雨の日に死にたい自分
新妻空気
#1
雨が降る真夜中、僕は近所にある川へ向かった。川に行くと小さな波の塊が押し寄せて来る勢いで僕の心を不安にさせた。ポケットに入れてた薬の瓶を手に取り蓋を開け飲んだ。何錠飲んだかは分からない。最初は苦しかった何度も吐きそうで、吐きそうで辛かった。だけどしばらく経つと頭の中がふわふわとした幸せな感覚に包まれた。こんなに幸せな感覚は他にはないだろう。そんな幸福感を味わっているうちに、強烈なめまいと吐き気が僕を襲った。だんだん耳が遠くなり次第に強かった雨の音がふいに消えていく。
僕、死んだな。と悟った
この感覚...生暖かい......立ち上がると真っ白な世界だ。よく見ると一つだけ大きな扉があった。恐る恐るドアに近づき、息を飲み込み扉を開けた。
開けた先に見えた光景は、辺り一面丸いビー玉がたくさん広がっていた。これは走馬灯?なのか...ビー玉の中をよく見ると、そこには過去の自分が写っていた。
笑っている自分、泣いている自分、悔しがっている、様々な自分がいた。
試しに笑っているビー玉に触れてみた。幼稚園時代の自分の姿が写っていた。とても楽しそうに走っている。
次に触れたビー玉の中には真剣な顔をしている自分がいた。隣に座っているのは幼稚園から中学校が一緒だった、鈴木君だ、彼が野球選手になると宣言している姿が見える。それを真剣に聞いてる自分がいた。
三つ目に触れたビー玉の中には泣いている自分がいる、周りが進路を決めて、決められない自分が情けないと思って泣いている場面だ。
最後に見たビー玉にはネットで知り合った先輩、友達、が心配しているメッセージが届き無感情になってる僕が写っていた。
こんなビー玉もう見たくない。そう落ち込んでいるうちに胸が裂けそうなくらい、心が痛くなってきた。もう見たくない、もう見たくない.....そう思い目を閉じた
が目を閉じた闇の中でもビー玉は僕をひたすら追いかけて来る。だんだんビー玉が近づいてくるうちに光が僕を包んだ。光の先に見えたのは、僕の家の食卓だった....座っているのは僕と妹だった。
妹はたくさんご飯を食べている。おいしそうに食べている。僕はため息をつきながら、ご飯を食べている。
「どうしたの?」
「はぁ、何でもない........」
「死にたいの?推しのこと考えたらハッピーになれるよ!」
推しか.....いいねえそんな幸せなこと考えれて、
「まぁ、そうだね推しを考えれる余裕なんてないよ」
妹は一瞬、僕の顔を見てこう言った。
「生きていれば、辛いことはある、でもそれを乗り超えれば、いい仲間に恵まれたり楽しいことだって見つけられるんだよ」
と笑顔で言った。
でも僕は心の中で既に死ぬと決めていた。
「死ぬなら雨の日に死にたいな.....」と呟いた。
その後しばらく沈黙が続いた。
「死んだら何も残らないのに、もったいないな」
とボソッと妹が言う。
「死んだら全部、僕の物あげるよ」
と言い妹は苦笑いした。
僕こんなことも言っていたんだなと思い目を開けた。開けた途端全てのビー玉が水になった。その水に飲み込まれるかのように僕は目を閉じた.....
続く.....
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