異変
世界各地の迷いの森のほとんどの場所で、その違いにより人族によって勝手に名付けられていた。
ところが人族、主に人間達が、生きるために必要な量を超える乱獲や幻獣の幼体や卵の誘拐を競い合うようにするようになった。
その中で“
特に隣接する人間族のスタークツ帝国とアデッソ王国が独占権を主張して、良く争いを起こしていた。
その争いに他の人族が独占後の優先的な取引を見込んでそれぞれに同盟国として加わったため激化。醜い争いが十数年続いた。
鋼の森の異変を知ったもう1つの隣接する竜人族のコンティノアール国が、祖先である竜種を含む幻獣達を助けるために参戦したことにより、新たな火種が加わる。
数年後ののち同じ人間族であるスタークツ帝国とアデッソ王国が手を結んで独占する者と阻止する者との争いは更に激しいものとなり泥沼と化す。
“鋼の森”にいた弱い種族や出産を控えた多く雌達は、竜人族の助けを借りて徐々に他の迷いの森に移動した。“鋼の森”の守りを担う種族や強い個体以外はほぼ移動が終わると思われた頃には、森の外周の一部を人間族連合が大型兵器で物理的に切り拓き、結界ギリギリまで伐採や整地をしたために、迷いの森の外側の結界が維持が難しくなり、それに伴い徐々に結界が縮小。幻獣達が移住した影響で資源が少しずつ減っていき、数十年に渡る覇権争いの末に最後の結界が消滅した。スタークツ帝国とアデッソ王国で森を二分されたが、豊富にあったはずの鋼はあっという間に掘り尽くされ、ただの森になってしまったせいで枯渇することになった。
迷いの森の資源の多くは、結界の中に多くの幻獣がいることで幻獣達の精霊力や魔力などによって複雑に絡みあって生み出されていたため、幻獣が居なくなれば増えることはないからだった。
最後まで残っていた幻獣の中に、群れを率いていた雄が最期の闘いで亡くなった種族の番いの雌がいた。
結界を維持管理する役目があったため、ギリギリまで幼体と共に森に残っていたのだ。
結界が無くなったことで資源が枯渇することにようやく気づいた人間達によって、残った種族は腹いせとばかりに追い回された。
はぐれた他の種族の群れを助けるために戻り、無事助けることは出来たものの、殿だった雌と仲間が取り囲まれてしまった。
強い個体ばかりだったので、傷付きながらも辛うじて逃げ切れると思った矢先、母獣を探して戻って来てしまった幼体が人間達に見つかって目の前で傷付けられてしまう。
我が子を助けようと捨て身で人間に挑む母幻獣。
傷付いた幼体を代わりに咥えて逃げる力のある若い雄。
自分だけなら充分逃げ切れると思ったその雄は救援に駆けつけた別の雄に、幼体を何処かに隠して結界を張ってから合流するように頼み、囮として人間達を翻弄すべく走り去った。
傷付きながらもようやく安全な場所まで母親と若い雄達の殿組が戻ったのは、幼獣を預けた雄が重傷により息を引取る直前だった。
『...すまない、あの子の血の臭いに魔獣が集まって来て退けたまでは良かったんだが、その中のいずれかを追っていた冒険者がいたらしく、あの子を隠した場所から遠ざけようとわざと冒険者に近付いて、襲いかかる振りをして駆け抜けようとしたんだが、引き離しは上手くいったが、おかげでやられてしまった。』というようなことを息も絶え絶えに伝えるのが精一杯だったようで、咄嗟の判断で素早く離れたため、隠した場所に目印などを付けたり、特徴のある場所を正確に伝える前に息絶えてしまった。
術をかけた雄の死は、イコール結界が消えること。深く傷付きながらもなんとかここまで逃げ切ったために疲れ切っていた母幻獣は、その場で絶望して力なく蹲った。もう自分の状態では探しに行くのは難しいからだった。比較的傷の浅い雄達が代わりに探し回ったが、丸1日経っても見つけることが出来なかった。
のちにその種族-麒麟-は幼体を除いて長い間人族に姿を現さなくなった。
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