不倫相手の娘がヤバイ

福沢雪

■1 不倫相手が待ちあわせ場所に娘を連れてきた

 彼とはいつも、フランチャイズのカフェで待ちあわせていた。


 互いの勤務先とは無関係で、ホテル街もある穴場駅。

 そんな駅前のカフェの二階で、私を窓の外を眺めながらレモンティーを飲む。


「お待たせ」


 声に振り返ると、彼が立っていた。

 平均身長、平均的な顔立ち、平均よりやや太めな体型の三十六歳。

 若い子から見れば立派なおじさん。

 でも四十の私からすれば、これでもかわいい年下の彼氏だ。


「そんなに待ってないよ。どうする? あなたもなにか飲む?」


 できればすぐにでもホテルに行きたい。

 ふたりきりになってイチャイチャしたい。


 彼もそれをわかっているから、いつもなら「いや、出よう」と言ってくれる。


 でも、今日は違った。


「だったら、タピオカミルクティーがいいな」


 彼の背後から、女の子が顔を出して笑った。

 十二歳くらいだろうか。

 フェミニンなキュロットとTシャツを身につけた女の子は、さらさらのボブカットがよく似あっている。


「えっと、この子は……?」


 尋ねている段階で、薄々には気づいていた。

 彼が弱り切った顔で、眉を下げていたから。


「ごめん……僕の、娘なんだ……」


 彼は片目を閉じて小さくうなずく。

 謝罪のつもりらしかった。

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