第17話 留守
ショウキチが家を出て冒険者ギルドに向かったころ――。
◆
【side:ジャスミン】
私はジャスミン。
孤児院でシスターをしています。
最近孤児院の裏の空き家に越してきた人がいます。
名前はショウキチさん。
異国の人らしく、珍しいお名前です。
最初はあまり元気がなくて、正直私は心配していました。
なんというか、気になるというか……ほっとけない人です。
ちゃんとご飯は食べているのでしょうか?
本当はもっとショウキチさんのことも気になるのですが、私には子供たちがいます。
ショウキチさんにしてあげたいことはいろいろあるのですが、子供たちがどうしても優先です。
そんなある日でした。
「最近ショウキチさん顔色がいいですねぇ。なんだか楽しそうです」
洗濯物を庭に干しながら、私はひとりごとを漏らします。
今朝もショウキチさんはご機嫌な感じで家を出ていきました。
私服というには少し重厚な衣服を身にまとって出ていきましたが、どこにいくのでしょうか……?
そんなことを考えていると――。
私に声をかけてくる人がいました。
「あの……すみません」
「はい、なんでしょう……?」
どうやら旅の魔導士さんのようです。
帽子を深くかぶっていて顔はよくわかりませんが、魔導士さんだということは服装でわかります。
この街に旅の魔導士さんなんて、珍しいですね……。
「あなたは……この家のひと……?」
魔導士さんはショウキチさんの立派な家を指さしました。
「いえ、私はこっちの孤児院のものです」
「そうですか……。じゃあ、この家に住んでる人はどんな人?」
なんだか怪しい人です……。
ショウキチさんのことを嗅ぎまわっているのでしょうか?
ここはショウキチさんのためにも、正直に答えるわけにはいきません。
「いえ……私はあまりよく知らないもので……」
「そう……ですか……」
「なにか御用ですか……?」
「いえ、別に……。ただ気になっただけですよ。この家から、異常な魔力を感じ取ったのでね……。なにか高名な魔導士の方の家なのでしょうか?」
「え…………?」
異常な魔力……?
この人はなにを言ってるのでしょうか……。
ショウキチさんが高名な魔導士なわけないというのに……。
「まあ、それだけですよ。では……」
「あ…………」
魔導士さんはそう意味深なことを言い残してどこかへ行ってしまいました……。
あの方の言っていることはなんだったのでしょう……。
「ショウキチさん……」
なんだか不穏な雰囲気がします。
ショウキチさんが心配です。
はやく戻ってきてほしいですね……。
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