京ピ
| 初芝 朋花
「わっ、うわっ、うわっー」
「うはー」
愛香と二人で先ほどの熱戦を見ていた。
使ったのは葛川の正体を撮るためにと買っておいた小型の高性能ビデオカメラだった。
こんな事を撮るためでは決してなかった。撮られるためでもなかった。ましてや出演するつもりでもなかった。愛香と二人なら、と承諾してしまった。
テレビに繋ぎ、二人でお菓子を食べながら鑑賞していた。こんなことJKがする事では決してなかった。ないけど見てしまう。
『しゅきー…。しゅきー…』
「あはは、しゅきしゅき言ってる」
「もー愛香もでしょ〜」
我ながら大胆な事をしでかしてしまった。動画の中のわたしは私じゃないみたいだった。こんな声出るんだ。
京ピ…恥ずかしぃょ…
藤堂くんとの行為の最中は、まるで嵐の中の小舟のようで、必死に遭難しないようにしがみ付いていた。
だからいろいろなところを見てる暇なんて全然なかった。
こうやって客観的に見ると何というか私を幸せにしようとあくせく頑張っているみたいで、自分のことなんて二の次みたいに尽くしてくれてるよう……なんだか嬉しい。これじゃどっちが対価を得たのかわからなくなる。
あ、奥を撫でられた時のシーンだ。あれはすごかった…。あたまが真っ白になった。お腹をたまらず撫でてしまう。
「で、でもやっぱり愛香の身体、綺麗。シミ一つないし」
恥ずかしさを誤魔化すために愛香に振った。でも本当にすごい綺麗。並んで映ると嫉妬すら浮かばない。映像になるとまたちがう。
「そりゃいつでも京ちゃんに見せれるように磨いてきたしね。本当はお菓子も寝不足もアウトなんだけど、今日は記念日だし親睦会だし解禁」
「そうなの?」
そこまでするものなの?すごい。
私達のグループの女子は愛香とわたし、それにミーこと
あの二人はたしかに可愛いけど、多分私と一緒で高校デビュー組だ。本物なのは愛香だけだった。その愛香も影では努力しているのだそうだ。
「私、結構すぐ肌荒れるの。義妹ちゃんに負けたくなかったから中学の時からずっと」
普段の努力か。今日からでも間に合うかな。でも今日は確実に髪と肌がツヤツヤ、プルプルしてる。
特に髪はブリーチしてから染めたから随分と痛んでいたのに艶々している。愛香もそうだ。キレイになるって迷信じゃなかったのか。
漫画とかのそんな描写、絶対嘘だと思ってた。
しかも身体はなぜか元気が有り余って仕方ない。
「朋花ちゃんは何もしてないの?」
「ほとんど何もしてない」
「すごい。じゃあ多分すぐに効果でるよ」
「ほんと?」
今までは顔のメイクだけしか考えてなかったけど高性能カメラのせいで、毛穴まで見える。まる見えだ。京ピは綺麗って言ってくれたけど、身体も磨きたくなってきた。
脱毛しないと…
「後でやり方教えるね。まあ京ちゃんに聞いたままなんだけどね」
「藤堂くん、何者なのよ」
藤堂くんはお家に帰ってしまった。義妹に何も言わずに休んだため、心配させてるから、ということだった。
本当に何者なんだろう。メグミの件も何か知ってたようだし、私の見る目は本当に昨日までとガラリと変わってしまった。
私服姿はオシャレで、髪型もきちんとしていた。学校ではトラウマでボサボサにしていたそうだ。制服もよれてたし、あれじゃあ女子の好感度なんて最初からマイナスだ。
週明けから変えるみたい、いや戻すのか。
二人に格好悪いとこ見せられないしね、なんて全裸笑顔で言うもんだから、悶絶してしまった。京ピったら…
葛川の策について、入学して3カ月で動画を使ったのは、多分焦ったんじゃないかな、中学の時も人気が出て、みんなの認識が固まるまでは何もしなかったんじゃない?って言ってた。
私が調べた限りでもその通りだった。下出がまず周りに浸透するまでは何もしなかった。
浸透したら葛川が動きだし、上田が口で、中田が拳で黙らせていた。
でも今回動いた。愛香が居たからだ。それに、あんな事を平気で出来るのに随分と軽い策だし、ならそれなりの対外的な理由があるんじゃないかな。そう言っていた。
それにもし何かバレそうな自体になったら指示役の下出が止めると思うから、決定的なシーンは撮りにくい。だから葛川を煽って暴走させるか、中田に手を出させるかを来週からしていくそうだ。
定石では下出潰しが先なんだけどね。と言っていた。
ミーもマーヤもまだ本心では信じまだられない。そもそも友達なんかメグミ以外居なかった。本心を打ち明け、縋れる友達がいない中、
『君と君の友達を必ず救うよ』
…だなんて。
メグミ、葛川潰して会いに行くから!
来週からはまず藤堂くんと愛香が仲良く登校して動画の意味を無くすから、差し当たっては、学年で孤立しがちな女子を見つけ、友達になっていけばいい、愛香と姉妹のように裏表なく友達になれたから、協力してその輪を広げれば良い、そう言っていた。
……違う意味で姉妹になってしまったけど。
「けど、本当にすごかったね」
「えっちのこと?う、うん」
また思い出してしまった…頬と耳が熱くなるのがわかる。下腹部にはまだジーンとした甘い痺れが残っていた。
藤堂くんはまだ初めてだし、これくらいかな、みたいな事を抱き合った時に確かに耳元で呟いていた。まだまだ上がありそうだった。
京ピ…わたし、どうなっちゃうの?
「初めては痛いーとか、死ぬーとかしか聞いてなかったのに」
「愛香も痛くなかったってこと?私も結構酷いって聞いてたから以外というか、その、まるで自分がおかしいんじゃないかって」
「良かった。私もだったよ。おかしいよね。もしかしてみんなに嘘付かれてたのかな」
「いや、それは無いでしょ。ミーもマーヤも言ってたし。多分、藤堂くんがすごいんだと思う」
あの別の生き物のような腰使いは、今日が初めてなんて思えなかった。
最初はお姫様のように扱ってくれるのに、後半はまるで悪い事が見つかってお仕置きされてるみたいな気にさせられた。
……京ピのバカ。あ、やば。
「あの二人経験済みたいなこと言ってたけど怪しいよね」
「あっ、あえ?怪しい?…みーとまーや?そういえば、具体的な事は何一つ言ってなかったね。一部だけ生々しかったけど」
「もしかしたら出し入れは未経験かも」
「ありうる。基本あの二人ビビりだし。死ぬ死ぬ言いそう…」
「私達も違う意味で死にそうだったね」
「…も〜思い出させないでよ〜…でも、もっかいみよ」
「うん!弱点とか探したいし。あ、そうだ。ね、朋花ちゃん」
「何?」
「ギャルメイク教えてくれないかな?」
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