旅の終わり 6月3日
飛行機の座席に座ると、杏梨は一気に気が抜けた。昨夜は殆ど寝させてもらえなかった。帰りの飛行機も窓側の席だったのに、外の景色も隣の席に誰が座ったのかも見ないままに、杏梨は目を閉じて眠りに落ちた。
次に起きたのはご飯の時間で、隣にはタイ人と思われる杏梨よりも年配の女性が座っていた。寝ぼけてもたれ掛かったりしていなかったか心配だったが声を掛けられない。強烈な眠気に食事はほぼ食べられず、また目を閉じた。
行きも帰りも6時間のフライトはあっという間に過ぎた。樹と話した時間が懐かしい。すっかり重たくなったリュックを背負い、ポケットwifiを空港で返す。電車を乗り継いで杏梨は家まで何とかたどり着いた。
ケイに全身綺麗に洗ってもらったので、洗顔するだけで良しとした。部屋着に着替えてベットに倒れ込む。
たった1週間の旅なのに、興奮と緊張とで心身ともに思った以上に疲れていた。ケイとのセックスで全身が痛い。膣にはまだ違和感がある。
会おうと思っても到底会えない人で良かった。連絡先を聞かなくて良かった。もう少し一緒にいたら、身体だけじゃなく強引に心まで持っていかれる。
『お前は……頑張れば意志疎通可能なところに相手がいるんだから頑張れ』
ケイの相手は『意志疎通できないところ』にいるのだろうか。かなりモテそうなのに。
樹は彼女さんと2年会わずに頑張っている。
私も私らしく頑張ろう。待ってて、金田さん。
帰ってきたと連絡したかったのに、杏梨の意識は遠のいていった。
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