ゴブリンハーレム
GB1
| 藤堂 京介
狂宴から一週間経った。
放課後、僕はオーリーに出向きおかしらと話していた。
あれから葛川、下出、上田、中田はずっと"檻"の中だった。三日後には薔薇なやつを集め、代わる代わる泣かしていた。
五日も経てば、今や従順なネコらしく、様々なシチュをこなせるようになったらしい。
僕は詳しくないから、まあ、任すよ。なんて言っておかしらの知り合いのイカついにーちゃんなねーちゃんに躾は任せていた。
でもやっぱりそいつも最初に飛びかかってきたのでもちろん意識を刈り取った。それから丁寧に丁寧に関節を増やしていたらいつの間にか目を覚まし、
ほんとに聞こえなかったんだ。
絶対に嘘なんかじゃないんだ。
そもそも作業中の職人に声を掛けるなどあってはならないんだ。
すごく集中してるんだ。
それなのに
簡単にあっち行っちゃうだろ。
僕も捕まっちゃうだろ。
それからそいつは素直になり、薔薇集めにあくせく動いているから僕は花屋と呼んでいる。本名は知らない。
葛川達は学校を休ませている。
学校や保護者への言い訳は最初は葛川兄が頑張ったそうだ。内容は知らない。だけどそのうち本人達も素直な悪いネコになり、それからは自分で連絡させている。
まあやり過ぎとは思わないかな。
全貌を聞き出すと、朋花が把握していたより多い被害者達がいた。そして加害者も。
加害者達は全国、とまではいかないが、結構遠方の奴もいた。SNSを使って、金を払っての参加だったそうだ。考えたのは下出だった。
被害者達も、結構な広範囲だった。だいたいはお金と暴力と動画で縛っていて、長月さんみたいにやり過ぎる女の子は監視出来る近距離の女の子のみとし、遠く離れた子は、本人が納得出来るだけの金額を支払い、結構円満だったようだ。考えたのはやっぱり下出だった。
最初の足掛かりだった逮捕された一人の男のニュース。
葛川達、四人の先輩で、おかしら達の下っ端だった。そいつがおかしらグループ内での鬱憤を晴らしたいため葛川達に計画を持ちかけ、始まったらしい。葛川も兄にはムカついていたらしく、乗っかったという。
その後、四人はノウハウを吸収し、最後にはそいつを嵌めて逮捕させたらしい。現代の下剋上はかくも物騒だ。計画したのはやっぱり下出だった。おかしらも素早く尻尾切りして離れたらしい。もみ消しの裏には葛川兄がいた。
葛川達の全貌を暴くと、どうやら高校入学と同時にピタリと止めていた。本人たちは中三からだっ!と青い主張をしていたが、ちょこちょこやらかしていた。
なので、今は加害者達と被害者達を代わる代わるご招待している。
加害者は、四匹の悪いネコ達が誘い出し、そのままタチ役となり尊厳を奪いネコに変え、どうしてもうるさいヤツは例の魔法で幻惑の世界だ。
被害者には陵辱動画を先に渡し、復讐したい人だけ来てもらっていた。ムチが必要な人や、殴りたい人も好きにしてもらっていた。ここにはいろいろある。
僕は万が一があるといけないからと、それから毎日オーリーに来ていたのだ。
しかし、金を払っての参加か……まあ、バリネコにでもなったら良いんじゃないかな。全員タコになったら良いんじゃないかな。
でもこれ、思ってたより長いクエストになるな……仕方ないか。
……それより。
「ニュースかな」
「だと思います」
薬物ウィズの出どころはどうもわからないようだ。おかしら達も毎回変わる連絡先には気にも留めず、だいたい無くなりそうな時にあちらから連絡が来ていたそうだ。
勘も良いのか、無くなりそうな日になっても連絡が来ない。
三日前から、葛川一族の闇と題された小さなネットニュースが流れ出していた。貴族葛川のやらかしを糾弾するようなネタが少しずつ、匂う程度に毎日投稿されていた。
貴族葛川はこの天養市では大きな権力を持っているようで、葛川兄弟の罪も噂だとして覆い隠していた。
葛川兄は気に入った女の子のリストを作り、父と祖父の交友関係者に斡旋していた。その全貌をレポートにし、エリカに渡させた。
実家からネットニュースの問い合わせの連絡が頻繁に掛かってくるが、知らぬ存ぜぬで、のらりくらりと躱させている。
投稿はエリカの実家だろう。少しずつなのは大人の事情かな。落とし所とも言うけど。
こっちが片付くまで待ってもらっているのもあるか。
まあ、全てを刈り尽くすわけにもいかないことくらいはわかるし、正直なところあまり興味が無いため殆ど見てない。
だって、断頭台ないし…
どうせ死なないんでしょ、くらいだ。死ななきゃなんとかなってしまうから、被害者達を本当に救えたのかもわからない。断頭台の無いこの世界は罪の所在がはっきりしない。
アレフガルドでは白黒はっきりしていたからわかりやすかった。
まあ、僕も最後には
そういえば一緒に
そんなことより特技だ。欲しい。
現代の勇者など目の前のヤツを素直かタコか幸せ失神かにするだけで、何にも特技が無い。
だからエリカ達に丸投げだ。そのうちここオーリーも使えなくなるだろうし、その時は目出し帽ーイズ一味も檻に入るだろう。まあもっと悪そうなのいたら教えてね、とは言っている。
「ご主、…藤堂さん」
「あ、ああ、長月さん。今日も来てたの? 調子はどう?」
あれから長月さんは毎日顔を出していた。隣の区だから電車でもすぐだし、オーリーは駅から遠いとはいえ、バスもある。
僕は黒い目出し号だ。
あの日から僕をじっとりとした目で眺めてくる長月さん。薬物も抜け、学校にもきちんと通い出し、日に日にかつての輝きを取り戻し、健康的な姿になっていった。メグミさんから聞いた通り、確かに別嬪さんだ。スタイルも良い。そうそう笑顔が一番だよ。
「は、はい。最後まで見届けたくて。それにすっごく調子が良いんです。そ、それとご主、藤堂さんにも会いたいですし…」
「…それは良かった良かった」
最近、未羽に釘を刺されていた。
手を出すのは良いけど、前後で構わないので一度会わせてください、なんて言われた。
じゃないとまた感謝しますよ、なんてよくわからない脅しをかけられていた。なんだか匂いが関係しているようだが、怖くて聞かなかった。
正直なところ、そこは怒ったり蔑んだりするところではないだろうか。僕自身、もちろんこの世界においての男女の恋愛感は頭ではわかっている。
でも、もう僕、
嘘つけないし。
だけど、未羽はそうではないだろうから、それに合わせてくれているようで、やっぱり異世界通信でもしてるんじゃないかと疑ってしまう。
いつか刺されるだろうけど、僕多分それくらいじゃ死なないんだよな……厄介でごめんね。
……まあ、いいか。
どうにかなるだろう。
この避妊魔法と幸せ失神でどうにかなるだろう。
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