第6話

翌朝、母の目蓋を開けて見ると、瞳が混濁していた。死亡判定の瞳孔反射がしなくなった後に起きる現象。母はもう助からない。母を一人で死なせない為に一緒にいたから、私も死ななければと思い、死ぬことにした。先ず試したのは感電死。充電コードを切断して中の金属の線を剥き出しにして、母の横に寝て母の手を握り、剥き出しの金属線を口にくわえてコンセントに差し込んだが、何も起こらなかった。次に試したのは投薬。多量に飲んだら死ぬかも知れない薬を全て飲んだが、死ななかった。手首の動脈を探してカッターナイフで切り込んだが、ためらい傷が増えるだけでまるで血液が出て来ない。一酸化炭素中毒も試した。台所のガスコンロを換気扇をつけずに、全開で点火した。ベルトで首を締め付けた。結局何をしても死ねなかった。

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