恋した人は魔法使い

恋した人は魔法使い1

| 藤堂 京介



僕の返事を受け、絹ちゃんが仲間に連絡をとりだした。何度かスマホでやり取りした後に、僕に向かって円卓の、と言った。


十分ほど経ってから、その子たちは現れた。



「失礼致しますわ。お久しぶりです。京介さん」


…随分とスタイルの良い子だ。女性にしては背も高い。ああ、ヒールか。それでも高いだろう。ボリュームのある金髪はふんわりと長く、こめかみあたりだけ緩くウェーブさせていて、前髪は眉まで伸ばし、ぱっちりとした目元は碧眼で……金髪と碧眼と口調?



「エリカちゃん?」


「そうです、和光エリカですわ! ご無沙汰しておりますの、京介さん。ああ、覚えておいてくださったので…ぃたっ、なんですの、京介さんとの感動の再会を…ぁたっ」


「エリカ、ちょっと避けて。久しぶり、京介君」



エリカちゃんの後から現れたのは、茶色の長い髪に温和な笑み、エリカちゃんと同じくスタイルの良い美人な女の子。かつて僕に挑み続けていた負けず嫌いの女の子。事あるごとにクローゼットの中に誘う女の子。度々左右の靴を結ぶイタズラしてきた女の子。いつもあやとりの糸をなぜか両腕に結ぼうとしてきた女の子。犬の首輪が大好きな女の子。小学校のある時から疎遠になっていた、



「ひーちゃん?」


「うん。聖、です。久しぶり。くすっ、一緒の学校なのに変だけど、一応ね」



「そう、だね。ひーちゃん。それなら久しぶり…は変か」



そうか、同じ高校って瑠璃ちゃんが言ってたな。中学の時は絡みもないし、高校でも会っていないから異世界入れて実質10年くらいぶりだけど、そこに困惑しているわけではなく…瞳の色、こんなだったのか。あ、消えた。…愛憎か。随分と濃いな。



「その、懐かしくって嬉しいけど、ひーちゃんはもう恥ずかしいから、その、聖って呼んで欲しいな…」


「…聖か、間違えてまたひーちゃんって呼んでも怒らないでよ。よし、聖、聖ね」


「わたくしもエリカとお呼びください!」



なんか、エリカちゃんはほっとするな。アレフガルドに良くいた金髪だからか。



「うん、エリカちゃ、エリカも。久しぶりだね。会えて嬉しいよ」






エリカ曰く、この和光マンションはエリカの実家、和光家の物件らしい。ここの同階にエリカ達円卓のたまり場があり、そこに三人で集まっていたようだ。


今日は三人で集まって何かを練習していたらしい。


でも最上階が秘密基地みたいな感じ、…なんか良いな。こんなに高い建物無かったからなあ。


いや、塔があったな…だいたい中のレイアウトが気にいらないから外から登ったな。眺めだけだな、塔の良さは。


中はだいたい最低だ。


透明な床ってなんだよ。住みにくいだろ。扉開けたら外とか、設計の段階で気づくだろ! 落ちたらどうするんだ。実際落ちただろ! レベルが仕事しなけりゃ死ぬだろ! いい加減にしろ!


普通なのは叡智の塔だけだった。



「それで…京介君になぜまだくっ付いてるんですか? 先輩方」


「まあ、なんとなく?安心するし?」


「いいじゃないですか!そう、安心です!」



絹ちゃんから聞かされついたのか、真弓さんも麻実さんも、スムーズに会話している。それにしても、聖のこの色は…



「まあまあ。聖。さっき解放されたばかりだし、ね?」


「はー…相変わらずね。…このラブマシンめ。まあいいわ。それで絹子はどう攻める?エリカは?」


「パスワードがまだ。わかったら入って行動把握とデータ抜く」


「わたくしは彼女たちを保護しますわ。それとお父様とお爺様に判断を仰ぎます。所有物件での犯罪ですし、ことがことですのでもしかしたら圧力もあるかもしれません。ですが、同性として大変許し難い所業。確実に強力な矛で突き破りますわ。…絹子さんはそんなに難しいんですの?」


