花野原

花咲く野原を歩いていると

足元の小さな花が揺れた

何かが潜んでいやしないかと

立ち止まって覗いてみるが

もちろん何もいない

きっと秋風の仕業しわざだったのだろう


夢の中で

真夜中の花野原に立っていた

何億光年を経た星影の空には

黄泉の国の色をした月が出ていた


月光の下で立ちつくしていると

クリスタルがこすれ合うような

虫の音に紛れて

小さな囁き声が聞こえてきた


あたりを見回すと

小さな明かりが二つ三つ

近づけば消え

別の場所でまたとも


そんな錯視の世界を

半ば楽しみながら

半ば恐れながら

夢から覚めた


つまるところ

小人の姿を見極めたくはなかった

そういうことなのだろう


それは何かの寓話のようでもあり

ただの思い過ごしのようでもあった



https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16817139559033483005

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