生贄の対価
四匹の悪魔1
| 葛川 翔
「おはよ、
「おはよう!」
名も知らない女子に元気よく挨拶を交わす。
今日は朝から爽快な気分だった。
スマホを開く度に普通にニンマリしてしまう。
「くっすん、上機嫌だね」
「なーほんと、くっすんのそのいやらしい笑顔久々じゃん」
「それな」
「誰がいやらしいやねん」
使った事のない関西弁が出るくらい上機嫌だった。
周囲からは「手下」なんて呼ばれているが、そんな事は無い。大切な小学校からの友達で、いつも四人一緒だった。
「ありがとうな、シモ」
「良いって。くっすんの気持ちはわかるしね」
「そーそー、あんな陰キャと姫ちゃんのカップリングなんて漫画かよ。似合わねーっつーの」
「それな」
昨日は前から温めていた計画を実行する日だった。
俺が生まれて初めて惚れた女だった。今までの人生でも滅多に居ない美少女だった。スタイルも抜群で、何としても告白させて跪かせたい女だった。
仲間達には気持ちを打ち明けていた。
「あのくっすんが純愛ね〜」
「初めてじゃね?つーかお似合いじゃね?」
「それな」
仲間たちには協力を仰いだ。と言っても最初は自分だけで動いてみて、緩い女だったら見込み違いだってことでみんなでマワすつもりだった。
それが身持ちが固い事固い事。愛想はいいが、表面的なのは見抜いていた。ますます心が滾ってしまった。だからこそ惚れた。
高校3年間は大人しくし、大学で爆発させるつもりだった。
中学ではあともう少しでバレそうになったが、馬鹿な先輩に擦りつけることで、スケープゴートに出来た。
俺らの代わりに臭い飯だ。ありがた過ぎても涙はでねぇ。まあ、その甲斐もあって今じゃ俺らは真っ新だ。親父にも迷惑をかけた。
だから、姫としか言いようのない成瀬愛香に出会ってしまってからの三ヶ月は地獄だった。何度フライングしかけたか。
初めての感情や、初めて上手くいかない焦ったい気持ち悪さは、新鮮で、普通に藤堂で憂さ晴らししていた。
中学みたいな轍は踏まねー。もっと外堀を上手く使って徐々に締めていって、解放されたくなって懇願されて、俺のものになる。が、普通に理想的だ。
もう、結果をすぐ求めるような盛りのついた、ガッついた中学生じゃあないんだ。
もう、高校生になったんだ。今度からはじわじわと攻めることを楽しむんだ。
「教室どうなってるかなー」
「そりゃ、ハブにするっしょ」
「それな」
昨日の暴行は、
勝ち抜きゲームと言って、代わる代わる交代しながら藤堂を殴り、動画を撮った。多数で暴行してるように見せる為だった。一応俺たち四人も戯れあった。勿論手加減しながら。
今までの憂さ晴らしの中で、藤堂は簡単に倒れない事を知っていた。だからビジュアル的には酷くは見えない。せいぜい戯れくらいにしか映らないと踏んだ。
そもそも、成瀬愛香に仲の良い男子なんて居なかった。同中のやつにも確認は取っていた。唯一が藤堂だった。
その藤堂とも入学以来は距離があった。だから男子同士の絡みなんて知らないんだろうし、もう良いでしょなんて言ってカラオケに誘ってきたしな。
それも普通にムカついたから最後の一撃は渾身の一撃だった。
成瀬愛香の心情だけが懸念だったが、賭けには勝った。まあ、心情が悪くなっても関係なかった。今回のはそういう策だ。
平行して同じカーストトップの
他の媚びたギャル、
こいつらは多分イジメに慣れてない。媚びた相手に100%同調するだろう。
カラオケでシモと動画を確認したが、良いアングルが入っていた。
それをシモがすぐさま編集し、傑作な動画にした。藤堂以外は濃くモザイクし、
あんな別嬪、モザイクで隠れるかよ。
あたかも
噂が広まるだけで
噂というカーテンさえかけ終われば、後は勝手に飛び込んでくる。
大衆なんて味方につけたもの勝ちだ。
ある意味、人気者商売な政治家だって不祥事があればすぐに袋叩き。
人気があればあるほど反転させれば一瞬で終わりだ。今度はどんなメス犬に仕立てようか。
身を潜めてから長かった。股間が痛くて仕方ない。ああ、もうすぐだ。
小さい頃注意された、トランプのジョーカーみたいな笑顔にならないよう抑えるのが大変だ。
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