美しさと強さは
赤城麻理。
まっすぐとした長い黒髪のポニーテールが凛々しさを表していて、刀のような冷たくも凛とした佇まいと所作が格好の良い美人な女の子。
彼女ともあのファミレス以来だが、スタート地点ではその踊り子のふくに恥じらいながらも必死に起こしてくれた。
また、ここに至る道中は技術のことを戦いながらも控えめに聞いてきていた。その事から温厚で真面目な印象だったが、クロエに対しては幼馴染だからかかなり辛辣な扱いをしていた。
気安い関係なのはわかるが、ダンジョンというストレスからか、たまに容赦のブレーキが壊れているように思えてならないシーンも見受けられる。
まあドジっ子と四六時中居ればそうなるか。
俺の幼馴染達よりマシか。マシだな。
今は湯上がりだからか頬にほんのりと赤みが差していて、なんだか嬉しそうにワクワクとしていた。冷たいほど色白な肌がピカピカと光り、シンプルな踊り子の衣装も相まって、しなやかな身体をより美しく見せている。
その彼女が、俺の手元をじっと見ている。単純に物珍しいのか、はたまたクロエがいじめられているとでも思っているのか。
いや、これはお仕置きしたい顔だな。
「クロ、辛そうだな」
「っえ、んっ、んあっ、んっ、んんっ! 見るなっ、て、馬鹿麻理、んぁ!」
「ふっ、お前は昔から人の話を聞かないからな。これは藤堂君の忠告を軽んじた罰だ。その身体にしっかりと描いてもらうといい」
いや、これはそういうのではない。それにそういう罰的な落書きプレイは俺には無理なんだ。
「ふ、ふぁ、なか、んん、ン……んんんん"…っ?! そ、 そこ、はぁん、ぁン…京介ん、んんンッ?!」
クロエはハァハァと呼吸を荒げ、苦しそうに眉根を寄せている。大きくびたんびたんとはしてないものの、こうも身体がこわばっていては描きづらい。
そして少し筋張る小さなお尻が目に入る。
「……」
「あひん…っ!?」
こんな風にパチンとお尻を叩いたら瞬間大人しくはなるのだが、描き始めるとすぐにまた力が入ってくる。どうしたものか。
麻理は嬉しそうだが。
「もっと躾てやってくれ」
「……」
どちらにしても、これはそういうのではないんだが…
狙ってないのにそういう反応されるとちょっと困ってしまう。
勇者とはだいたいそんなものではあるが。
そういえば、獣人だからか、筆がぶっとい木の枝の先をほぐしたモノだったからか、彼女達ベルクァヘンプの紋様はそれはもう大雑把だった。大雑把にしか出来ないのは歴史上でも種族上でも仕方がなかったが、繊細に入れたことはないと言っていたから試したことがあったな…
今みたいに。
すると『にゃーにゃーごろにゃーん』ととても喜んでくれたことを思い出す。もしかしてこれ、そんな効果あったのか…? 確かに筋肉や神経の伝達に有効なように配置してはいるが…あの時は発情期だったしな…
結局一度も自分には使わなかったが、これ…俺にも施して良いものだろうか…
「まるでお父様の躾のようで懐かしいな。もっと叩いてやって──くれっ!」
「いだぁッ!? 麻理だろ今の! くそぉ…覚えてろ…」
しかし、本当にこの子は容赦ないな…
小さなお尻に紅葉が出来てるじゃないか…大人ならともかく、可哀想に。
とりあえずエスカレートする前に急ごうか。連携の訓練もしたいしな。
その赤が差した生っ白いお尻から脚に達し、内太ももにも素早く入れていく。しかし…大事なところが隠れたロリとはいえ、なんかくるものがあるな…いかんいかん。
それと麻理は見逃したのか、気づいてないのか、既に俺のぬのの絆創膏はその役割を放棄していた。なぜだ。
「……。次は仰向けだ。こっち向いて」
「う、…あはは、や…それは、ん〜〜やっぱり恥ずかしいよぉ…」
恥ずかしいのは可哀想だが、そうも言ってられない。それにシュピリアータの権能ならその恥ずかしい記憶を抜き去ることは可能だろう。
「大丈夫だ。この空間は夢の中みたいものだから、クリアしたら忘れる──」
あいつが無事ならばだが。
「──かも、多分、おそらく大丈夫だ」
「不確定なんじゃん! 小さいしいいけどさぁ…特別だからね! そ、それと責任っていうか──」
そのクロエの真剣な声色に反応したのか、麻理が遮ってくる。
「それにしても見事なものだな! すぐに変わって欲しいくらいだ!」
「……やだよ。京介、麻理の量あるかわからないって言ってたじゃん。それにやれって言ったの麻理だろ」
「ぐぬっ…というかいつの間に呼び捨てに…」
「な、なんのこと? ボク必死だったからわからないなぁ」
「勢い任せのくせに……そ、それにしても…これには何か由来があるのか? 随分と乱雑な配置というかそれでいて意味を持たせたような置き方というか非対称ゆえの美しさというか決してクロエが美しいというわけじゃないけどまるで数奇家造りみたいだな京介君!」
「麻理も勢いに任せてるじゃん」
「別にいいじゃないか!」
数奇家造りが何かはわからないが、麻理がそう言うのも無理はない。確かに力を発揮する点には過度に細かいし、流れるように配置された紋様はそれだけで意味を持たせているし、それでいて型破りな美も追求している。
美しさは時にイコール強さでもあるのだ。
「配置はいろいろある。今回のはクロエの役割が一番強く出るような配置で…強化とは言ったけど、これはいわゆる戦装束なんだ」
「戦…装束……あっ…!」
その単語に麻理は何かを思い出したかのように、はっとした。やはりバトルドレスよりはわかりやすいか。
「……はぁ…」
「…?」
しかしすぐに麻理は肩を落としてため息を吐いた。何のため息だろうか。
悟りが使えないと、よくわからないな。
しかし、まあなんだ。これを覚えるのに、それなりの対価を支払ったことを思い出すな。
背中、爪でめちゃくちゃ痛かったな…
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