第166話 突然の来訪者
「……一旦保留にさせてくれませんか?」
「「………………」」
いや、わかるよ……求婚を受けるにしても断るにしても、ここでハッキリと答えられないような男は最低な男だということは!
でもそんな大事なことを、この一瞬で決めることなんて俺にはできない。少なくとも考える時間がほしい!
「……私としては普段大人びていた娘が取り乱すほどに愛している男がいるのならば、結婚を許しても良いと思っている。マサヨシ殿の人柄はすでに見せてもらったし、それが救国の英雄であるならば、誰も口を挟めないだろう。……いや、誰にも口を挟ませはしない。そのことは心に留めておいてほしい」
どうやらサーラさんの父親である、この国の国王様は俺とサーラさんの結婚を認めてくれるらしい。
「嬉しいです! 今ここで断られないということは、まだ私にも可能性があるのですね! マサヨシ様、私はいつまでもお待ちしておりますから!」
「………………」
可愛すぎるだろ!!
サーラさんの笑顔が可愛すぎて、なんかもう今すぐにオッケーを出しそうになってしまったぞ!
ああ〜もう、なんでここが異世界なんだよ! こんな綺麗で優しい女性から求婚されるなんてこともう二度とないかもしれないのに!
「疲れた……」
「ホー!」
「フー助もお疲れさま」
「ホー!」
あのあとエドワーズ国陣営が敗戦国であるバードン国の王族と、決闘を取り仕切るために別の国から来ていた人達と一緒に王都へ帰っていった。
俺はというと、多少時間が経って回復してきた魔力を使い、転移魔法でフー助と一緒に大魔導士の家に帰ってきたところだ。とりあえず俺もだいぶ家を空けていたから、一度元の世界へ戻らなければならない。
アンデが言う通りにするかは分からないが、俺の家と大魔導士の家を繋ぐ扉には、俺が来るまで入るなと伝言を残しておく。俺は行き来できるが、そもそもこちらの世界の人があの黒い円を通れるか分からないもんな。
扉を通って元の世界に戻ってくる。こちらの世界ではもう夕方のようだ。母さんもまだ帰ってきてないことを確認してから、自分の部屋を出る。さすがに今日は晩ご飯を作る気力もなかったので、カップラーメンですました。
母さんに伝言を残しておいたし、今日はもう寝るとしよう。いろいろあった夏休みもあと少しで終わりか……
「ふあ〜あ……さすがに疲れたぜ……」
「おい、マサヨシ。起きろ」
「う、う〜ん」
「……まったく、こんな隙だらけのやつに我が負けたとはな」
「ホー! ホー!」
「ふむ、マサヨシの召喚獣か? 安心するがよい。今更こやつをどうこうする気はない。ほら、さっさと起きろ!」
「いでっ!? ……って、なんでアンデがうちにいるんだよ!」
「あの扉を通ってきたに決まっているだろ」
「っておい、俺からの伝言を読まなかったのかよ!?」
「いや、読んだぞ。とりあえず指先を通してみても問題なかったから通ってきた」
「行動力!?」
まさか細かい事情も把握せず、実験もせずにいきなりあの怪しい黒い円に入ってくるとは思わなかった! いや、俺も通ってきたけど、あの時はだいぶ自暴自棄になっていたからな。
てかまずい! こんなに騒いだら母さんが! ……いや、もう昼過ぎだったか。もう母さんは仕事に行っているはずだ。どうやら昨日は思ったよりも疲れていて、ぐっすりと眠ってしまったらしい。
「それにしてもまさか別の世界へと繋がる扉とはな……我が師匠ながら無茶苦茶だな」
「いや、おまえも相当だからな! というかいくらなんでも早すぎないか? まだ決闘が終わってから半日くらいしか経っていないぞ!?」
あの破滅の森にはかなり強い魔物が生息している。そこはまあアンデの力なら余裕かもしれないが、あの森はとんでもなく広い。たった半日で大魔導士の家を見つけられるわけがない。
「ああ、しばらくはあの森の魔物を倒しながら師匠の家を探していたが、突然マサヨシの気配が現れてな。そこに向かって進み、その周辺を探してきたのだ」
「………………」
そうだこいつはメチャクチャな能力持ちだった。俺が大魔導士の家に戻った時の一瞬の気配を追って、大魔導士の家までやってきたのか……
「……確かにこの部屋や外の様子を見ると、ここが我の世界とは異なるということはよくわかった。さあ詳しい説明をしてもらうぞ」
「………………」
そういえば決闘が終わったあとに説明すると言ってしまったな。
「わかった。だけど、その前に一度元の世界に戻ろう」
「うむ」
もし俺が大魔導士の力を継承したことを知ったら、暴れる可能性だってある。最悪その場合には大魔導士の家のほうでお願いしたい。少なくとも俺の部屋を戦場には絶対にしないぞ!
アンデと共に黒い円を通って異世界にやってくる。本当にアンデも普通に黒い円を通って、こちらの世界と異世界を行き来できるようだ。まずは大魔導士の家の裏にある、俺が立てた大魔導士の墓の前にやってきた。
「ここが師匠の墓か」
「ああ。俺がこの世界に来て、さっき通ってきた部屋の椅子に座って亡くなっていたのを、俺が見つけて供養した」
「……そうか、感謝するぞ」
アンデが大魔導士の墓に黙祷を捧げている。俺もあわせて合掌する。
「……それは何をしているのだ?」
「ああ、これは合掌と言って、俺の世界での故人の
大魔導士のお墓は俺が石を加工して作った日本式のお墓だ。墓石にはハーディ=ウルヌスと刻んである。
「……そうか」
アンデも俺と同じように大魔導士の墓の前で合掌をした。
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