ダブルストーカー
山神神社1
| 藤堂 京介
土曜日の昼下がり。
僕は念願の故郷探訪に一人で出かけていた。未羽、由真、響子の三人はまだ寝ている。
それはそうだ。
あんなに全力を出し切ってしまったのだし。足腰は…立つか。回復かけたし。
洗浄の魔法をかけ、髪をきちんと整えて、適当に選んだ服を着て、今や懐かしい遠隔のヘッドホンで歌を聴きながら、目的地も決めないまま歩く。
この世界に慣らすためリハビリも兼ねている。
やっぱりアートリリィが言った世界な気がしてくる。僕の記憶とこの目に見える風景に違和感はないけど、未羽たちがあんなこと出来るとは思えないし…
それに、朋花から聞いた話は、本当に平和な世界とは思えなかった。異世界の盗賊も真っ青だ。中学生の発想じゃない。完全にヒャッハーの世界だ。
もっと安全な世界だと思ってた。
結局、ここが元の世界と似て非なる世界なのか、貞操逆転世界なのか、世紀末覇王の世界なのか、それらが混ざったパラレル地球なのかはわからない。ことはわかった。何もわからないとも言う。
だけど、ここで生きて行くしかない。
そんな事を考えていたからか、近所にある神社に自然と足は向かっていた。
何というか、こう、リスタートを切るには、神社でお参りが良いかなと思った。
神託を受けたとき、あれは神の声としか思えなかったと姫巫女たちは言っていた。僕の召喚者は聖女だけど、やはり神はいるのだろう。
なら、やっぱりお参りかな。そう思った。
でも神に対する概念があっちとこっちじゃ違うしなあ。まあ、神社はお願いではなく、感謝と報告するところだしね。
そうだ。神様に帰って来た報告をしよう。
そんな事を考えながら、
この神社は街を見下ろす高台の林の中に、昔からぽつんとあり、管理人が月二回ほど掃除にきていているくらいで、普段は誰もいない。あるのは小さな社務所と賽銭箱、ベンチくらい。
何にも変わっていない。
昔から男友達は何故か少なかった。愛香のおままごとに付き合っていると、みんなそそくさと離れていったのだ。
ここは京ちゃんのお部屋だよ発言もこの時だった。どうやってそこにお邪魔するのか謎だった。普通わからないよ。
だから純と未知瑠くらいか。仲良かったの。ここにはたまに二人で来てたな。でも何故か三人で来た事はなかった。
二人にはバレンタインのチョコをもらったっけ。これが友チョコか、と感動したなあ。
結局別の中学に進んだから疎遠になったんだっけ?
そういえば、どうも小学6年の頃の記憶があやふやなんだよな。なんでだろう。
自分に悟りの魔法でもかけるか?いや…止めとこう。何度も言うけど、目の裏側を掻きむしりたくなるあの衝動は純粋にイヤだ。やめよう。
悟りの魔法は使ってないが、索敵の魔法は自然と使ってしまっていた。昔から知っている神社だけど、建造物を前にすると反射的にどうしても使ってしまう。弓とか嫌だし。砦ならついでに攻略を考えてしまう。
もう反射は知らない子です。まあ、好意に対しては弱まることがわかったし、出掛けに枷もかけた。今は中学一年生くらい。安心安心。
あとはリハビリだ。
その索敵に二人引っかかっている。
土曜日の神社。参拝客ならわかる。だけど目視してる範囲には見えない。探るとお社の左端、社務所との間だ。二人が一緒に居るのはわかる。こっちを伺っていることも。
神主さんかな?
賽銭ドロの警戒でもしているのかな?
ま、いっか。
まずは参拝参拝。二礼二拍手一礼。っと。
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