「監禁室は今地獄。まだ聞き出せない」


「それはどういう…」



疑問に思う聖とエリカのために監禁室の扉を少し開ける。中から人とは思えない声が聞こえてくる。


拘束の魔法を切ったらだいたいこんな感じになる。さっきまで出せなかったものを精一杯出す。


そして女の子からの復讐に使うと、9対1で性犯罪者はEDになる。残り1割はガチマゾだ。本当に怖いよ。女子の復讐。横で見てただけだけど。


これが僕の鬼畜すぎる魔法の本当の使い方、だ! 


違うか。


復讐したいのに犯人いないとか、避妊魔法で逃げ切った某勇者みたいなものだ。そして今のところ僕はガチマゾには目覚めてはいない。



「……これはもう手向け花が必要なレベルですわね…」

「この人たち、どういうこと?」


「まあ、やりすぎたみたいだね」



「はー…。相変わらず悪い子に容赦ないんだから……ふふ。でもいくら強いからって、気をつけて欲しいわ」


「はは、ありがとう。気をつけるよ」



「あと両隣の痴女とかにもね…」

「破廉恥ナース」


「誰が痴女だ! これは、その、アレだ!」

「そうです! 藤堂くんは可愛いって言いました! 麻実のお尻も見てました!」


「え? 見られてたの?」



真弓さん、それは言わなくていいんだよ。それは見るよ。ぶるんと出てきたらそりゃ見るさ。キックなんかするから。



「…京介君、こういう格好…好きなの?」


「まあ、似合う格好なら好きだよ」


「破廉恥する。私も」



まあ、嫌いな男はいないんじゃないかな。でも聖とエリカがすると、多分お尻半分見えるんじゃないかな。スタイル良いし。それと絹ちゃんのあぶなすぎる水着以上に破廉恥な格好はないんじゃないかな。


ま、可愛いならなんでもいっか。

心技体はもう完璧だ。



「ふーん。そう。わかった」

「わかった?」


「良いの。こっちの話。にしても全然声が漏れないのね。監禁室、か………………………んひっ」


「………あ」



ああ!あれはそういう…ことか。合点が一致した。あの時のクローゼットはそういう意味か…。幼い記憶では位置関係がなんかおかしい視点だったからなんとなく疑問に思ってずっと覚えていたけど、なんだ、ひーちゃんは僕を飼いたかったのか……



可愛いとこあるじゃん。



「好きだって!…真弓の頭おかしいノーパン健康法がついに役に立ったわね」


「しー、しー、ばか麻実っ! ばか、おばか! 格好よ、格好のほう!」



真弓さんの健康法だったのか。通りでうまい具合に隠せてると思ったよ。殴る動作に違和感なかったし。……常習か。レベル高いな…しかも麻実さんにだけ露出させるとは…なかなか酷いな。



「この格好が、ですの?…それとノーパン健康法ですの? まだまだそちらの知識が足りませんわね。わたくしもノーパンなら…いたっ、もう! なんですの!?」


「それはやめろ! 私たちが霞むだろ!」

「そう、ですよ! しかもなんですか、その…スタイル! 首藤さんはこんなに慎ましいのに…」


「今の私にそれは通じない。京介くんは乳首可愛いって言ってた」


「えっ」

「真弓のアタック、レシーブどころか直でスパイクされたぞ」


「絹子、後でもっと詳しく教えなさいよ」 

「そうですわね」



んー。姦しいな。まあ楽しそうでなによりだ。悲壮なんて要らないよ。


とりあえずEDかガチマゾはもう出来上がってるだろう。なんとかの猫だ。さあ回復の魔法使うよ。



あとEDには回復の魔法効かないから全然安心していいからね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る