気に入りました。黒狼こくろうが森の守護者となり、家畜を襲う獣たちに目を光らせてくれるでしょう。


 三番目に来たのは滑らかに煌めくうろこの蛇です。白蛇はくじゃが大陸中を移動した跡は大小さまざまな河川となり、人々はそれを運送や漁業に役立てました。白蛇はくじゃは北東部に落ち着き、山と町の間を見守ることにしました。


 四番目に来たのは紫の毛並みと無垢な眼差しの猿です。賑やかなことが好きな紫猿しえんは中央に近い南東の地で、人々に祭りの楽しさを教えました。紫猿しえんのはたらきによって人々の生活に彩りが加えられ、音楽や詩作などの芸術も発展していきました。


 五番目に来たのは燃えるようなたてがみの馬です。赤馬せきばは平原を駆け回り、離れた場所に住む人々を繋いで新たな出会いをもたらしました。白蛇はくじゃとは反対の南西部で、人や物の移動を見守りました。


 六番目に来たのは大らかな心を持つ緑色の獏です。緑獏りょくばくは北部の山脈から大陸を見下ろし、人々の橋渡し役となることにしました。緑獏りょくばくの前では、争う人もみな平等です。


 最後に姿を現したのは、海や空よりも鮮やかな色をしたカモメです。瑠璃鴎るりおうは大陸の南に広がる海の上を飛び回り、島に暮らす人と大陸本土を繋ぐ伝達役となりました。外海から他の人間がやって来たら、瑠璃鴎るりおうが彼らをもてなしてくれるでしょう。


 聖獣たちがそれぞれの居場所を決めると、神はそれらを領地と呼び、領地ごとに一番人望と才能のある人間を領主として任命しました。人間は神の声を直接聞くことが出来ないので、聖獣を通して神と交流します。人々の思いを纏めて聖獣に伝えるのが領主というわけです。

 こうして、私たちが暮らす七聖獣連合国が形づくられていきました。私たちが幸せに生活していれば、神は喜ばれてより多くの幸せを与えてくれます。今私たちが不自由の少ない生活を送れているのは、ご先祖様が神や聖獣と深く関わり、子へ孫へと受け継いでこられたからなのです。

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