第2話

 母が実際いつ死亡したか分からない。私を守る為に母は生きていた。何故か、母は死なないという不思議な自信があった。母が死ぬ時は、私の死ぬ時、そう決めていた。私にはやるべきことが沢山ある。しかしながら、それはすべて母が生きていることが前提にあり、母の死はこれから先何をしても虚しくなる。もう何を言っても後の祭り、母は逝ってしまった。ただ後悔ばかり、救急法によって救えたのではないか、死にそうなら大騒ぎして助けられたのではないのか。悔やんでも悔やみきれない。8月25日水曜日、赤口。赤口とは地獄の釜の蓋が開いているという危険な日。午前中、朝食前にトイレに行って浣腸したいというから、希望を叶えた。確かに具合が悪かったかも知れない。でも死にそうということは全く無かった。

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