ウォー3 - 何も言えねぇ
| 葛川 翔
藤堂の様子がおかしい。
いつもはだいたい無口で、アイコラ写真を見せた時だけは拡散はやめてくれ、と必死だった。
先週ボコった時も碌に反応しなかったやつだ。
それが今朝は一変して煽ってくる。
なんだ、何が起きてる?
シモのおかげでさっきは落ち着いたが…
シモはイメージを大事にしすぎる。圧を掛けるタイミングを間違えちゃいけない。クラス内なら尚更だ。
今日はナカとウエは揃って休みだ。ナカはいつもの小学生ナンパ、上は飼い犬に会いに行くらしい。こういう時に限ってナカはいない。ウエもだ。仕方ねぇな。まったく。
ん?おいおい、もしかして本当にナカがボコり過ぎて変わっちまったのか? いや、んなわきゃねえか。陵辱した女でもそこまで変わるやつはいなかった。ナイフを持たせてもだ。まあ反逆なんてさせないようにしてたしな。
ならなんだ? …まあ、昼休みまで待つか。
そして愛香だ。
先週とはかなり変わっている。しかも俺の好みの方向バッチリだ。股間がいてぇ。この変化は…動画を見ての防衛策か。いいな、その健気な感じ。これぞ純愛って気がするぜ。
そうか、こうやって彼氏彼女になるんだな。
今まで飼い主と雌犬だったから新鮮だ。
ただ、クラスの様子がなんかおかしい。
ひそひそとこちらを見ながら…何だ?
見るなら愛香の方だろ。ああ、救えるのが俺しかいないってか? まったく。仕方のねえ奴等だ。早くその時が楽しみだ。くひっ。
「くっすん」
「何だ?」
シモの様子が、さっきと違い変だ。何だ?
「何かおかしい。今まで仲良くしてたやつから総スカンだ」
「? そんなこと…あるもんなのか? ちょっと待ってろ。─────ね、笠原さん、みんな何を話してるのかな? 教えてくれないかな?」
こいつはクラスメイトの笠原皐月。いつも話しかけると頬を染めて嬉しそうにしやがる。全然激らねーが、まあニッコリ笑顔のサービスだ。
「ひっ、葛川くん、何?」
なんだ?こいつ、激るじゃん。そんな表情するとか…煽ってんのか? リストに入れとくか。…じゃねぇ。なんだ? なんで怯える?
「あはは、どうしたんだい? 緊張してるのかい?」
「ううん、いや、ちょっと聞いたんだけど、これ…。…葛川くん…女の子に昔酷いことしたって本当?」
あるSNSの呟き。そこに書かれていた内容。それは予想の斜め上だった。
◆
三限目の休憩時間。シモと連れ出って四階の教職員用トイレに来ていた。ここには滅多に教師はこねぇ。シモが言っていた。
俺は、昂った感情を吐き出した。
「なんだぁっ! これはぁ!」
「ふふ、やってくれたね。誰だ。しでかした奴は…これは…@KUBIHARU19…?こいつか、バラ蒔いたのは」
「ふざけやがって! …しかもこの内容の一致……誰だ?雌犬の誰かか? 今、19歳とか居たか?」
「居たよ。でも特定は…難しそうだね。まあ、さっきみたいにシラを切れば大丈夫だよ。とりあえず昼休みに憂さ晴らしだね…僕が心当たり探してみるよ。ウエの飼い犬とかにも」
SNSの呟きのリンク先には、俺の過去の陵辱の手口が載っていた。主人公が俺で、まるで陵辱モノのWEB小説だ。しかも全部事実だ。高校に入ってからの猫被りも綺麗にトレースしてやがる。SNSの方にはたった5秒の動画も載っけていた。
動画は、俺にはモザイク無しで藤堂にはモザイクしている暴行シーンだ。つまりそれに陵辱小説をくっつけている。下手に訴えると、こちらがマズい。
「これが親父にバレたら次は不味いってのに、誰だこんなモノ流しやがって…! しかも、ぼさおはぼさおで、木偶のくせにイキがりやがって…! 昼休みに絶対ボコってやる!」
◆
俺は、いま、何を、見せ、られ、てい、る?
「はい、あーん、京ちゃん。美味しい?」
「はい、兄さん、こっちも。頑張ったでしょ?」
「きょんくん、こっちも、食べなさい」
「みんな、美味しいよ」
「聖ん、いつの間に!」
「未羽もいつの間に!」
「由真、私達もお弁当作ってこれば良かったですね…」
昼休みの屋上。
シモは噂の出所を調べてくると行って教室を出て行った。俺は一人で屋上に来た。
屋上の端、六人の女がぼさお、藤堂を囲って弁当を食べていやがった。
ここに居るのは、ランキング10内のやつばかりだ。愛香はもちろん、藤堂未羽、三之宮聖、新津瑠璃、浅葱由真、狭川響子…
藤堂未羽は藤堂に、兄さんだと…先週否定したばかりだろうが!
なんだ、このギャルゲーみたいな状況は!
しかも、愛香は京ちゃんだと?
何故ぼさおに弁当食わせてやがる! それは、そこは俺だろうが!
藤堂…こいつ、異世界転生でもしてきたっていうのか?! いったい何があったらこうなるんだっ!!
「あの、藤堂くん、少し良いかな?」
「あー、聖ちゃん、どさくさに紛れて何お弁当作ってきてるの!」
「ふん、愛香が被るのがいけないんじゃない。きょんくん、こっちのが美味しいわよ〜あーん」
「あの、その、藤堂…くん?」
「未羽! 作るなら声かけてよ〜」
「そうです! 私達は感謝祭という名の一夜を…」
「響子! 兄さんを困らせないで! また今度誘うから。今日は愛香と作ったの。なんだかんだで一番理解してるし…」
「未羽のお弁当も美味しいよ」
「本当ですか! 兄さん!」
「未羽ちゃんさー、いつの間に成ちゃんと融和したの?」
「……」
「いろいろあったのよ。それより新津も、それに三之宮もさあ、いつの間に兄さんの近くに?血のバレンタインはどうしたのよ。愛香にやられたんじゃなかったの? 自慢してたわよ、こいつ」
「京ちゃんの前でサラッとやめて!未羽ちゃん、酷い!」
「愛香が酷いのは昔から知ってるわよ。幼馴染なんだし、ふー、そうね。先週いろいろあったのよ。ね、瑠璃」
「そーそー、あれ? そーいえば…それってクズ川のおかげだよね」
「あ、そうだよ!」
「そういえば…そうよね…」
「元を辿ると…そっか」
「そうなるね」
「そうですね」
「じゃ、さん、はい」
「「「「くずかわくん、ありがとね〜」」」」
何だ、なんなんだ、なんなんだっ! こいつらは!! ウォー!!!
何も、言えねぇ…
「葛川くん、今お昼ごはん中だからさ。用事は普通、食べ終わってからじゃないかな? 気をつけた方が良いよ。もぐもぐ」
……こいつ、殺していいか? いいよな?
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