11 / 100 | 秦野 純

|藤堂 京介



「う、う、う〜ん…いったい、何が…」


「起きた? 純。久しぶりだね」




「京介! お、おう…ひ、久しぶりだ!」


「さっきはごめんね。急に殴ってくるからつい反射的にカウンター合わせたよ。今日、ちょっと嫌なことがあってね……」



本当にごめん。純。


今日タコに墨かけられてさ。そこからストロング0を破棄してたんだよ。だから咄嗟に合わせてしまったよ。でも良いスイングだった。神殿騎士、レベル2くらい。


やるな…


人族の傑出した才能とはいったい何だったんだろうか……純の方が全然凄いんだけど…



「あ、あ、い、いや! 俺が悪い! 良いんだ! それより…」


「ああ、純は……女の子だったんだね。…気づかなくてごめん」



純は、鼻の下擦って、いっつも傷だらけで、肌真っ黒で。未知瑠も純くん純くん言ってたしなあ。全然気付かなかったよ。僕は昔から勘が良く……なかったのか。まあ僕、脳筋だしな…



「…今思えば、俺の格好と喋り方なら仕方ねぇ。良いんだ。今更だ。ただ、京介! 聞かせてくれ! 俺とお前はダチだったか!?」


「…ああ、よく闘ったしね。喧嘩は無かったけど、僕はそう思ってたよ」



交流試合。純の道場でよく闘ったよね。主に組手稽古だったけど、今思えば女の子のくせにあんなに強かったってことだな…なんというか野生っぽかったというか。



「なら、よ……お、俺を抱けるか!」


「? 抱けるけど」



「ハ、ハグじゃないぞ!」


「ハグじゃないよ。今の純を見てたらさ。とてもじゃないけど、我慢できないよ」



「? 今の格好……? ななな、なんなんだ! これっ!」



さっきからなんで気付かないのか不思議だったんだけど……あまりにも普通に話すから会話しちゃったよ。


純はアイドルの衣裳を着て、M字開脚に縄で縛られていた。太ももと手首を固定されている。


当然丸見えだった。


何故に気付かないし…瞳の色は嘘ついてないし……たしかに純はそういうポンコツなところがあったな。


だんだん思い出してきた。


アイスにふーふーしてたな…


そーめんにふーふーしてたな…


M字で某がズボンを押し上げて痛いからふーふーして欲しい。



「海子…さんがお願いします。ってさ。勢いと早口でさ。ついOKしちゃってさ………だから、先に謝っておくね」



純の付人の海子さんが僕の部屋を借り、設えたので後はお願いします! と言って未知瑠を連れてった。未羽も勉強してきます、と言ってついて行った。


部屋に入ったら純がM字気絶してた。


というか未知瑠も女の子だったんだ…鈍感系にも程がある。赤と黒のライダー的な男の格好だったし、てっきりジャニ的な男性アイドルを目指していたのかと…綺麗な顔だったし…



「まさか…この格好でか! こんな女みたいな格好で! しかもなんで縛られてやがる! おっ広げてやがる! 絶対ネリア姉じゃねーか! おい! ネリア!」


「純……海子さんは、庭で未知瑠と戦ってるみたい。純の邪魔はさせないってさ。意味はわかる?」



索敵で拾えば、割と均衡していた。


おーっと、未知瑠選手の溜めからの一突きィィィ! 海子選手、また縄を使って────って違う違う。


また実況を始めてしまう。


今は純だ。



「あいつ……よし! わかった! なら抱け! ……いや、抱かせろ!」


「……」



純…僕のせいで、男みたいな話し方に…女の子と打ち明けられずに…本当にごめん。



けど……安心し。 


が歪めた責任を! お前の本来の未来を! 取り戻してやるからな!



「ああ。もちろん。……だけど、抱くのは俺だ。お前の初めて。俺がもらう……いいな?」


「き、京介…?! んむっ?!」





「京介……へへっ…ワイルドだぜぇ…」


「………駄目だったか…ならもう一度だ。何度でもだ! 俺は挫けないぜ!」


「! いや──っ! ダメだダメだダメだダメだってば──────っ!ぃや────んダメ─────!」

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