第五章 夢見る少女じゃいられない
5-1
「それでは勝利ジョッキーインタビューです。カコノローレルで見事『スプリングステークス』を制しました、
「ありがとうございます」
私はそう言って記者に答える。
「まずは今の率直な気持ちをお聞かせください」
記者はそう言うと、再び私にマイクを向けた。
「はい」
私はそう返事をした後、一瞬考えてからそれに答える。
「やっぱり、カコノローレルと一緒に勝つことができたのが一番嬉しいです。それから、こんなにいい馬に私を乗せてくれた馬主さんや
「改めてレースを振り返って頂きたいのですが、出だしからかなり他の馬との差が開いていたと思います。それについては作戦通りだったのでしょうか」
「そうですね。普段から逃げる子なので、今回も逃げの戦法を取りました」
「一〇〇〇メートルの通過タイムが五七秒四。かなりのハイペースでしたが、道中不安ではありませんでしたか」
「特に不安はなかったです。寧ろローレルの気合が充分あると思って乗っていたので、だったらローレルの邪魔をしないような騎乗に徹しようと心がけていました」
「今回七馬身差での圧勝、そして七十四年ぶりの牝馬による『皐月賞』制覇へ王手をかけました。その辺についてはどのようにお思いでしょうか」
「そうですね。先ほども言いましたけど、ここはまだ通過点でしかないので、私自身がしっかり気を引き締めて、ローレルと一緒に最高のレースをしていきたいです」
「最後に、観客の皆さんに一言お願いします」
記者のその声に、私は一呼吸置いてから答える。
「これからもカコノローレルとともに頑張って参りますので、応援よろしくお願いします」
「カコノローレルで『スプリングステークス』を制しました、早乙女 風花騎手へのインタビューでした。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
私はそう言って、小さく礼をしてからウイナーズサークルへと向かう。曇り空の隙間から、太陽の光が差し込んでいた。
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